パスピエが示した“この先”の可能性 新旧作つなげた東名阪ツアーを見て

パスピエが示した“この先”の可能性 新旧作つなげた東名阪ツアーを見て

 大胡田のボーカルにも新たな変化が感じられた。それがもっとも端的に伝わってきたのはやはり『OTONARIさん』に収録されたミディアムチューン「空」。特にダイナミズムと芯の太さを増した歌声によって描かれる<いつかのように胸騒ぎよ もっと遠くを/見せてくれませんか>というフレーズには強く心を揺さぶられた。彼女のパフォーマンスからは、ボーカリストとして説得力と“自分が中心となってバンドを引っ張っていきたい”という気概を感じ取ることができた。

露崎義邦(Ba)

 本編ラストは、高度なフレーズが緻密に絡み合うアレンジメントを軸にしたアッパーチューン「音の鳴る方へ」、そして、パンキッシュなサウンドのなかで<知らない景色はまだ続くけど/言えない言葉は歌にして/今を抜け出す>という歌詞が響き渡った「正しいままではいられない」。4人体制となったパスピエは“バンドとしてどうあるべきか?”を徹底して考え抜き、その最初の答えとして『OTONARIさん』という作品を作り上げた。その中心を担っている「音の鳴る方へ」と「正しいままではいられない」はこのツアーにおける最大のクライマックスであると同時に“この先のパスピエ”を力強く示していた。

 ライブ終盤のMCで大胡田は「今日はたくさんおしゃべりしなかったけど、曲をやって、いろいろと伝えられたんじゃないかなと思っています。私たちのツアーに集まってくれてありがとうございます。本当に楽しかった」と語った。初期の名作『ONOMIMONO』と最新作『OTONARIさん』を有機的に結び付け、言葉で説明するのではなく、あくまでも楽曲と演奏によって自らの現状とこの先の方向を提示したパスピエ。その真摯なスタンスこそがこのバンドの魅力なのだと再認識できた、きわめて意義深いステージだったと思う。


(写真=Yosuke Torii)

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■セットリスト
『パスピエ TOUR 2017“OTONARIさんのONOMIMONO”』
11月10日(金)東京キネマ倶楽部

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