May J.がフルオーケストラ初共演で示した、シンガーとしての無限の可能性
去る11月5日、東京文化会館・大ホールにて『billbord classics May J. Premium Concert 2017~Me, Myself & Orchestra~』が開催された。本公演はMay J.にとって単独では初めてとなるフルオーケストラとの共演が実現したコンサート。壮大なオーケストレーションをバックに、彼女の持つ歌声の魅力をたっぷりと堪能できる内容となった。
東京フィルハーモニー交響楽団・ビルボードクラシックオーケストラのメンバーと指揮者・栗田博文に続いてステージに登場したMay J.。深々とおじぎをした後、最新アルバム『Futuristic』から「Sparkle-輝きを信じて-」と「ふたりのまほう」を感情たっぷりに届けていく。会場に集まったファンへのあいさつと、フルオーケストラコンサートが実現したことへの喜びを言葉にしたMCに続いては、カバーを2曲。ホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」では冒頭をアカペラで披露して自らの歌の力を存分にアピールし、その後ゆっくりとオーケストラと融合していくことで美しく感動的な景色を描き上げた。彼女の憧れだというサラ・ブライトマンの「Time To Say Goodbye」では、全編イタリア語の歌をハイトーンボイスを織り交ぜながら歌い上げていく。普段、J-POPのフィールドでは見せることのない圧巻とも言えるそのボーカリゼーションは、May J.というシンガーの無限の可能性をあらためて提示するものだった。
その後は「母と娘の10,000日~未来の扉~」「本当の恋」を。エモーショナルに展開していくサウンドに負けない、美しく、かつ力強い歌声で会場をしっかりと包み込んでいく。そしてオーケストラのメンバーをはじめ、観客たちも一緒に鳴らしたフィンガースナップが心地よく楽曲の世界を彩った「Have Dreams!」で第1部は幕を閉じた。
20分の休憩を挟んだ後に始まった第2部は、久保田早紀の「異邦人」のカバーでスタート。原曲の良さを生かしつつも、途中にはジャズ的なアプローチも織り交ぜ、オリジナルなアレンジが加えているところも楽しい。高らかなフェイクが印象的に響いた「Faith」に続き、『レ・ミゼラブル』劇中歌の「I Dreamed A Dream」やセリーヌ・ディオンによる映画『タイタニック』の主題歌「My Heart Will Go On」を披露。楽曲への愛情と自身のボーカルスキルを存分に注ぎ込んだそのパフォーマンスに、会場には大きな歓声が巻き起こった。
「ここからはテンポを上げて盛り上がれるような曲を。みなさん、声を出す準備をしてください。なかなかこういう場所では出しにくいとは思うんですけど、今だけはいいんです(笑)」
そんなMCをきっかけに、“静かに楽しむ”から“一緒に楽しむ”オーケストラコンサートへとオーディエンスを誘っていく。会場中に楽しいクラップが鳴り響いた「So Beautiful」、手を頭上に掲げ、すべての人が心地良く体を揺らした「Garden」、“Oh,Yes!”の合唱で最高の一体感を生み出した「RAINBOW」と、高揚感を煽る楽曲群でMay J.らしいピースフルな光景を生み出していった。
「暑くなってきましたね(笑)」と笑顔を見せた彼女は呼吸を落ち着け、ファンへの感謝を紡いだ「SIDE BY SIDE」を情感豊かに披露。そして、「大切な人を思いながら聴いてください」という一言に続き、亡くなった恩師への想いが込められた「My Star~メッセージ~」を。その極上の歌声は楽曲の持つメッセージを優しく聴き手の胸へと運んでいき、コンサート本編は感動的なエンディングを迎えた。
鳴りやまない拍手に迎え入れられて再びステージに登場したMay J.は、アンコールとして「Let It Go」を英語バージョンで届けてくれた。すべてを歌い終えた瞬間、その極上の歌声を称えるように会場にはこの日最大の拍手が巻き起こる。指揮者と手をつなぎ、その声に何度も応える彼女の表情には最高の笑顔が浮かんでいた。まさにプレミアムと呼ぶにふさわしい、May J.にとって初のフルオーケストラコンサート。その経験はシンガーとしての大きな糧となり、未来の活動に繋がっていくことになるのだろう。今回のようなスタイルのコンサートが定期的に行われていくことに期待したい。
(文=もりひでゆき)