太田省一『ジャニーズとテレビ史』第三十六回:ジャニーズ出演秋ドラマ
嵐 櫻井翔、KAT-TUN 上田竜也、NEWS 小山慶一郎出演ドラマの“もうひとつの楽しみ方”
最後にNEWSの小山慶一郎は、『重要参考人探偵』(テレビ朝日系)で約5年ぶりの連続ドラマ出演となる。
この作品で、小山は主演のKis-My-Ft2・玉森裕太(『リバース』(TBSテレビ系)で進境著しい演技を見せた彼については、また別の機会にふれたい)のモデル仲間で、推理マニアの周防斎を演じている。玉森演じる弥木圭は、なぜか死体の第一発見者になる体質の持ち主で、そのためいつも事件の重要参考人になってしまう。その窮地を弥木、周防、そしてもうひとりのモデル仲間、古川雄輝扮するシモン藤馬が加わった三人が協力して事件を解決する、というのが基本のストーリーだ。
小山慶一郎には役柄上事件についての推理をよどみなく話すことが求められる。初回にもそういう場面があったが、やはり普段のキャスター業の経験が生きているよう感じられた。実際、事前に出演した『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)では、ドラマの監督から「滑舌が良すぎる」ことを心配されたが、推理を披露するシーンではむしろキャスター滑舌を使ってよいということになったという裏話も披露していた。
また、本作は『TRICK』の伝統を引く「金曜ナイトドラマ」枠ということもあって、本格ミステリーを基調にしつつコミカルな要素も盛り込まれている。その中心になるのは、玉森裕太、古川雄輝、そして小山慶一郎の三人組による軽妙なやりとりだ。ここでの小山は、三人のあいだの潤滑油的かつ指示役的なポジションである。
そこには、現在放送中の『NEWSな2人』(TBS系)などでさりげない気配りとともにスムーズな仕切りを見せる小山慶一郎の姿が彷彿とする。玉森裕太も先述の『羽鳥慎一モーニングショー』のなかで、小山のことを「兄貴みたい」だと言い、いつもしゃべりかけてくれるとその気遣いに感謝していた。そうした空気感が、ドラマにも自ずと反映されているのだろう。
もちろん、ドラマは独立した作品であり、それだけで楽しめるものである。だがこうして他分野での活躍と重ね合わせながら見るのも楽しみ方のひとつだろう。そしてそれは、ジャニーズの活動分野がそれほど多彩を極めるようになっていることの証でもある。
■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『木村拓哉という生き方』(青弓社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。