服部隆之が語る、鈴木雅之『DISCOVER JAPAN』シリーズ完結編に凝らした“意匠”

服部隆之が語る、鈴木雅之カバー作に凝らした“意匠”

 鈴木雅之が、「日本のうた、再発見」をコンセプトにしたカバーアルバムシリーズ3部作の完結編となる『DISCOVER JAPAN Ⅲ~the voice with manners~』をリリースした。今年の活動のテーマとして「原点回帰」を掲げている鈴木は、何を考え、この作品をリリースするに至ったのか。同作のサウンドプロデューサーであり、鈴木の盟友でもある服部隆之氏が、作品に凝らした意匠やレコーディング秘話などについて語った。(編集部)

「オリジナルにリスペクトした、マナーの良いカバー・アルバムに」

 これまで『DISCOVER JAPAN』と『DISCOVER JAPAN II』のアレンジを担当してきましたが、その2作では、オリジナル曲へリスペクトをしつつも、その素晴らしい楽曲を、いかに鈴木雅之流に、そして服部隆之流に染め上げてリアレンジするか、ということがひとつのテーマでした。

 でも、今回はシリーズの「完結編」。前2作を作り上げてきたからこそ、そこにはさらに「オリジナルの良さ」「オリジナルの持つ力」を大切にしたいというリーダー(鈴木雅之さん)の想いがあったんです。それはきっと、デビュー以来、37年間にわたって磨き上げてきたボーカリストとしてプライドや自信も含めのことだと思います。

 それを象徴しているのがサブタイトルの「the voice with manners」。オリジナルにリスペクトした、マナーの良いカバー・アルバムにしたい。そんな想いを受けて、なるべくオリジナルのアレンジが持っている力を活かしながら『DISCOVER JAPAN』の音にしていった。これが前の2作品を大きく違うポイントです。ポップスが持っている力のひとつはイントロのフレーズだったりしますから、全曲ではありませんが、イントロをそのまま、またはかなり残したナンバーも多くなりました。

 制作のプロセスで言えば、前回までは、二人でまず緻密な設計図を作って、着地点を決めてアレンジを構築していくような作り方をしていたんですが、今回は曲作りの途中でリーダーとキャッチボールしながら進めていった曲もたくさんあります。歌が入った時点でホーンを抜き差ししたり、歌の表情に合わせてアレンジの機微を変えたりしています。

 例えば「ラブリー」では、僕がベーシックなトラックを作った上に、リーダーがコーラスをプロデュース。コーラス・アレンジを担当した露崎春美さん、chayさん、そして渋谷系の女王である野宮真貴さんのコーラスが入った音源を元に、それを僕がまたまとめる作業をしています。当初はエンディングをロング・フェイドアウトで終わらせる予定だったんですけど、聴いていただいた通りの印象的なカットアウトは、そのコーラス・ワークから誕生しました。まさに「コーラスのプロ」でもある鈴木雅之流に仕上がっていると思います。

 逆に「Endless Story」では、リーダーの歌一本で最後まで行ききる、というボーカリストとしての鈴木雅之を強調していたり、「エイリアンズ」では、このシリーズとしては珍しくデジタル+生楽器というトライもしていますし、鈴木雅之&服部隆之流というアレンジの表情も楽しんでいただけると思っています。

 リーダーとのキャッチボールがより深まったという意味では、この4月にオーケストラ・ディ・ローマとのコンサート・ツアーをコンダクターとしてご一緒したことも大きかったんです。一緒に旅に出た9ヵ所の公演で、いわゆる「一つ釜の飯」を食いましたし(笑)、そこでアルバムの話もできて、二人で「完結編」に向かう大切な時間になりました。

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