NEWS 加藤シゲアキは、万能の“表現者”に進化する? 作家としての側面から紐解く
今年結成から15周年を迎えたNEWS。同じジャニーズ事務所に所属する他のグループと同様に、アイドルグループとしての活動はもちろんのこと、4人それぞれが得意とするフィールドで力を発揮しているというのは、他のグループではあまり見かけないタイプではないだろうか。
中でも、アイドルでありながら作家として活躍する加藤シゲアキは、アイドルの常識も作家の常識も覆した、まさに風雲児と呼べる存在だ。まず驚くべきは、作品を発表するペースの速さにある。
映画化もされたデビュー小説『ピンクとグレー』が2012年に刊行されてから、まもなく丸6年が経過し、すでに4冊の長編小説と、1冊の短編集を発表している。もちろんその間にも彼は、NEWSとしての活動を休むことなく、それどころか4人体制となってさらに人気を伸ばしはじめた中で、ドラマの出演もこなしながらの執筆活動を行なっていたのだ。
そして、小学生の頃からジャニーズ事務所に入所し、芸能界を生きてきた彼だからこそ書ける題材で、独自の作家性を確立。とりわけ渋谷を舞台にした初期3作は、いずれも芸能界に関わる主人公を巧妙な構成で描き、若々しい語り口でありながら、芳醇な物語を生み出した。兼業の若手作家とは思えないほどの才能の豊かさが溢れ返っている。
そんな彼が昨年末に発表した最新作『チュベローズで待ってる』は、芸能界ではなく、ホスト業界に足を踏み入れた若者の物語。そこに就活という、いつの時代も若者たちを悩ませる存在を器用に織り交ぜるだけでなく、2015年の現在と2025年の近未来、ふたつの物語を展開させていく。
2025年パートは書き下ろしで執筆されたらしいが、2015年パートは週刊誌に連載するという、兼業作家では考えられないようなスピード感で書かれた今回の小説。とはいえ、それを一切感じさせない現代性を帯びた佳作に仕上がっているのだ。渋谷を離れて新宿を舞台にしたことも含め、彼の作家としての想像力の幅は、着実に拡がり始めているのだろう。
そんな中、1月13日に放送されたフジテレビ系列の特番『タイプライターズ~物書きの世界~』で、兼業作家としての彼の苦悩が語られた。メンバーの脱退が相次いだNEWSというグループの中で、危機感と焦りを感じ始めた加藤は、自分の強みを活かせる場として作家の道を選び、わずか1カ月半でデビュー作を書き上げたこと。そして、やはりアイドルという“演じる”立場と、作家という“作る”立場の両立の難しさがあること。
それでも、アイドルをやっていなければ書けなかったのだと、兼業作家としてのキャリアを振り返った加藤。同番組に出演していた芥川賞作家の中村文則からも「作家のパーソナリティを持っている」と絶賛されるほどの手腕の持ち主だけに、経験してきたあらゆる葛藤が、余すところなく作品に活かされているのだと感じずにはいられない。