OxTと考える、“遊び心がなくなった”アニソンの現状&オーイシが味わった“流行という混沌”

OxTと考える“アニソンの遊び心”

 「ようこそジャパリパークへ」流行で味わった“混沌”

ーーなるほど。その遊び心がなくなってきているというアニソン業界で、まさに昨年「ようこそジャパリパークへ」こそ遊び心に溢れたものはなかったですよね。

Tom-H@ck:ですよね。

オーイシ:その話で言うと、「ようこそジャパリパークへ」は今までのアニソンの集大成感があって。これまで自分が良いと思ってきた1980年代、1990年代、2000年代のアニソン~J-POPのおいしい要素を全部つまんで再構築したような感覚があったんです。古着をパッチワークでリメイクしたような。なので、自分は何か新しいことをしたのかというと、まったくそうは思っていなくて。あえて言うなら、今までの音楽の良いところをたくさん詰め込んだ、というその行為自体が新しかったのかなと。

ーーそれがたとえパッチワーク的な作り方であったとしても、『ミュージックステーション』や『FNS歌謡祭』などのテレビ番組で披露したことで、お茶の間の視聴者には新鮮に映ったと思います。

オーイシ:それもあるかもしれないですし、そこまでにもいろいろな流れがあったんですよね。星野源さんがラジオで紹介してくださって、そのあと『関ジャム 完全燃SHOW』で取り上げられ、平井堅さんも音楽番組で紹介してくだったり。ただ、昨年その流行りの真っ只中にいて、「流行りってつまり混沌だな」って思ったんですよ。みんながパニック状態になってることが流行りなんだと。Tomくんも『けいおん!』時代に流行りを経験してると思うけど、そういう感じしない?

Tom-H@ck:いや本当、そうだと思うよ。

オーイシ:もちろん評価してくだるのはありがたいことなんですけど、その混沌が沈殿したときにどう評価されているのかが、その曲の本当の真価なのかなと思うんです。なので、今はその流行りの余波がまだ残ってますけど、次のことを考えなければいけないという焦燥感もあって。あまり流行りをあてにしすぎてない自分がいるというか。たとえば正月の福袋みたいにみんなが寄ってたかってワー!って奪い合うけど、2月くらいになって冷静になってみると「何時間も並んで買うようなものだったっけ?」ってなるじゃないですか。流行りってそんなものなんじゃないかと思うんですよ。だから、僕はその中でいかに世の中に良い音楽を書ける人間なのかをアピールして、皆さんの信頼を獲得できるかどうかが大事。それが今一番自分に必要な佇まいだと思うんですよね。

ーーお二人のこれまでの活動や今までの発言を聞いていると、アニソンの枠を飛び越えて外側の人たちを巻き込んでいくようなパワーを感じます。今の時代、アニソン業界に限らずどの業界もどんどんと閉じ籠っていく傾向にあるなかで、なぜお二人は意識を外に向けられるのでしょう?

Tom-H@ck:その話で、最近面白いことがあって。このところ海外で仕事をすることが多いんですけど、たとえば中国に行って初対面の人にどんな音楽作ってるか聞かれたときに、いわゆるJ-POPのメジャーなアーティストの名前を出すよりも、「アニソンやってます」って言った方が明らかに反応が良いんですよ。別に相手がアニメ関係の人だからとかじゃなくてね。でもそういう状況を数年前までの僕は、誰かが作った(アニメは海外ウケが良いという)嘘なんじゃないかと疑ってたんですよ。だけど実際に海外で仕事をすると、アニソンを作っているということが本当に武器になる。

 そこで確信に変わったんですけど、日本人自らがアニソンのことを「恥ずかしい」、「一段階下の音楽」だと思い込んじゃってるんですよね。僕も数年前はそういうことを思っていたフシがあったんですけど、実際にそういう体験をすると、海外の人はそんなことまったく思ってないってわかったんですよ。現状は、日本のアニメという文化を、日本人が自らの手で腐らせちゃってるという、物凄くもったいないことをしている。もっと自信満々にやっていいと思うんですよね。

オーイシ:世界に誇れるアニメという文化を持っているのも日本なんだけど、自分から閉じ籠っていってしまうその感じ、それも言ってしまえばジャパニーズカルチャーなんだよね。

Tom-H@ck:本当そうだよね。

オーイシ:僕は2001年にデビューしてるんですけど、閉じ籠って迷走していくそのサイクルをもう5回は繰り返してるんですよ。

Tom-H@ck:たしかに(笑)。

オーイシ:でもその都度その都度思うことがあって。ただただ自分で自分の首を絞めてるだけの話なんですよね。勝手に自分で壁を作ってこの先は行けないって決めちゃったり、有り物で何とかしようとし過ぎちゃったり。自分が持ってる武器はこれだからとか、自分が所属してるチームはここだからとか考え過ぎてしまって、外の世界を見渡そうとしなくなっちゃうんですよ。幸いなことに自分は今いろいろな方々と関わらせてもらってるので、いろいろなことに挑戦できてるんです。なので、今回の「GO CRY GO」を含め、僕らの新しい一面だったり、「ようこそジャパリパークへ」で知ってくださった方にも、「オーイシさんってこんな曲も作るんだ」とどんどん思ってもらえる音楽を作っていきたいですね。

(取材・文=荻原梓/撮影=稲垣謙一)

OxT GO CRY GO
OxT『GO CRY GO』

■リリース情報
『GO CRY GO』
発売:1月24日(水)
価格:初回限定盤(CD+BD) ¥1,800+税(特製スリーブ&アニメ描き下ろしジャケット仕様)
通常盤 ¥1,200+税(アニメ描き下ろしジャケット仕様)

<CD収録内容>
1.GO CRY GO(TVアニメ「オーバーロードⅡ」オープニングテーマ)
2.THE SAILER
3.GO CRY GO(instrumental)
4.THE SAILER(instrumental)

<Blu-ray収録内容>※初回限定盤のみ
GO CRY GO(TVアニメ「オーバーロードⅡ」オープニングテーマ)MusicClip&オフショット映像

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