『大人になって』インタビュー
odol ミゾベ&森山が語る、“美学とらしさ”「ポップスを一人ひとりのものとして捉えている」
「表現のアウトプットが固まってきてる」(ミゾベリョウ)
ーーたしかに。スネークマンショーとかそうですもんね。森山:そういうことをセンスの中でノリでやっちゃうことが、笑いの条件だと思うんですけど、現状だと僕たちは考えすぎちゃうところがある。だから今はやってないんです。面白くならないから。でも、やってみたいと思ってます。そういうことをやれるバンドのほうが好きなんで。
ミゾベ:面白いことはやりたいですね。ちょうど3、4日前のレコーディングのときに、そういう話を森山にしたんですよ。
――というと?
ミゾベ:この秋にアルバムを出す予定なんですけど、そこで面白いこともやりたいなって思っていて。実際、リハーサルのときとか、メンバーでいろいろふざけてるんですよ。堅いことや真面目なことをやっていても、面白い要素を入れることによってフランクに音楽として楽しんで聴いてもらえるんじゃないかなって話をしたんです。だからすごくタイムリーな質問で嬉しいです。
――今後の可能性はあるってことですね。
森山:そうですね。“オラつき”の可能性は低いんですけど、“おふざけ”は可能性が高いというか、本当はやりたいと思っていて。マインドが整えばそれ次第でやる感じですかね。
――“オラつき”はなさそう、と。
ミゾベ:まあ、僕ら、あんまり日常生活のなかで「かかってこいや!」って思うことがないんで(笑)。
森山:怖いしね。
――はははは(笑)。でも、今「マインドが整えば」って言ってましたが、その実感があるんじゃないかと思うんです。というのも、「時間と距離と僕らの旅」や「大人になって」という新曲を聴くと、サウンドとかスタイルじゃないところで“odolらしさ”というものが固まり始めている感じがあって。このへんはどう捉えていますか?
ミゾベ:音楽に向かう姿勢や向き合い方に関しては、周りの環境を含めて少しずつですが固まってきた感じはありますね。音楽自体に関しても新しいチャレンジは増えているんですけど、こういうのはいい、こういうのはないよねっていうのが見えてきていて。それにメンバーが向かっていく感じはあります。個人的に歌詞を作ることに関しても、やりたいことは増えていってるけど、表現のアウトプットが固まってきてるようなところはあります。
森山:サウンドじゃない部分での安定みたいなものは、言われてみれば前よりはちょっと見えてきたのかなって思うんですけど。でも、odolってどういうバンドなんだろうということは未だに悩むし、曲を作る速度も変わらないし、あまりわかってきたという感じはなくて。ただ、具体的に次の一手として何をやればいいかは、より明確に見えるようになってきたと思います。こういうときにどう考えればいいか、細かいことがいろいろ経験として溜まってきて、できることも増えてきたし。だから、僕自身は、あまり実感していなかったので、そう見ていただいてるのは嬉しいですね。
ミゾベ:思い返してみると1stアルバムの『odol』や2ndアルバムの『YEARS』を作ったときは、何もわかってなかったような気がします。もちろん、それゆえの表現もあるんですが。だからといって今、“これが僕らの方法だ”っていうのを決めてしまっているわけではなく、よりよい方法をずっと探っていくしかないんだなっていう感じです。
――では、そういうバンドの現状を踏まえて新曲の「大人になって」について聞ければと思います。まず、4つ打ちのビートで縦が揃ったアンサンブルの曲になっている。これはどういうところからできていったんでしょう?
森山:いつもどおり僕がデモを作ってみんなに聴いてもらったんですけど、そのときはライブについて悩んでた時期で。クラブに行ったりいろんなライブを観たりしていて、4つ打ちをodolでやったことはないけどやってみるかと思ったんです。やっぱり4つ打ちって象徴的じゃないですか。踊るためにあるビートというか。でも、これをodolらしく聴かせるにはどうしようって思って試してる中で、全員で4つ打ちをするの気持ち良いなって。そこに8分音符や16分音符のズレをいれたり、歌の裏にロックなギターソロを入れたりして、“これならいけるな”と思って完成させていった流れですね。
ミゾベ:この曲と「時間と距離と僕らの旅」は、『視線』を作った後に同時期にレコーディングしたんですが、『視線』が閉塞的な感じだったのに対して、開けてるイメージです。自分たちの気持ちとしても開けてきていたので、それを表す象徴的な曲だなっていう印象がありました。
――「大人になって」という曲名と歌詞は、少年期の自分と今の自分を対比させるというのがモチーフですよね。それはどういうところから出てきたんでしょうか?
ミゾベ:普段生活をしている中で、常日頃から思っていることを素直に歌詞にしようと思って、歌詞を書き始めてある程度できてきた段階で、みんながいるスタジオに持っていったんです。そうしたら、他のメンバーもたまたまそれにほぼほぼ近い話をしていて。じゃあもうこれを歌にするしかないなと思いました。
森山:ちょうどライブの話をしていた時期だったので。ライブに関しても、言い方は悪いですが、ノリで踊らせるみたいにはできない自分たちがいて。そういう自分たちを象徴するような歌詞だと思ったんですよね。そこが『Overthinking and great Ideas(O/g)』というライブのシリーズのタイトルを考えたときの話とも合致していて。考えすぎること、大人ぶってしまうこと、子供的なものへの憧れ、そういうものがメンバー的にもマッチしてたところなんですよね。
――“Overthinking”という言葉はすごく象徴的ですよね。“Don’t think, feel”ではない。立ち止まって考えて、そのことによって突破していく。そういうところをちゃんと守りつつ、肉体的な気持ちよさを得ている曲という感じがします。
森山:嬉しいです。
――odolってバンドは、自分たちの音楽がポップスであるという意識は強いですか?
森山:そうですね。ポップス、ポピュラーミュージック。広く聴かれることを目的とする。その中でいろいろやる、ということが前提としてはあるという感じですね。