BTS(防弾少年団)は新たな“アイドルファン活動”を根付かせた? 米ビルボード1位獲得の理由を分析

 「FAKE LOVE」は他のTOP10ソングとは決定的に異なる点があり、それはラジオで流された回数であるエアプレイポイント(ラジオ局リスナー100万人あたり1000DL換算)がないこと。ストリーミング やDL数に比べ、ラジオでかかった回数が極端に少ないのだ。

BTS『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』

 ビルボードのKPOPコラムニストであるジェフ・ベンジャミン氏も以前韓国のアイドルメディア『idology』のインタビューで発言していたように、アメリカで「本当に一般的なヒット曲」とみなされるのは「ラジオでよく流される曲」である。通常TOP10にランクインするような曲は、ほとんどがRADIO SONGSトップ50にチャートインしており、今回のトップ10もBTS以外は全曲このチャートにランクインしている。BTSはその「一般的なヒット曲」に必須のラジオプレイポイントがないのだ。これはつまり、まだ現状ではインターネットをメインとしたマニア層がBTSを強く支えているという、あまり前例のないケースということだろう。逆を言えば、一般層からの支持が少なくとも、HOT100のトップ10に入れるレベルの強固なファンドムを、BTSはすでに獲得しているということでもある。

 しかし、前回のアルバム『LOVE YOURSELF 承 ‘Her’』(2017年)のリードトラック「DNA」を流したラジオ局は1局のみだったが、今回は初週だけで3局(オクラホマシティ62回/ヒューストン36回/ニューオリンズ22回)まで増えており、RADIO SONGSチャート内のPOP SONGSチャート40位圏内が見えてきている。そして韓国ファンのスタイルを受けついだアメリカのファンはチャート研究にも熱心であり、ラジオ局へのリクエスト運動も起きるようになった。前回唯一「DNA」を流した局は、iHeart Media傘下のKJYOオクラホマ・シティであり、今年のiHeart MediaアワードのBest Fan Army(BMAのトップ・ソーシャル・アワードと同じくハッシュタグで決まるファンドムアワード)は、文字通りARMYを擁するBTSが受賞した。今後、BTSはラジオエアプレイという最後の砦を攻略する余地が残っており、また、ファンドムに集まった注目が今後より広い層まで波及していく可能性も十分あるだろう。

 また、グループそのものや楽曲よりもファンドムに注目が集まっていた昨年と比べると、Pitchforkなどでは、BTSの楽曲制作やアルバムレビューに関する記事も見られた。また、Rolling Stoneでは、グループそのもののスタンスを解説する記事も出てきている。

 Rolling Stoneの記事は「BTSがKPOPのタブーを破った」という論旨であるが、実際、KPOPの歴史的には政治的・社会的メッセージが含まれる楽曲は珍しくなく、それを最初に始めたのは<SMエンターテインメント>だった。韓国では、こういったメッセージを発信していくスタイルはSMPと呼ばれており、長年廃れていたが、BTSの成功により復権したとも言える。韓国のアイドルやアイドルファンドムは元々社会奉仕に熱心であり、特に2014年のセウォル号沈没事故以降は、アイドルが社会的・政治的メッセージを表明することは珍しくなくなった。一方で、提供された楽曲をパフォーマンスするのではなく、自ら楽曲制作に参加するアイドルも増えてきている。つまり、現在の韓国アイドルの中で、BTSは特に異質な存在ではないのだ。

 韓国内での議論とは対照的な内容の記事が出ていることからもわかるように、米国ではまだKPOPをパフォーマンスしている「韓国のアイドル」そのものの実態についてはあまりよく知られていないということだろう。BTSをきっかけにこれらの文化的背景にもスポットが当たり始めたことで、今後米国内でのKPOPの取り上げられ方にも変化があるのではないだろうか。

 BTSのメンバーはファンのことをアルバム『WINGS』になぞらえて「僕たちの翼」と呼んだ。動力や燃料が足りていても、翼がなければ飛ぶことはできない。ARMYという翼に支えられたBTSはどこまで高く、遠く飛べるのだろうか。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata



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