欅坂46、なぜ「ガラスを割れ!」が表題曲に? 収録曲に共通するイメージに迫る

 さて、ここで注目したいのはカップリングの「もう森へ帰ろうか?」です。河原健介作編曲による、北欧的な冷ややかさをたたえた、メランコリックな楽曲。サビの前にはEDMの要素もあります。欅坂46のダンスが美しいMVも含めて、非常に秀逸な作品です。これほどレベルの高い楽曲をカップリングにとどめた意味を考えると、欅坂46はやはり「ロック」なイメージを押しだしたかったのでしょう。

 TYPE-Aに収録されている「夜明けの孤独」は平手友梨奈のソロ曲。なんとバラードです。不器用さと孤独と覚悟を歌い、アコースティックギターやオルガンの音色も響きます。同世代が抱える不安をメンバーに投影させる構造なのは、他のカップリング曲と同様です。

 TYPE-Bに収録されている、けやき坂46 1期生が歌う「イマニミテイロ」はシリアスな曲調。<大人たち>というワードが登場することがすべてを物語っています。けやき坂46 2期生が歌う通常盤収録の「半分の記憶」の緊張感といい、けやき坂46にはこうした曲調の楽曲が与えられています。

 TYPE-C収録の「ゼンマイ仕掛けの夢」は、”ゆいちゃんず”の今泉佑唯と小林由依による楽曲。オールディーズ調のサウンドですが、メロディ自体は1970年代のような歌謡性があります。今泉佑唯と小林由依の歌のうまさも光ります。TYPE-D収録の「バスルームトラベル」は、尾関梨香、小池美波、長濱ねるによる楽曲。冷静に考えると、今回のリリースで唯一アイドルポップス然としている楽曲でもあります。

 逆に言うと、「大人=抑圧」というイメージを堅持しているのが『ガラスを割れ!』の収録曲たち。タイトル曲として「ガラスを割れ!」が選ばれた意味もそこにあるのでしょう。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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