米津玄師が明かす、表現者としての“核心”「最後に残るのは『普遍的なものを作りたい』ということ」

「時代みたいなものを体現できる曲を作りたい」

――普遍的なものを志向するんだ、ということが明確になったのは、いつごろからですか？

米津：明確に意識するようになったのはメジャーデビューしてから、「サンタマリア」という曲を作ってからですね。ただ振り返ると、意識していなかっただけで、ずっとそういう音楽が作りたいと思っていたんじゃないかなと。やっぱり、俺の根本的な性癖なのかなって。

――「普遍的な音楽を作りたい」と言い切る人って、いまは少ない気がします。むしろ「個々にリアリティがあるから、それぞれでいいんじゃない？」というのが現在の文化的な共通了解じゃないですか。そのなかで、米津さんが「普遍的なものを」と言い切っているのは心強いと感じます。

米津：「芯が通っている」という言い方もあるし、周りの世の中のことは関係なく、自分のなかにあるものを信じて表現していく、というあり方も、それはそれで美しいと思うんです。ただ、世の中はどんどん変わっていて、インターネットなんかを見ていても、それこそ自分の頭の上をジャンボジェット機のようにビュンビュン飛んでいくような感覚があって。それに対して回答を出さずに、「社会の流れなんてどうでもいいんだ、これが俺の芯なんだ！」って突き進む方がよっぽど受動的なんじゃないか、と思う瞬間はあります。

――むしろ普遍的なものを目指していく方が軋轢があり、乗り越えるべきものが多いかもしれません。3曲目の「ゆめくいしょうじょ」についても聞きたいのですが、これはリメイクと言っていいでしょうか。

米津：はい。ボカロのころの曲のリメイクって、これまではやりたくなかったんですよ。ライブではやっても、音源として作る意味を見出せなくて。やっぱり、ボカロが歌うために作った曲だし、それを自分の声で歌う意味が見出せなかった。でも、それがだんだんと「やってもいいかな」と思えるようになってきたんですよね。自分のなかで、いい意味でボカロでやってきたことが過去の出来事になっていて。

実際、この曲をリメイクするという情報を出す前に、ちょっと匂わせるかたちでツイッターに写真を上げたんですね。サビの歌詞が写っている画像なんですけど、そこで「新曲ですか？」って沢山言われて。そもそもこの曲の存在を知らない人がすごく増えていて、それが嬉しかったんですよ。だとすれば、やってもいいかなと思って。やっぱりひねくれもの根性なのかもしれないですけど、求められるとやりたくないから。

――それで実際にやってみたら、とてもいい仕上がりですね。数ある楽曲のなかで、この曲を選んだのはなぜでしょう。

米津：自分でもわからないんですけど、最初にリメイクするならこの曲かなと。ボカロで作ったときから、自分が歌っても違和感がないだろうな、と思っていましたし、この曲が最初に来たというのは、自分としては自然でした。

――3曲並んだときにしっくり来ますし、普遍性のある曲だったということでしょうね。

米津：そうですね。

――いずれにしても、「ハチ」時代の曲をフラットに捉えられる時期に来ていると。

米津：ネガティブだったわけではないんですけど、「ボーカロイドの曲は、ボーカロイドの曲でいいじゃん」と思っていたんですよね。それはそれで美しい形としてでき上がっているんだから、わざわざ自分の声で何かをする必要性を感じなくて。それがいまになって、必要性を見出すことができるというのは、必然的なことなのかなと思います。

――さて、今回のインタビューでは“普遍性”という言葉がキーワードになっていますが、この2017年は、そういうモードで曲を作っていくのでしょうか。

米津：そうですね。これから先どうなるのか、自分の身に何が起こるのかわからないですけど、少なくともそういう作り方を変える気はさらさらないですし、時代みたいなものを体現できる曲を作りたいなと思っています。

（取材＝神谷弘一／アーティスト写真撮影＝小浪次郎）

『ピースサイン』ピース盤

『ピースサイン』ヒーロー盤

『ピースサイン』通常盤

■リリース情報
『ピースサイン』
6月21日（水）リリース
ピース盤（初回限定）（CD+DVD＋ピースリング）¥1,900（+税）
ヒーロー盤（初回限定）（CD+赤ジュエルケース+ヒロアカTCGカード）¥1,500（＋税）
通常盤（CDのみ）¥1,200（＋税）
(c)堀越耕平／集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

＜収録曲＞
M1.ピースサイン
M2.Neighbourhood
M3.ゆめくいしょうじょ
M4.ピースサイン（Instrumental）

＜DVD収録内容＞　※ピース盤のみ
『僕のヒーローアカデミア』ノンクレジットオープニングムービー

■配信情報
『ピースサイン（TV edit.）』
配信中
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 mora

■ライブ情報
『米津玄師 LIVE 2017 / RESCUE』
7月14日（金）、7月15日（土）
会場：東京国際フォーラム　ホールA

ワンマンツアー『米津玄師 2017 TOUR / Fogbound』
2017年11月1日(水) 大阪府フェスティバルホール
2017年11月2日(木) 大阪府フェスティバルホール
2017年11月4日(土) 兵庫県神戸国際会館こくさいホール
2017年11月5日(日) 兵庫県神戸国際会館こくさいホール
2017年11月8日(水) 埼玉県大宮ソニックシティ
2017年11月9日(木) 埼玉県大宮ソニックシティ
2017年11月18日(土) 徳島県鳴門市文化会館
2017年11月19日(日) 愛媛県松山市民会館
2017年11月23日(木・祝)　　福岡県　福岡サンパレス
2017年11月24日(金) 福岡県福岡サンパレス
2017年11月26日(日) 鹿児島県　鹿児島市民文化ホール第一
2017年11月29日(水) 新潟県新潟県民会館
2017年12月1日(金) 北海道ニトリ文化ホール
2017年12月7日(木) 宮城県仙台サンプラザホール
2017年12月9日(土) 福島県郡山市民文化センター大ホール
2017年12月14日(木) 神奈川県　パシフィコ横浜　国立大ホール
2017年12月16日(土) 愛知県名古屋国際会議場センチュリーホール
2017年12月17日(日) 愛知県名古屋国際会議場センチュリーホール
2017年12月23日(土・祝)　　岡山県　岡山市民会館
2017年12月24日(日) 広島県上野学園ホール