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『SHINJITERU』インタビュー

ハナレグミが語る、最新作にこめた“2017年のムード” 「新たなところに行けるような感覚がある」

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世の中の音楽が完成されすぎている気がしている

ーー今回、7曲目の「消磁器」のように、感情がそのままあふれ出た曲もあるわけで。

永積:「消磁器」ね。そうなんですよ。人間って、どうしても思いとどまってしまう時ってあるからね……たまに磁力をとってあげないとって思うんですよ。これね、実際に「消磁器」っていう機械があるんですよ。カセットレコーダーって、ヘッドをずっと動かしてると、磁石が停滞していって、そのうちテープにノイズが入ってきちゃうんです。その磁力を一度掃除をしてあげるための機械が「消磁器」っていうんです(笑)。それで、今回、この曲だけカセットテープで自分で録っているんです。

ーーとても繊細な曲ですが、「消磁器」なだけにっていう。

永積:そういうの含め。最高でしょ!

ーーそうですね。だから、「線画」も「消磁器」も、そういう前作からくる、永積さんの歌唱にハっとさせられることが多くて。そういう歌唱の可能性を広げたものとして、今回、シンガーソングライターの阿部芙蓉美さんが作詞で参加している曲もすごくいいなと思いました。

永積:僕、ずっと好きで、いつか彼女に歌詞を書いてもらいたいなと思っていました。彼女の作品もそうなんですけど、彼女に少年を感じるんですよ。彼女の少年性と僕の声ってすごくマッチングする気がしたし、多分、北海道の人だからだと思うんですけど、彼女の描く世界って、空がとても広くて……なんかこう、自分の声が彼女の言葉を求めている気がしたんですよね。前から知り合いでしたが、やっといいタイミングで声を掛けられました。

ーー阿部さんの歌詞って、展開もおもしろいですよね。

永積:そう、絶妙なジョーク感があるんですよね。今回の「My California」も、こんなに行くぞ、行くぞってなっているのに、寝るんだ!? っていう。そういうのって胸がキュンとなりますよね。彼女も、自分に自信があるから、臆せず書けるんだろうし、それは刺激されるっていうか。

ーー実際、刺激的だったんですね。わかります。

永積:おもしろかったですよ。彼女なりの譜割りとか歌い回しとかあるから、僕の歌入れの時も、レコーディングに参加してもらって。

ーー歌のディレクションをされたんですか?

永積:そうですね。多分、昭和の作家さんと歌い手って、作家が歌い方のディレクションをしてたと思うんですよ。ナット・キング・コールとかフランク・シナトラなんかのスタンダードとか、美空ひばりさんなんかもそうだと思うけど、作家の先生たちが思い描く歌い回しってきっとあって、それを、メロディ(作曲家)と言葉(作詞家)と歌い回し(歌手)と、三つ巴で、一緒に曲を完成させていたはずで。自分風に歌うのは簡単だけど、こういう作業って失われている気がしていたから、まさにずっと求めていたことで、すごくやってみたかった。今回は、それが叶って、すごくおもしろかった。そこまでやりきったのはよかったですね。

ーー歌い回しとか、言葉がどうのるかというところでは、永積さん作詞作曲の「ののちゃん」は、その極みですよね。〈引っ越す時〜〉のくだりなど、ラップではないですが、こんな言葉ののり方、初めて聴いたぞと。

永積:ああ、それで思い出したのは……最近、僕だけじゃなくて、世の中の音楽が完成されすぎている気がしているんですよね。もっと自由だったものが、形が決まってきている。それで、今回、作詞の際も歌詞っていう感覚で作らなかったところもあって。最初に詩として書いていたものにメロディをのせて、のらないところは朗読みたいになってもいいかなって。実際にツアーでは、最終的に朗読もやったりしているんですが、朗読のほうが、より音楽的なんじゃないかとすら思いますよね。今は、精査したり、まとめることに慣れてしまっていて。そんなに、まとまっていていいのかな? という気もすごくある。だから、意識的ではなくても、はみ出してるとか、滲んでるとか、画角がズレてるとか、そういうことを感じたいなと思っていたかったのかもしれないですね。

ーーでは、竹中直人さん作詞、坂本龍一さん作曲の「君に星が降る」をこのタイミングでカバーされたのは、どうしてだったんですか?

永積:この曲大好きなんですよ。ただ、この曲に限らずなんですけど、前回のアルバムで、録り終えていた曲が3、4曲あって。沖さんの曲「秘密のランデブー」も前回録り終えていたんですけど、あの時のアルバムに入れるとすごくもったいない気がしたんですよね。なぜかわからないんですけど、今年に入って、今年中にこの作品たちを世に出してあげないといけないと思うようになりました。このタイミングじゃないと、お蔵入りになっちゃいそうな気がして。なんなら、このアルバムは、この曲たちを世に旅立たせるために始まったミッションくらいの勢いで(笑)。「君に星が降る」を選んだのもね、前作は入間のほうにある知り合いのカフェで、みんなで合宿しながらレコーディングしていたんですけど、そういう中でこの曲いいよねーって、みんなでわちゃわちゃセッションしていたら、どんどんアレンジができていったんですよね。このアレンジ、気に入っています。

ーーおっしゃるように、「君に星が降る」は今年出すべき感じってありますよね。

永積:なんかこう、今年から何かが大きく変わっていくような気配があって。世の中もですけど、自分としても新たなところに行けるような感覚があるんです。この曲は未来と過去をつなぐ体温を感じていて、現代的でもあるけれど、90年代的というか、不思議な色味でね。

ーー2017年って狭間なのかもしれないですね。

永積:去年までと来年からの狭間。来年からグッとなにかがね、始まるんじゃないかな。すごく漠然とした話ですけど(笑)。そういう予感がすごくしているんです。だから、そういう意味で、今作は生死しているんじゃないですかね。この狭間でいろんなことが一度生死して、また獲っていく感じがあるのかな。

ーー最後に、アルバムラスト「YES YOU YES ME」についても聞かせてください。こちら、自然の音が使われていますね。

永積:今回、キーボードのYOSSYさんの家をお借りしてレコーディングをしたんですが、埼玉の山のほうにあって、鳥の声や川の音が聴こえる絶妙な場所で、庭を見ていると何もしたくなくなるほど、いい音なんですよ。この音がどこかに使えたら気持ちいいなと思っていて、家の外にマイクを立てて、ピアノとギターを弾きながら、レコーディングしていきました。

ーー開けていく歌詞もすばらしいですね。

永積:1番最後に、今回のアルバムって内省的な曲も多いけど、あまりマイナーな意味ではなくて、その中に情熱というか、強さみたいなものを感じてもらいたいし、向いている先は明るいほう、光のほうなんだっていう意味で、アルバムの最後は、どこを向くかってすごく大事な気がしました。「いまからなんにでもなれる」っていう言葉で終わらせたいなと思った。それは、『SHINJITERU』っていうタイトルにも戻るんじゃないかなって。

(取材・文=古城久美子)

『SHINJITERU』

■リリース情報
『SHINJITERU』
発売:2017年10月25日(水)
価格:¥3000(税抜)
※初回生産分のみ紙ジャケット仕様
<収録曲>
01. 線画(作詞作曲:永積 崇)
02. ブルーベリーガム(作詞:永積 崇/作曲:堀込泰行)
03. 君に星が降る(作詞:竹中直人/作曲:坂本龍一)
04. 深呼吸(作詞作曲:永積 崇)映画「海よりもまだ深く」主題歌
05. My California(作詞:阿部芙蓉美/作曲:永積 崇)
06. ののちゃん(作詞作曲:永積 崇)
07. 消磁器(作詞作曲:永積 崇)
08. 秘密のランデブー(作詞:かせきさいだぁ/作曲:沖 祐市)
09. Primal Dancer(作詞:阿部芙蓉美/作曲:永積 崇)
10. 太陽の月(作詞作曲:永積 崇)
11. YES YOU YES ME(作詞:永積 崇・阿部芙蓉美/作曲:阿部芙蓉美・永積 崇・YOSSY)
特設サイト

■ライブ情報
『ハナレグミ ツアー「SHINJITERU」』
11月7日(火) 石川 金沢Eight Hall
11月10日(金) 北海道 Zepp Sapporo
11月12日(日) 宮城 仙台GIGS
11月14日(火)福岡 DRUM LOGOS
11月16日(木) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
11月17日(金) 愛知 名古屋DIAMOND HALL
11月26日(日) 大阪 オリックス劇場
12月6日(水) 東京 国際フォーラム ホールA

オフィシャルサイト

      

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