嵐「I’ll be there」は次作アルバムへの布石に? “大人の嵐”表現した同曲の意義を読む
嵐は一昨年に「日本らしさ、ジャニーズらしさへの原点回帰」を掲げたアルバム『Japonism』を、そして昨年には「嵐が思う今の嵐」をコンセプトにしたアルバム『Are You Happy?』をリリースしている。そして、今回の楽曲のテーマである「大人の嵐」は来るべき次作アルバム全体のキーになる可能性もある。
というのも、以前にも嵐がビッグバンド・ジャズを取り入れたことがあるからだ。それは、2006年のアルバム『ARASHIC』収録の「LOVE PARADE」。こちらは通常盤のボーナス・トラックに収録されたバラード・ナンバーだ。『ARASHIC』は彼らが今のような国民的トップアイドルになる少し前にリリースされた、彼らの方向性や存在感を決定づけるような一枚だった。
ただし、平均年齢23歳だった当時の5人にとって、この時点で「大人な嵐」を見せることは、あくまで「攻め」の戦略であったはずだ。多少背伸びしてでもクールでスタイリッシュな姿を見せる。そういうアルバムで、ボーナストラックとして収録されたのが「LOVE PARADE」だった。
一方、平均年齢34歳となった今の5人にとっての「大人の嵐」は、肩肘張らない等身大の姿と言える。
そういう意味でも、『Are You Happy?』に続く新曲でこういう路線を見せたことは、次のアルバムやツアー全体の方向性や世界観にもつながる一手なのではないか? と思うのである。
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter