DAOKO、新たなポップアイコン像の片鱗みせた『THANK YOU BLUE』ツアーファイナル
DAOKOの全国ツアー『Cygames presents. DAOKO TOUR 2017−2018“THANK YOU BLUE”』のファイナル公演が2018年1月11日、東京・Zepp DiverCityで行われた。DAOKO×米津玄師による「打上花火」(映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』主題歌)、DAOKO×岡村靖幸の「ステップアップLOVE」、BECKとの共演が実現した「UP ALL NIGHT × DAOKO」などの話題曲を次々とリリース、さらに約2年半ぶりのオリジナルアルバム『THANK YOU BLUE』を発表するなど大躍進を遂げたDAOKO。この日のライブでも彼女は、最新鋭のエレクトロを軸にしたトラックメイク、美しくも儚いフロウ、切実なメッセージをポップに描き出すリリック、そして、CG、マンガ、実写、歌詞を融合させた映像を駆使した、ハイブリッドかつポップなステージを披露、アーティストしてのポテンシャルの高さを改めて見せつけた。
開演前のSEは「ミッドナイトネオン」(ドミコ)、「Cirrus」(Bonobo)、「Something for Your M.I.N.D.」(Superorganism)など。DAOKOのセンスが感じられる選曲がなんとも心地いい。ちなみに2階席には、IT関連企業のCEO、映像クリエイター、音楽プロデューサー、モデル、ミュージシャンなどがずらり。メディア、カルチャー、ファッションを含め、彼女に大きな注目が集まっていることがわかる。
そして19時15分ごろ、ついにライブがスタート。フロアの照明がゆっくりと落とされ、幕に映されたDAOKOのロゴが青い光を放つ。オープニングはニューアルバム『THANK YOU BLUE』の収録曲「GRY」。ステージ前方に掛けられた半透明のスクリーンに、ブラウン管型テレビをモチーフにした立体的な映像が投影され、そこに「GRY」のリリックが映し出される。「高い壁には幾千のドア」では白いキューブの映像、「さみしいかみさま」ではマンガのコマ割りの手法を使った映像によって、楽曲の世界観を増幅していく。DAOKOの姿はほとんどシルエットでしか見えない。つまりこの演出は、アーティストをよく見せるためのものではなく、舞台全体をメディアにしたパフォーミング・アートに近い。既存のライブの概念を超えていると言っても過言ではないだろう。
スクリーンが取り払われ、DAOKO自身がはっきりと目視できるようになったのは、代表曲のひとつ「水星」のとき。女性ダンサーふたりを交えてフィジカルなステージングに移行する。特に印象に残ったのは、やはりアルバム『THANK YOU BLUE』の楽曲だった。エレクトロ、ベースミュージックなどを取り入れたトラックのなかで〈ほんとはあたしが 一番脆いの/月のかけらみたい〉(「さみしいかみさま」)、〈自暴自棄位が丁度いい/己を投げ捨てて自己覚醒〉(「ダイスキ with TeddyLoid」)というラインが放たれるときの“踊りながら泣ける”感覚は、現在のDAOKOの最大の特徴だと思う。“3年間のインディーズの集大成”という性格が強かった前作『DAOKO』からの約2年半(年齢でいうと17才から20才)、彼女は自らの創造性とポピュラリティを同時に拡大させてきた。その最初の成果というべきアルバム『THANK YOU BLUE』は、ライブという場所でも完璧に機能していたと断言したい。
曲が始まった瞬間、ひと際大きな歓声が上がった「ShibuyaK」からライブはエンターテインメントの度合いを強めていく。「ステップアップLOVE」では岡村靖幸が登場。濃密なソウルを含んだボーカル、キレキレのダンスで会場を沸かせる。“DAOKOの頬に手を触れ、ハグ→DAOKOに胸をドン!と押されて後ずさり”というMVと同じステージングもめちゃくちゃキャッチーだ。さらにニューアルバムの中でも最もポップでラブリーな「BANG!」、DAOKOの知名度を大きく上げたヒットチューン「打上花火」で本編は終了した。
アンコールでは「MCが苦手」というDAOKOがオーディエンスに向けた手紙を読む場面も。
「今回のツアーでは細かいところ隅々まで自分の血が通うように、ツアーグッズも自分でデザインしたり、自分が心から美しいと思うこと、感動できることを意識しました」「自分の感性を信じることが、みなさんを信じることだと気付くことができました」という言葉に続き、DAOKOの初小説と同名タイトルの「ワンルーム・シーサイド・ステップ」、そして「拝啓グッバイさようなら」をパフォーマンスし、ツアーはエンディングを迎えた。
4月10日には東京・恵比寿LIQUIDROOMにて、初の自主企画イベント『チャームポイント』を開催。「いい音、いいクリエイティブ。いま自分が本当にカッコいいと思っているバンド、アーティストを呼んで、最高な企画にしたいと思っています」というこのイベントによって、さまざまなジャンルのアート、音楽をつなぐ才能を持った彼女のスタンスはさらに明確になるはずだ。この日のライブで「自分がいいと思うものを手繰り寄せて、美しいと思うものを追求して、今年はもっともっとオリジナルな存在になっていきたい」と語ったDAOKO。音楽、アート、ファッションなど自由に横断しながら急激に支持を集めている彼女は今年、まったく新しいポップアイコン像を確立するだろう。この日のライブを観て、そのことを強く確信した。
(写真=Ryuichi Taniura)
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。
■イベント情報
「いい音いいクリエイティヴ」を発信するためのDAOKO自主企画イベント。
DAOKO presents 『チャームポイント』
出演:DAOKO/他
4月10日(火)東京 恵比寿LIQUIDROOM
OPEN18:00/START19:00
(問)HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
チケット料金 : 前売り¥3,500(税込・ドリンク代別)
オールスタンディング(入場整理番号付)
チャームポイント OFFICIAL先行予約受付
受付期間 : 1月11日(火)21:00~1月21日(日)23:59まで
受付ページ
■スペースシャワ―TV 放送情報
「LIVE SPECIAL DAOKO TOUR 2017-2018 “THANK YOU BLUE”FINAL」
放送日時:2月10日(土)22:30~23:30、2月12日(月)26:00~27:00、2月20日(火)24:00~25:00
DAOKO MUSIC VIDEO SPECIAL
放送日時:2月10日(土)22:00~22:30
視聴方法
オフィシャルサイト