高野寛が語るDarjeelingプロデュース作での経験「シンガーソングライター然としたところ出せた」

高野寛が語るDarjeelingプロデュース作での経験

やっとスローの曲が歌えるようになった 

ーー高野さんの歌がまた素晴らしいんですよ。こう言うとアレですけど、この味わい深さは今の年齢だからこそ出せるものだなと思える。若いときにこの感じはなかなか出せなかったんじゃないかと。

高野:うん。出せなかったですね。

ーー「歌に集中できた」とおっしゃってただけあって、この曲を始め本当にボーカルのよさを強く感じられるアルバムになっていると思うんです。因みにプロデューサーとしての高野さんは、ボーカリストとしての高野さんを、どう見ているんですか?

高野:プロデューサーの自分はもっとやりたいことがたくさんあるんですよ。でもボーカリストとしての技量はそんなに高くないし、幅も広くない。それはプロデューサーの自分から見てそう思うんですね。だから逆の発想で、自分の歌えるなかでどれだけ表現できるかっていうふうにいつも考えてます。まあ、変わった声だなと思ってますけどね。若い頃は自分の声があまり好きじゃなかった。40歳くらいまでは、なんか引っかかってたかな。

ーーポップスを歌うひとの声ですよね。

高野:だから、そこがね。自分としてはポップスだけをやりたかったわけじゃなかったので。甘い声っていうところが逆にコンプレックスだった時期もあったんですけど、今はやっとこういうスローの曲が歌えるようになったってところですかね。

ーー例えばロックを歌うのとかは……。

高野:ロックを歌いたくてもロックには向いてない声だって自分で決めつけちゃってるところがある。エレキギターよりアコギのほうが合う声だな、とかね。それ、違うのかもしれないですけど。

ーー「とおくはなれて」と「みじかい歌」。どちらもスローで味わい深くて、やっぱりこれが今の高野さんの歌唱の魅力であり、今のモードなんだろうなって気がします。

高野:もうちょっとノリのいい、ふざけた感じの曲もあって、Darjeelingのおふたりに聴いてもらったんですけど、そういうのは選ばれなかったですね(笑)。

ーーあと、歌詞に重きが置かれた曲が多く選ばれてもいる。そういうところをDarjeelingのふたりが引き出そうとしていたフシはありますか?

高野:ありますね。確かに歌詞のことをよくおっしゃってた。さっき言った「Rambling Boat」の歌詞のこととかね。自分じゃ客観視できないですけど。

ーー例えばその「Rambling Boat」だと甘美な感じがあったりするなど、やっぱり大人が聴いてグッとくる歌詞なんですよ。そのようにシンガーソングライターとしてのよさが出ている曲が選ばれてるってことだと思うんです。

高野:うん。さっきロックに向いてない声だって話をしましたけど、どこかで自分をポップス縛りしてしまうところがあって。いつもどうしてもポップスってところにこだわってしまう自分がいたんですけど、今回はそれよりもシンガーソングライター然としたところを前面に出せたし、それは初めてのことかもしれないですね。自分でプロデュースしていたら、やっぱりもっとポップな音をさらに追加したりしてたと思う。どうしても自分ではそうなりがちなんですけど、こういうふうに大人っぽい感じでアルバム全体を統一するっていうのは、Darjeelingプロデュースだからこそだったかもしれない。

ーー最初と最後をインスト(「Salsa de Surf」)にするっていう遊び感覚のあるまとめ方もまた、Darjeelingっぽい。

高野:そうですね。自分のアルバムでエレキギターをこれだけ弾きまくってる曲って、実はないんですよ。リードギターをオラオラ! って弾くようなタイプじゃないので(笑)。

ーードヤ顔ができないタイプ(笑)。

高野:そうなのかな。なんだろなー。弾くのは好きなんですけど、なんかソロアルバムには持ち込まなかったですね。

ーーなんででしょうね。

高野:うーん。でも今こうしてインタビュー受けながら、これまでは自分で自分のことを勝手に枠にハメてた部分がけっこうあったのかなって思いました。もしかしたらファンにとっての理想像みたいなものを勝手に自分でイメージして、そこに自分を当てはめようとしてたのかもしれない。その枠を今回Darjeelingが壊してくれた、ってところがあるかもしれないですね。

(取材・文=内本順一)

高野寛『A-UN』

■リリース情報
『A-UN』
発売:2018年2月14日(水)
価格:¥2,315(税抜)
<収録曲>
1.Salsa de Surf (Overture) (セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:coba) 
2.Affair(セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:高野寛&田島貴男) 
3.とおくはなれて(オリジナル新曲)
4.ME AND MY SEA OTTER(セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:矢野顕子) 
5.Rambling Boat(セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:本木雅弘) 
6.時代は変わる(カバー) 作詞/作曲:ボブ・ディラン/日本語訳詞:高野寛
7.上海的旋律【Shanghai Melody】 (セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:野宮真貴)
8.みじかい歌(オリジナル新曲) 
9.Salsa de Surf(セルフカヴァー、オリジナルアーティスト:coba) 

プロデュース:Darjeeling:ダージリン(Dr.kyOn & 佐橋佳幸)
参加ミュージシャン:Dr.kyOn、佐橋佳幸、屋敷豪太、高桑圭、坂本美雨(M4)、野宮真貴(M7)

■ライブ情報
『高野寛 LIVE 2018
「Everything is good」発売記念 Live tour Band ver.』
3月9日(金)大阪・THE LANDMARK SQUARE OSAKA
3月10日(土)名古屋・三楽座
5月15日(火)東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

オフィシャルサイト

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