シングル『一生一瞬』インタビュー

Sonar Pocket、逆境乗り越え見つけた“新たな自分たち”「より自由に音楽と関わっていきたい」

 2016年秋メジャーデビューから丸8年を迎えたSonar Pocketは、アーティストとしてのさらなる飛躍を目指すために第2章への突入を高らかに宣言。そのキックオフを告げるニューシングル『一生一瞬』が届けられた。あたたかみを感じさせるサウンドスケープの中で限りある人生の中で育むべき無償の愛という真摯なテーマを描いた表題曲は、昨年10月に胆管結石による重症急性膵炎で生死の境をさまよったko-dai(Vo)の体験を元にして生まれたもの。それはまさに生まれ変わったとも言えるSonar Pocketの新たな姿を鮮烈に感じさせる仕上がりとなっている。メンバーの大病を乗り越えたたことで彼らは果たして何を手に入れたのか。メンバー3人に話を訊いた。(もりひでゆき)

「入院中には自分の思いを赤裸々に言葉にしていった」(ko-dai)

――『一生一瞬』はSonar Pocketの活動の第2章開幕を告げるキックオフシングルとのこと。デビュー9年目となる今、なぜ新章への突入を決意したのかをまず聞かせてください。

ko-dai:これまで活動してきたことで「Sonar Pocketはこういうアーティストだよね」っていう世間の認識もあったと思うし、僕ら自身、そのイメージの枠にハマってしまっていたところがあったんですよ。だからそれをこのタイミングで一回、取っ払ってしまおうと思ったんです。現状維持で続けていくことももちろんできたけど、僕らには東京ドームのステージに立つ、さらなる飛躍を目指すという目的があるので、そのためには今まで以上にクリエイティブな感覚で、より自由に音楽と関わっていくことが必要だと思ったんですよね。

――そういった気持ちは前シングル『Rain』にも込められてはいましたよね。

ko-dai:そうですね。新しいことをやりたいという気持ちはここ最近、ずっと持っていたことだったので。ただ去年、僕が病気になってSonar Pocketというグループが一瞬止まってしまったときに、その思いがより強くなったというか。文字通り、生まれ変わった僕らをみんなに見てもらいたいなと思った。なので今回の曲を第2章のキックオフにすることにしたんですよね。

matty(DJ):そもそもko-daiの一件がなければこの曲はできていなかったですから。そのことが本当に大きなターニングポイントになったんですよ。

eyeron(Vo):うん。漠然としていた第2章へのイメージがより鮮明になったからね。それによって、音楽に対して今まで以上に真正面から向き合えるようにもなったと思うし。ぶっちゃけko-daiが入院したときは、もしかするとSonar Pocketを続けられないかもしれないという状況だったりもしたので、こうやってまた活動できること、こうやって取材してもらえてること、その他のいろいろなことに対してよりありがたみを感じることもできるようになりましたからね。

ko-dai:たくさんの人に心配や迷惑をかけましたけど、いろいろなことに気づけたという意味では病気をして良かったなっていう気持ちもあります。日常的な行動、ご飯を食べるとかシャワーを浴びるとか、そういうことが一切できなかったですからね。当たり前のことなんて何もないんだなぁってことにも気づけたので。

――昨年10月にko-daiさんが患った胆管結石による重症急性膵炎はかなり危険な病気のようですね。

ko-dai:そうですね。2、3割は亡くなってしまう病気だと聞きました。僕自身、「死ぬかもしれない」って言われましたから。ただ、結果として僕は救われたわけなので、だったらそれをみんなに伝えないとなって思ったんです。もし今、「死にたい」と思ってしまっている人がいたとしたら、それを「生きたい」という気持ちに変えられるひとつの要因に僕らの音楽がなればいいなって。そんなことを思いながら、入院中には日記として自分の思いを赤裸々にどんどん言葉にしていってたんですよね。

eyeron:俺とmattyはその日記を病室で見せてもらったんですけど、そこに書かれていた気持ちは本当にリアルで胸が詰まるような内容でしたね。

matty:うん。ko-daiが率直な気持ちを包み隠さず書き綴っていたことが新鮮に感じたところもあったし、とにかく胸打たれましたね。

ko-dai:その中には今回の曲のサビも丸々書いてあったんですよね。<一生は一瞬です>って。なのでそれを元にして曲にしていくことに決めたんです。

――限られた一生の中で育むべき無償の愛。それをテーマにするのは必然だったと。

ko-dai:そうですね。病気を乗り越えて救われたからこそ、Sonar Pocketの第2章として最初に届けるメッセージはそういうものでありたいなと思いました。一瞬の連続が一生で、それがいつ終わるかわからないからこそすべてのことを大切にしていきたいなって。ただ今回は言葉や、そこに込めた気持ちがすごく大きかったんで、そのまま自分たちで曲に落とし込むと聴いたときの感触がかなり重すぎるものになるなっていう危惧もあって。だからサビメロに関しては、いろんな作家の方に頼んでコンペで選んだんですよね。

ko-dai

――パーソナルな経験から生まれた強い思いを一方的に押し付けるのではなく、あくまでも聴き心地よく、ポピュラリティを大事にして仕上げようとするところは実にSonar Pocketらしい判断ですよね。

eyeron:うん。歌詞の部分でも、ko-daiの言葉にはすごく重みがあるんで、俺が書いたパートではラブソングっぽい雰囲気を出すことで全体的なバランスを取ったところもありましたしね。もちろんko-daiのことを度外視しているわけではないけど、Sonar Pocketらしい感覚も大事にするというか。

matty:そこはトラックに関しても同様で。重くならず、でも軽くなりすぎずっていう絶妙なポイントを探るために3人でかなり細かく話し合いましたからね。メロの良さを生かしつつ、アレンジは足していくことよりも引いていく作業で形作っていきました。

――今回は本当にメロの良さが際立っていると思いました。言葉との結びつきがものすごく強いから、聴き手の心にメッセージがスッと入り込んできますよね。

ko-dai:サビメロは若手の作家さんが作ってくれたものを選んだんですよ。普段の自分ではなかなか思いつかないラインだし、単純に歌ってて気持ち良かったっていうのが決め手で。さらにAメロBメロはその作家さんがピアノのコード進行を弾いてくれて、そこに俺らがメロを乗っける手法も試したんです。結果、それがすごくやりやすかったんで、相性いいんだなって思いましたね。

――第2章では新しいクリエイターとのコラボも積極的にやっていく感じですか?

ko-dai:はい。もうすでに初めましての人とけっこうやってますから。お互いゼロからの関係なんで、ジャブの打ち合いが楽しいんですよ。「どこまで打っていいんだろう」みたいな。そういう中から新たな化学反応が生まれますからね。

matty:これまでは、「この人たちと一緒にやれば間違いない」っていう安心感を大事にしてたところもあったんですよ。もちろんそれもいいんだけど、第2章では新しい出会いを楽しみながら、どんどん今までとは違ったことをやっていけたらいいなと思ってますね。

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