星野源が語る、J-POPとソウルミュージックの融合「やってみたかったことが見事に合致した」

星野源、ロングインタビュー第2弾

 星野源が、10thシングル『Family Song』を8月16日にリリースした。リアルサウンドでは、音楽ジャーナリストの高橋芳朗氏によるインタビュー特集を展開。今回はその第2弾をお届けする。

 今回のインタビューでは、『Family Song』の世界観の中でもサウンド面について掘り下げ、テーマとなったソウルミュージックの取り入れ方やレコーディング秘話、各楽器によるアプローチなど試行錯誤を繰り返しながら取り組んだという詳細な話を聞くことができた。(編集部)

ソウルとブルーアイドソウルの両方に影響を受けた

(※前回のインタビューはこちら:星野源、「Family Song」で向き合った新たな家族観「“これからの歌”をまたつくりたいと思った」

ーー先ほどもちょっと話に出ましたけど、音楽的なところでは「60年代末から70年代初頭のソウルミュージック」を目指したとのコメントがありました。単に「60年代末」で終わらせないで「70年代初頭」と時期を明確に区切っているあたりに星野さんの強いこだわりがうかがえます。

星野:そうですね(笑)。僕、あの時期のグラデーションがすごく好きなんですよ。

ーーあー、めちゃくちゃわかります!

星野:あのへん、なんか好きなんです。これからガラッと変わっていくグラデーションの時期で、スウィートスポットみたいな感じが好きなんですよね。

ーーそこまではっきりと時期を絞り込んでいるということは、なにか具体的にモチーフになった作品やアーティストがあるのでしょうか?

星野:マーヴィン・ゲイとかアル・グリーンとかですね。でも特にハッキリ誰というわけではなくて、あの年代のサウンドという感じです。それと、実は自分のなかでグッときたというかビビッとなったのは、実は年代も全然違うホール&オーツ(ダリル・ホール&ジョン・オーツ)なんですよ。

ーーえっ、ホール&オーツですか?

星野:いわゆるアフリカンアメリカンじゃない人たちがやってるソウルミュージック、ブルーアイドソウルのあの感じに最近改めてグッときちゃって。ホール&オーツは「Rich Girl」(1977年)が大好きなんですよ。60年代末くらいのソウルをやりたいんじゃないかなっていうあの感じ。山下達郎さんとラジオで対談したとき(2017年3月20日に民放連加盟ラジオ101局で放送された『WE LOVE RADIO!~山下達郎・星野源のラジオ放談』)、達郎さんがヤング・ラスカルズを聴いてブルーアイドソウルにやられてしまったとお話されていて。本物じゃない人たちがブラックミュージックを表現しようとしているさまに、そういう音楽が好きな日本人の自分もすごくシンパシーを感じたと。その感じです。だからそのふたつですね。本物のソウルと、それとはちょっとちがうブルーアイドソウルの両方に影響を受けてつくりました。

ーーこういうミッドテンポのグルーブはブラックミュージック/ソウルミュージックならではの醍醐味だと思いますが、それをシングルの表題曲、しかもドラマの主題歌としてつくるのはなかなかチャレンジングな試みだと思います。星野さんは「自分の好きなブラックミュージックを血肉化したい」ということを機会あるごとに話していますが、そこにある程度の確信を得たことが今回のこの作風に向かわせたところもあるのでしょうか?

星野:そういうのもありつつ、ドラマ側の要望だからというのが大きいですね。速いテンポじゃなくても構わないというリクエストが向こう側にあったことで、自分のなかの理由として後押ししてもらえたところはあります。やってほしいと言われたし、こちらとしてもやりたいし、という。ただ、そこでソウルミュージックを選択したのは自分の趣味ですよね。確かにチャレンジングな試みだとは思うんですよ。実際調整がとてもたいへんで、レコーディングは朝までかかりましたから。もうレコーディングするにも本当にスケジュールがなくて、結局リハーサルやプリプロの時間がとれなくていきなりレコーディングすることになったんです。バンドのアレンジもレコーディング当日に行なって、客観的に考えるだけの余裕がぜんぜんなくて。いまだから言えるんですけど、この方向でいけるかどうかっていうのはミックスが終わるまでわからなかったんですよ。「SUN」や「Week End」(2015年)のときもそうでしたけど、どう転ぶかはミックスが終わるまでわからなくて。

ーーそれは……めちゃくちゃスリリングですね。

星野:超スリリングなんですよ(笑)。本当に怖すぎる。そういう怖さもあって、最初は普通のポップス的なアレンジもつくっていたんです。どちらかというと、さっき話した「Rich Girl」に近い感じですね。でもやっぱりこれじゃないと思って、もうひとつ試してみたい方向があるということで詰めていったのが完成版の「Family Song」で。時間がないなかで、さらにそういう制限があったんです。ただ、録音スタジオということでレコーディングしてすぐにちゃんとした良い音で聴ける環境が整っていたのはよかったですね。それによっていろいろなアレンジを試すことができたというのはあります。

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