松村早希子の「美女を浴びたい」
それいゆ、SOLEILのボーカルでデビュー! レトロポップな世界を繋ぐポップアイコンとしての魅力
過去と未来と、今とを繋ぐ タイムマシンそれいゆ号
網タイツにシックな色合いの膝丈ワンピース、つけまつ毛をバサバサさせて、大先輩ミュージシャンのおじさまたちを従えて歌っていても、背伸びしている感じがちっともしない、不思議な13歳(もうすぐ14歳!)の女の子。
60年代フランス映画のポスターからそのまま抜け出てきたようなビジュアルに、完璧に作り込まれたレトロポップな世界観の音楽。けれど、その歌声は幼さ全開で、大人ぶったりカッコつけたりしていません。
初めて会った時はまだ小学生。たんきゅんデモクラシーという不思議なユニットで、「架空の中学校に通う女子中学生」として歌っていました。
もう1人のメンバー・くるみちゃんとは仲良く楽しそうで、ライブにはいつもお友達がいっぱい見に来ていて大騒ぎ、まるでものすごく手の込んだ学芸会のようでしたが、ピュアに頑張る子供達を見て涙すると同時に、音楽の力によって自分自身の子供時代に一瞬で戻ってしまう、他にはない奇妙なライブがたんきゅんデモクラシーでした。
架空ではなく本物の中学生となったそれいゆちゃんが、今度はバンド・SOLEILのボーカリストとしてデビュー!
ポップユニット・les5-4-3-2-1でレトロガーリーポップスの金字塔を打ち立てたサリー久保田さんの手によって、それいゆちゃんの新たな魅力が炸裂しています。
それいゆちゃんが生まれるずっと前に存在したユニット・DOOPEESも連想させる、大人たちの贅沢な遊びを体現する美少女の系譜を繋ぎ、可愛いものに「わぁ! 可愛い!」と素直に反応して、ただただ純粋に愛でることができる幸せな世界。目新しさや流行を追いかけなくても、古くて懐かしいものの中に“新しさ”は宿っている。タイムマシンで色んな時代を行き来して、私たちに教えてくれているかのようです。
たんきゅんデモクラシーの音楽を表現するためには“女子中学生”の姿でなければならず、SOLEILの音楽を表現するためには60年代風のメイク・髪型・ファッションでなければなりません。
等身大の姿ではなくても“その音楽の世界観”を自然に表すことができるのは、それいゆちゃん自身がポップアイコンとして強力なバランスの良さを持っているからでしょう。
お人形のように可愛いけれど「自分が前に出たい! この可愛い私を見て!」という欲求のようなものが全く感じられず、ニッコリ笑った瞬間の御顔は、年齢を超越して何もかもを赦し受け入れてくれる菩薩のようです。
昭和初期、質素な暮らしの中でも可愛いものへのときめきが心を強くしてくれることと、手作りやリメイクの創意工夫によって日常を輝かせることを少女達に広めた、中原淳一氏編集の伝説の雑誌タイトルと同じ名前をもつ女の子が、いま私たちの心を太陽(soleil)のごとく照らしてくれています。
■松村早希子
1982年東京生まれ東京育ち。この世のすべての美女が大好き。
ブログにて、アイドルのライブやイベントなどの感想を絵と文で書いています。
雑誌『TRASH-UP!!』にて「東京アイドル標本箱」連載中。
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