SKY-HI、プロデューサーの才覚発揮 新作『Silly Game』での独自のバランス感覚を紐解く

参考:2017年5月29日~2017年6月4日のCDシングル週間ランキング(2017年6月12日付)(ORICON STYLE)

 2017年6月12日付の週間CDシングルランキングで異彩を放つのが、9位のSKY-HI『Silly Game』。SKY-HIとは、AAAの日高光啓のソロ名義。2017年5月2日、3日には日本武道館での公演も行っています。

 そのSKY-HIの「Silly Game」は、ブラスセクションの鳴り響くジャジーな楽曲で驚きました。しかも、ジャズのフィーリングはリズムセクションにもしっかり存在しています。かと思えば、ラップ・パート、そしてエレキ・ギターがうなるパートへと展開していくめまぐるしさ。これだけの密度を誇る「Silly Game」は、実は4分にも満たない楽曲で、心地良い力業です。

SKY-HI『Silly Game』(CD ONLY盤)

 作詞作曲とトラック・プロデュースはSKY-HI。そしてコ・プロデュースは、SKY-HIのライブで活躍するバンド・SUPER FLYERSのTak Tanakaが担当。レコーディングも、ギター、ベース、ドラム、キーボード、トランペット、サックス、トロンボーンという編成によるバンドで行われています。

 BPMの速い「Silly Game」では何を歌っているのだろうか……と歌詞を見ると、ラップでは<一声かけ綺麗に整列 / 外れモノを皆で軽蔑 / 側から見ればどうにもCrazy>というパンチラインが登場しています。時事的な言葉をリリックに織りこみながらSKY-HIがラップするのは、現在の日本の不寛容な空気です。

 ジャズをベースにしたサウンドと硬派な歌詞だというのに、キャッチーな「Silly Game」には大衆性もしっかり担保されています。マニアックさとメッセージ性と大衆性の並立。「Silly Game」で真に感嘆したのは、SKY-HIのバランス感覚でした。

 その「Silly Game」から雰囲気が一転して、完全にヒップホップとなるのが、カップリングの「Walking on Water Remix (feat. Lick-G & RAU DEF)」。2017年のアルバム『OLIVE』収録曲のリミックスで、「Silly Game」とは対照的に、まったく甘味のない楽曲です。

 作曲とトラック・プロデュースで参加しているのはMURO。さらに、新たにラップで参加しているのは、Lick-GとRAU DEFです。Lick-Gは、今春に開催された『BAZOOKA!!!第9回高校生ラップ選手権』で準優勝を果たしたラッパー。つまりまだ高校生なのです。RAU DEFは、かつてZeebraとのビーフも話題になったラッパーで、2015年にはSKY-HIが主宰するレーベル<BULLMOOSE>からアルバム『ESCALATE II』をリリースしています。

 MURO、RAU DEF、Lick-G。要は、ヒップホップの大御所、中堅、若手が一堂に会しているのが「Walking on Water Remix (feat. Lick-G & RAU DEF)」という楽曲です。これをメジャー・フィールドに届けてしまうSKY-HIのプロデューサーとしての才覚には思わずうなりました。

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