指原莉乃3連覇、渡辺麻友卒業発表……“AKB48グループのあり方”問われた『総選挙』を振り返る
今年の『AKB48 49thシングル 選抜総選挙』は、最初から最後まで波乱の連続だった。指原莉乃(HKT48/STU48)、渡辺麻友(AKB48)のラスト総選挙宣言にはじまり、速報発表での荻野由佳(NGT48)の1位、沖縄・豊崎美らSUNビーチにて開催予定であった開票イベントが悪天候により中止、無観客での開票イベントとなった。
総選挙の結果は、すでに報道されている通り、指原が前人未到の3連覇を果たした。票数は24万6376票。2位の渡辺を約10万票近く離し、昨年の自身の票数も3000票余り増やした、文句無しの総選挙における有終の美と言える。また、渡辺は年内いっぱいをもってグループからの卒業も発表。長年、総選挙の王座を奪い合ってきたライバルであり、良き理解者であった指原と渡辺。2人が抱き合い、涙を流すシーンはAKB48の歴史の1ページを見ているようであった。
今年の総選挙は、改めて「AKB48グループ」の在り方が問われるものであったように感じる。開票イベントにて、最初に会場の空気を一変させたのは高橋朱里(AKB48)だった。「アンダーガールズのそこまで上げてくれた皆さんがいる中で『結婚します』とか、ファンの皆さんが複雑な気持ちになってしまうことを言うメンバーを見て、それまでに涙を流していたメンバーを見ると胸が痛いです」、高橋の言葉にメンバーの表情が変わる。続く岡田奈々(AKB/STU48)も、「真面目にやってる人が報われるようにしたい」とこれからSTU48を先導していくキャプテンとしての威厳を見せた。
「努力は必ず報われるとは限らない」「頑張っている人が報われて欲しい」、高橋みなみは2015年、最後の総選挙のスピーチでこう話している。今年、その“努力”が実を結んだのが、第8位の惣田紗莉渚(SKE48)、そして第5位の荻野由佳(NGT48)だろう。“苦労人”と呼ばれる荻野が涙ながらに語りかける「私をアイドルにしてくれてありがとうございます」は、あまりにも眩しかった。日差しがあれば、影があるように涙を飲んだ者もいる。どれだけ直向きに汗をかいても、自分が選ばれるかは分からない。それでも、がむしゃらに走らなければならない。第4位、宮脇咲良(HKT48/AKB48)の「結果ではなく過程が大事」という言葉も、後輩に希望を与えた。劇場公演、握手会、SHOWROOM配信。立候補を辞退することもできる状況の中で、その“過程”は誰よりもファンが近くで見てきたはずだ。
AKB48グループにとって“努力”とは、脈々と受け継がれるテーマのようなものだ。「努力」「希望」「夢」「未来」といったワードを題材にした楽曲が、AKB48グループには数多く存在する。小嶋陽菜の卒業公演を観ていた時に、彼女の最後の挨拶での一言が今でも胸に残っている。「12年前、すごく軽い気持ちで入ったこのAKBに、本気になる瞬間が何度もありました」。秋元康は、小嶋の卒業シングル曲「シュートサイン」の歌詞の中で、<たった一度の人生で/何度本気になれるのだろう>と綴っている。