米津玄師、夏代孝明、神聖かまってちゃん…2017年春アニメ主題歌で注目のネット発アーティスト

米津玄師「ピースサイン」(『僕のヒーローアカデミア』2期オープニングテーマ)

 インターネット発の男性アーティストを挙げるにあたって、欠かせない存在である米津玄師。前クールの『3月のライオン』エンディングテーマ「orion」は、繊細なプログラミングを主体としたサウンドと感情を絞り出したようなボーカルが特徴的な切ない楽曲で物語を彩ったが、今回はその真逆に振り切るような疾走感のあるギターロックに。少年マンガのオープニングにふさわしいバンドサウンドで主人公・緑谷出久の危ういまでの純真さや誠実さを表現している。

 米津は以前のインタビューで「自分のなかにはまだ、子どもの頃の自分がものすごく強くいて、子どもの頃の自分にお伺いを立てながら音楽を作っている」と話していたが、この楽曲もまた、自身の中にある“少年”へ真正面から向き合ったことで生まれた楽曲なのかもしれない(参考:米津玄師が明かす、“新しい音楽”が生まれる場所「子どもの頃の自分にお伺いを立てながら作る」)。「LOSER」「orion」とテクニカルな面を見せるシングルが続いていたなかで、『ヒロアカ』がきっかけで「ピースサイン」のような楽曲が生まれたのは今後の転機になるのかもしれない。

アニメ『僕のヒーローアカデミア』第2期オープニング(OP)ムービー/「ピースサイン」米津玄師

夏代孝明「トランジット」(『弱虫ペダル NEW GENERATION』第2クールオープニングテーマ)

 動画投稿サイトで歌い手として高い評価を得てきた、インターネット発の若手男性シンガーとして、いま勢いのあるアーティストの一人が夏代孝明だ。2015年にアルバム『フィルライト』でデビューして以降、シングル3枚でそれぞれアニメ主題歌を担当。その3枚目となるのが『弱虫ペダル NEW GENERATION』第2クールオープニングテーマの「トランジット」だ。同アニメは高校生による自転車競技を題材にした本格的なスポーツ漫画を原作に持ち、少年漫画としてのアツさが男性ファンを、個性豊かな大勢のキャラクターとその関係性が女性ファンを虜にしている。『弱虫ペダル NEW GENERATION』は作中で1年が過ぎ、世代交代以降の世界観を描くもの。"新世代の台頭”をテーマにした作品に夏代が楽曲を提供するというのは、まさにぴったりな人選というわけだ。

 夏代は第1クールのオープニングテーマ「ケイデンス」も担当しており、2クール続けて番組の冒頭を彩っているが、今回の「トランジット」はさらにそこからギアを一段階上げたような疾走感を持つ楽曲。ロックなサウンドと透き通った歌声が感情を高ぶらせ、目まぐるしく変わるオープニング映像とも見事にマッチしている。

夏代孝明「トランジット」ミュージックビデオ(Short Ver.)/TVアニメ『弱虫ペダル NEW GENERATION』第2クールOPテーマ

 ここまで各アーティストと主題歌を紹介してきたように、今クールはそれぞれの新たな引き出しを開け、転機となりうる楽曲が多いように思える。2010年代前半に頭角を現し、いまキャリアの2周目ともいえる状況にあるアーティストや、彼らに憧れて音楽を磨いてきた若手がクロスする現在がアニソンを通じて確認することができるという点を踏まえて、聴き直してみるのもいいのかもしれない。

(文=向原康太)

■リリース情報
『トランジット』
発売:5月17日
価格:アニメ盤(アニメ描き下ろしジャケット・CD+ブックレット) ¥1,200(+税)
アーティスト盤(CD+DVD)¥1,700(+税)

<収録内容>
1.「トランジット」
2.「ニア」
3.「世界の真ん中を歩く」
4.「トランジット」(Instrumental)
5.「ニア」(Instrumental)
6.「世界の真ん中を歩く」(Instrumental)

<特典内容(映像・封入)>
・アニメ盤
『弱虫ペダル NEW GENERATION』
第2クールオープニングムービー絵コンテブックレット

・アーティスト盤
DVD[「トランジット」ミュージックビデオ/「世界の真ん中を歩く」オリジナルアニメミュージックビデオ]

■関連リンク
夏代孝明公式サイト
夏代孝明公式twitter
夏代孝明:LINE公式アカウント

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