北川勝利(ROUND TABLE)と宮川弾に聞く、『Fate/Grand Order』〈新宿幻霊事件〉テーマソングに隠された秘密

北川勝利×宮川弾『FGO』テーマ曲対談

「どちらかと言うと〈円卓〉の方で反応してる人が多くて」(北川)

ーー「Lose Your Way」についてのお話を聞く前に、そもそもお二人はいつからお仕事を共にするようになったのでしょう?

北川:最初は2002年かなあ。僕が初めてアニメのお仕事をしたのは『ちょびっツ』という作品のオープニングテーマなんですけど(ROUND TABLE featuring Nino名義の楽曲「Let Me Be With You」)、その曲のストリングスアレンジを誰にお願いしようか考えてた時に、人から「宮川弾くんという良い人がいます」って薦められたんです。僕ももちろん名前は知ってたので、お願いして打ち合わせに来てもらったんですけど、その時に作ってきてくれたデモにいろいろ注文をつけたら「うるさいなあ」みたいな感じで言われて(笑)。

宮川:そんな好戦的だったっけ(笑)。

北川:気軽にいろいろ言ってたら「こっちも考えてここにきてるんだから、直すなんて嫌だよ」みたいなやり取りをした記憶がある(笑)。

宮川:そうでしたかねえ。僕はアニメの音楽と聞いてやったあと思いましたけど。

北川:その時点でもうアニメの仕事はやってたんだっけ?

宮川:そうだね。『ココロ図書館』(2001年)とかやってたから(※宮川は同アニメのオープニングテーマとなる山野裕子「ビーグル」で作曲/編曲、エンディングテーマの山野裕子「月はみてる」では編曲を担当)。もともとアニメも好きだし。

ーー「Let Me Be With You」からということは、もう15年以上の付き合いになるんですね。

北川:なんだかんだでそうですね。そのすぐ後にROUND TABLE featuring Ninoの1stアルバムを作ることになったので、そこでも何曲か弦のアレンジをしてもらって。その時は河口湖でアルバムの合宿レコーディングをしたんですけど、たしか弾くんをTDチェックで呼んだんだっけ?

宮川:オケごとのアレンジの曲があって、そこでしかTDチェックができないって言われて行ったんだよ。冬で雪が降ってたのにね。

北川:そうだそうだ。「来る?」って聞いたら来るということだったので……。

宮川:いや、わりと「来い」みたいな話だったよ(笑)。

北川:最初はあまりフレンドリーな感じじゃなかったし、遠くだから泊まりになるだろうし来ないと思ってたんだよね(笑)。でもちゃんと来てくれたし、なんか部活で履くようなシャカシャカするパンツを履いて楽しそうにしてたよね? だから弾くんはシャカパンのイメージがすごく強くて。

宮川:あれは裏地もついてるやつであったかいんだよ……って何の話してるんだろう(笑)。でも僕ってそんなにフレンドリーじゃなかった? 自分ではすごくフレンドリーなつもりだったんだけど。

北川:ホント? でもたしかに来たらすごく楽しそうで、シャカパンでそのへんを散歩したり、そこに置いてたミニカーみたいなやつで一人で遊んでて、「弾くんってどういう人なの?」と思って(笑)。楽しい人なんだなあと。

ーーじゃあそこで距離が縮まっていったんですね。

北川:いや、そうでもない(笑)。

宮川:本当にそうでもなかったよね(笑)。

ーーハハハ(笑)。そんなお二人がコラボして手掛けたのが、『Fate/Grand Order』(以下、FGO)の第1.5部「亜種特異点I  悪性隔絶魔境 新宿 新宿幻霊事件」のテーマソング「Lose Your Way」になります。お二人が『FGO』に関わるのは今回が初ですが、これはどういった経緯で?

北川:なんかカッコイイ話ができればいいんですけど、普通にオファーをいただいたので書きました(笑)。

宮川:すみません(笑)。

山内真治(アニプレックスプロデューサー):自分から補足しますと、〈新宿幻霊事件〉はおじさんがメインで活躍するストーリーなので、テーマソングもおじさんが歌う方がいいんじゃないかと考えたんですよ。それと〈夜の新宿〉というイメージからジャジーでカッコイイ曲調にしようと思って、以前から花澤香菜のプロジェクトなどで一緒にお仕事をさせてもらってる北川さんなら、そういうテイストの楽曲も得意だということでお話をしたんです。

北川:おじさんに書かせようという前段階があったんだね(笑)。

山内:それでボーカルもおじさんがいいという話になって、最初は北川さんにそのまま歌ってもらう予定だったんですけど、北川さんの歌声だとイケメン過ぎるというか、甘い声質でイメージと少し違ってたんですね。そこからどうしようか考えてるなかで、自分のパソコンの過去フォルダに、弾さんが花澤香菜へ提供した曲を自分で歌ってるデモ音源があるのを見つけたんです。それを聴いて「これだ!」と思って。ただ、弾さんの声だけだと低すぎるから、それを補強する意味合いで北川さんとのツインボーカルを提案したんです。

北川:そうそう。曲は〈新宿〉というテーマと、ジャジーで夜っぽい感じの4つ打ちという話をしてて、それはすぐできたんですよね。でも歌う人については、僕からも何人か候補を挙げたんですけど、若すぎるとかの理由でなかなか決まらなかったんですよ。そしたら急に弾くんが歌う案が浮上したから「エッ!」と思って(笑)。それで僕から弾くんにメールしたら「歌ってもいいよー」って返事がきて、「歌詞も書く?」って聞いたら「歌詞も書こうかー」という感じで決まったんです。

宮川:それだと何かやる気なさそうだよね(笑)。(やる気は)あります!

北川:でも「歌わせてください!」とか「歌詞を書かせてください!」みたいな感じはないでしょ?

宮川:そりゃメールだからね。

北川:でもメールもビックリマークとかつけないじゃん。

宮川:北川くんのメールはビックリマークが多すぎるんだよ(笑)。いつもどれだけビックリしてるのかなって思うもん。

北川:あそこには「がんばります!」みたいな意気込みが入ってるんだよ。

ーー「Lose Your Way」はまず〈新宿幻霊事件〉のTVCMでオンエアされましたが、自分は初めてCMを見たときに〈ROUND TABLE feat. Dan〉というクレジットが入ってて驚きました。ROUND TABLE名義での楽曲は久々でしたが、この名義にされたのには何か理由が?

北川:最初は何も考えてなくて〈北川と宮川〉とかで発表しようと思ってたんだけど「それはちょっと勘弁してください」って言われて(笑)。なので新しくカッコイイ名前をつけてもいいかなあとも思ったんですけど、それだとちょっと謎すぎるから、知ってる人が見たら何となくわかる感じにしたかったんですよ。であれば、もともと〈ROUND TABLE feat. Nino〉という名義も使ってたし、もしわかる人が〈ROUND TABLE feat. Dan〉と書いてるのを見たらウケるかなと思って(笑)。

ーーROUND TABLEは直訳すると〈円卓〉になるので、偶然にもアーサー王伝説の円卓の騎士に所縁のあるキャラクターが活躍する『FGO』の世界観ともマッチしますし。

北川:そうなんですってね。僕はそのことをあまりよくわかってなくて。CMが流れたときに、僕らのことを知ってる人は「あのROUND TABLE?」って感じで反応してたんだけど、どちらかと言うと〈円卓〉の方で反応してる人が多くて「あれ? あんまり伝わってない?」と思って(笑)。

ーー思わぬ形で反響を得たわけですね(笑)。ということは『FGO』についてはあまりご存知ではなかった?

北川:作品の存在は知ってたし、曲も知ってたりはしますけど、そもそも僕はケータイでゲームをすることがないので。

宮川:僕も歌詞を書く段階になるまでは、名前は知ってるけどプレイしたことはなくて。でも僕はケータイのゲームとか好きで、わりと課金しちゃうタイプなんですよね。

北川:そうなの?

宮川:すぐ金で解決しちゃうタイプだから(笑)。

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