THE YELLOW MONKEY、東京ドームで示した“再生”と“進化”

イエモンが示した“再生”と“進化”

 メンバーがステージを去ったと同時に、最新ナンバー「Horizon」がアニメーション映像とともに流れ始める。てっきりライブで披露されると思っていただけに少しだけ肩透かしを食らうも、メンバーがステージにいない状態でこの曲に浸っていると、その歌詞の深さや重みに気づかされる。特に終盤の<もう一度触れられるのなら ずっと離れはしないさ><大丈夫僕ら君の味方だよ そうさいつも君の味方だよ>といったフレーズは特にストレートに響く。この歌詞を吉井ではなくEMMAが手がけているという事実から、THE YELLOW MONKEYの明るい未来が透けて見える、というのは言い過ぎだろうか。

 そんなことを思っていると、ステージに戻ったバンドは「SO YOUNG」を演奏。この曲が発表された当時は、メンバーが「失敗だった」とこぼしたことで知られる、113本にもおよぶ長期ツアー『PUNCH DRUNKARD TOUR』の終盤で、なんとなく「終わり」をイメージさせられたが、この日聴いた「SO YOUNG」からはそういったネガティブな要素は皆無で、むしろ歌詞のとおり<終わりのない青春>がそのまま表現されていた。この「プライマル。」以降の流れ(インタールード的に流された「Horizon」含め)は、一度壊れてしまったバンドを修復し、再び前進していこうという彼らの決意が強くにじみ出たセットリストだったのではないだろうか。そんな意味を考えてしまうほど、この構成は(特に90年代から彼らを知るファンには)深い思いを感じてしまったのだ。

 ストリングス隊を再びフィーチャーした「砂の塔」やヒット曲「BURN」といったエモーショナルナンバー2連発を経て、吉井の「暁に果てるまでーっ!」を合図に披露されたのは「悲しきASIAN BOY」。バンドロゴをかたどった巨大な電飾が登場することで知られるこの曲では、ステージ後方のスクリーンに電飾を模した映像が映され、ゲストミュージシャン総出で派手な演奏が繰り広げられた。吉井はランウェイを歩き回りながら、時に激しく、時に妖艶に歌い踊る。ほかのメンバーも脂の乗った熟練のプレイで曲を盛り立て、2時間半にわたるライブはあっという間に終了。最後はメンバー4人が手を振りながらランウェイを一周して、ステージを降りた。

 アンコールという定番のスタイルを排除し、まるでひとつの物語を見るかのようなこの日のライブは、THE YELLOW MONKEYの再生と前進、進化を表現した、非常に見ごたえのある内容だった。選曲的にもマニアックすぎず、再集結後の曲もたっぷり含む「最大公約数が楽しめるセットリスト」が展開されたのも、東京ドームという場を考えれば正解だ。吉井の言葉を借りるなら、約2年におよぶ“祝福ムード”を一旦締めくくるうえでは、むしろこのセットリストでなければならなかった。そう思えるほど意味のある選曲だと、ライブから数日経った今、より強く感じている。

 今のところTHE YELLOW MONKEYの福岡公演以降のスケジュールは未発表のまま。先述のとおり2018年は、2000年7月リリースの『8』以来となるニューアルバム制作にとりかかるという。2018年のいつ、どのタイミングに発表されるのか、そしてライブ活動再開はいつになるのかまったく予測がつかないが、この日のライブを観た者なら……そこまで時間がかからずに新たなマテリアルを届けてくれる、と安心しているのではないだろうか。そう思えるほど、今のTHE YELLOW MONKEYは最強の状態なのだから。

(文=西廣智一/写真=KEIKO TANABE)

『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017』
2017年12月9日 東京ドームセットリスト

01. WELCOME TO MY DOGHOUSE
02. パール
03. ロザーナ
04. 嘆くなり我が夜のFantasy
05. I Love You Baby
06. サイキック No.9
07. SPARK
08. 天国旅行
09. 真珠色の革命時代~Pearl Light Of Revolution~
10. Stars
11. SUCK OF LIFE
12. バラ色の日々
13. 太陽が燃えている
14. ROCK STAR
15. MY WINDING ROAD
16. LOVE LOVE SHOW
17. プライマル。
18. ALRIGHT
19. JAM
20. SO YOUNG
21. 砂の塔
22. BURN
23. 悲しきASIAN BOY

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