『Billboard Japan Hot100』チャート分析

SingTuyo、宇多田ヒカル、EXILE……限定&先行配信楽曲も上位に付けた最新複合チャートの動向

【参照:ビルボードジャパン  チャート・インサイト(2018年5月14日付)

 最新のビルボードジャパンチャートは1位がHKT48「早送りカレンダー」、2位が乃木坂46「シンクロニシティ」、3位がSingTuyo「KISS is my life」という並びとなった。

 1位の「早送りカレンダー」は2001年生まれの矢吹奈子・田中美久のダブルセンターによるアッパーなポップチューンで、若いイメージのあるHKT48ならではの元気な一曲。2位「シンクロニシティ」は乃木坂46の20枚目のシングル。冒頭のピアノの主題に電子音などをうまく絡ませて徐々に曲を発展させていく近作(「逃げ水」以降)の最新発展型だ。ピアノを中心に据えても内省的にはならずに、残響音などを巧みに用いながら幻想的なダンスミュージックにまで昇華しているのがポイントだろう。先週の首位からはランクをひとつ落としたが、まだまだチャート上位で存在感を発揮しそうなポテンシャルを感じ取れる一曲である。

SingTuyo「KISS is my life.」

 そしてここ数週間、デジタル領域で圧倒的な強さを見せてきた米津玄師「Lemon」をDL数で上回ったのが3位の「KISS is my life」。香取慎吾と草なぎ剛による新ユニット”SingTuyo”による一曲だ。作詞・作曲は新世代アーティストとして注目を集めているぼくのりりっくのぼうよみ。こうした若い才能を積極的に起用するのはSMAP時代から変わらない姿勢である。繊細なアコースティックギターがメインにありつつも、全体的には多彩な音粒が舞っているような鮮やかなサウンド。軽快に刻まれるビートは一般的な人の歩く速度を少し速くしたあたりのBPM124付近。そのためノリやすい軽やかなリズム感で曲が進む。ぼくのりりっくのぼうよみ特有の柔らかい歌唱法も時おり登場することで、単なる世代を超えたコラボに止まらず、両者の信頼関係が端々に感じ取れる一曲となっている。

 またランキングを見ると、SingTuyoや米津玄師の他にも宇多田ヒカル「Play A Love Song」やEXILE「Turn Back Time feat.FANTASTICS」といったCD売り上げランキングだけでは捉えきれない配信限定の楽曲なども上位に付けているのが分かる。フィジカル面とデジタル面の両方がちょうどミックスされたような複合チャートらしい序列となったのが今週の結果だ。

 宇多田ヒカル「Play A Love Song」はすでにCM曲として話題を集めているが、6月に発売する新作アルバム『初恋』から先行で配信された一曲である。先週の4位からは落ちたものの、アルバムリリース前からこうして話題になっている様子がランキングからも確認できる。リリース後には再びトップ5に返り咲くだろう。

 また、今週のトップ10の中でチャートイン数が10回以上の米津玄師「Lemon」、欅坂46「ガラスを割れ!」の両者は”ロングヒット”と呼べるような結果を残すことができるか、今後のチャート動向にも注目だ。初動型に偏りやすいセールス面だけでなくデジタル領域での継続的な拡散力が見て取れる両曲が、2018年の上半期を振り返りだすこの時期にしっかりとチャート上でアピールしている。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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