石崎ひゅーい『Huwie Best』に見える変化とは? 菅田将暉らとの交流から紐解く
おいおいおい。“身を削る”ことをやめた結果、もっと激しく危うい歌を書くようになってどうする。難儀だなあこの人は。でもきっと本人的には、生来の危なっかしさから片足くらいは脱出して書けるようになったのがこういう方向なんだろうなあ、とは思う。2015年に舞台、2016年に映画で役者を経験したことや、菅田将暉と交流して一緒に曲を書いたこと、つまり他人のために曲を作ったことも、きっといい影響を与えているのだろう。特に後者、菅田将暉に書いた「さよならエレジー」。菅田将暉が持っていたイメージを基にして石崎ひゅーいが作詞作曲をしたこの曲、パッと聴いてすぐ「うわ、石崎ひゅーいだなあ」と思う感じではない。曲を聴いたあとにそのことを知って「あ、そうなのか! 言われてみれば確かに」とわかって納得するような、そんな個性の表れ方をしている。
特にメロディに関しては、「菅田将暉が歌うことによってさらにいい曲になっている」のは確かだが、ただし「菅田将暉が歌わなければよくない曲」ではないと思う。もちろん「石崎ひゅーいが歌わなければよくない曲」でもない。ある種、誰が歌ってもちゃんといい曲として成立する、ストレートな普遍性を持っていると感じる。
自分以外の誰かが持っていたイメージを元にして詞曲を書いた、というこの「さよならエレジー」と、テーマを決めてからそれを表現しようとして詞曲を書いた「ピリオド」、石崎ひゅーいにとって、ある種同じようなトライアルだったのではないかと思う。どちらを先に書いたのか知らないが、つまりこれが、石崎ひゅーいが手にした、今までとは違う詞曲の作り方なのだ、ということだろう。
そういえば、「ピリオド」のMVには、そのお返しなのか、菅田将暉が出演している。雨の屋上で、傘を差して、歌う石崎ひゅーいと逆向きに座って歌を口ずさんで泣くこのMV。以前の石崎ひゅーいの楽曲だったら、わかりやすくウェットすぎて成立しなかったかもしれない。ここまで感傷的な演出に耐えうる、というかそれがずっぱまりになるくらい、楽曲の持つポップスとしての強度が上がったのだ、というふうに、僕は解釈した。
石崎ひゅーい 「ピリオド」MV
現に、「ピリオド」と「さよならエレジー」が発表されて以降、石崎ひゅーいのいわば“周囲からのいいと思われ方”が、以前とは変わってきたように感じる。「自分の生身をさらす赤裸々な曲を書くシンガーソングライター」的なイメージから、もっとシンプルな、「いい曲を書いて歌う人」的なイメージに。
とりあえず、石崎ひゅーいの第二章が、とても楽しみになっていることは、間違いないのだった。
■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「CINRA NET.」「DI:GA online」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「CREA」「KAMINOGE」などに寄稿中。フラワーカンパニーズとの共著『消えぞこない メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンにたどりつく話』(リットーミュージック)が発売中。
■リリース情報
石崎ひゅーい BEST ALBUM『Huwie Best』
発売中
価格:2,900円(税込)
<収録曲>
1.第三惑星交響曲
2.ファンタジックレディオ
3.夜間飛行(※テレビ東京系ドラマ24『みんな!エスパーだよ!』EDテーマ)
4.ピノとアメリ(※テレビ東京系アニメ『NARUTOーナルトー疾風伝』EDテーマ)
5.ひまわり畑の夜
6.ガールフレンド
7.ピーナッツバター(※MBS・TBS系ドラマ『新解釈・日本史』主題歌)
8.星をつかまえて(※アニメ『ハイキュー!! リエーフ見参』EDテーマ)
9.1983バックパッカーズ
10.おっぱい
11.常識(※新録、2012年映像商品収録)
12.僕がいるぞ!(※テレビ東京系ドラマ24『みんな!エスパーだよ!』スピンオフ特番『みんな!エスパーだよ!番外編~エスパー、都へ行く~』EDテーマ)
13.僕だけの楽園
14.花瓶の花(※ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2016ミュージックビデオ部門優秀賞受賞)
15.ピリオド(※新曲)
ーAcoustic Versionー
16.花瓶の花
17.夜間飛行
<配信情報>
iTunes・mora・レコチョク・LINE MUSICにて、新曲「ピリオド」配信中。
■ライブ情報
『Huwie Best』発売記念インストアライブツアー
(ミニライブ+サイン会)ライブ観覧フリー
4月14日(土)兵庫県:阪急西宮ガーデンズ4階スカイガーデン・木の葉のステージ
開演18:30
■関連リンク
石崎ひゅーい オフィシャルサイト
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石崎ひゅーい 弾き語りワンマンTOUR 2018「ピリオド」