森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.74
米津玄師、MWAM、SWAY、delofamilia、チャランポ……洋楽シーンともリンクした新作
2007年にNAOTO(ORANGE RANGE)のソロプロジェクトとしてスタート。2ndアルバム『eddy』(2009年)のゲストボーカル・Rie fuが参加したことで、3rdアルバム『Spaces in Queue』(2011年)からNAOTO、Rie fuのユニットに変化したdelofamilia。約3年ぶり、通算6作目となる本作『filament / fuse』は、エレクトロニカ、シューゲイザー、ミニマルテクノなどを通過した穏やかで奥深いサウンドメイクとしっかりと抑制が効いたシックなメロディを軸にした、原点回帰と呼ぶべきアルバムとなった。ORANGE RANGEのメインコンポーザーとしてのNAOTO、ポップアーティストとしてのRie fuとはまったく違う表情を感じることができるが、おそらく二人の“素”に近いのはこちらのほう。delofamiliaは二人にとって、リラックスして好きな音楽を表現できる場所なのだろう。
アコーディオンの小春がMr.Childrenの25周年ドーム&スタジアムツアーに参加、ボーカルのももは女優としてもキャリアを積む一方、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)のオープニング曲「進め、たまに逃げても」を担当するなど、それぞれがさまざまなジャンルで経験を重ねたうえで届けられたチャラン・ポ・ランタンのニューアルバム『ミラージュ・コラージュ』には、“歌とアコーディオン”というミニマムな構成だからこそ実現した、ジャンルや年代を超えた音楽世界が広がっている。ジャズ、シャンソン、ラテン、歌謡曲などのルーツミュージックを自然に取り込んだサウンドメイクの中で現代を生きる人々の掴めそうで掴めない夢を描いた本作。そこには懐かしさと普遍性がしっかりと息づいているのだ。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。