スペースシャワーTV主催『TOKYO MUSIC ODYSSEY』レポート
映像、アート、テクノロジー……音楽との刺激的なコラボ見せた『TOKYO MUSIC ODYSSEY』レポ
スペースシャワーTVが主催する音楽とカルチャーの祭典『TOKYO MUSIC ODYSSEY』が、3月2日から8日にかけて渋谷を拠点に開催された。「都市と音楽の未来」をテーマに掲げた同企画では、『SOUND & VISION』『ALTERNATIVE ACADEMY』『NEW FORCE』『SHIBUYA POP UP STUDIO』『MOVIE CURATION』『SPACE SHOWER MUSIC AWARDS』の計6つのプログラムが行われた。
『SOUND & VISION』(3月3日)
3月3日に開催されたのが『SOUND & VISION』。同イベントでは、「MUSIC×CREATIVE」をテーマに、きのこ帝国×MITCH NAKANO、DAOKO×Kezzardrix+backspacetokyo、HIFANA×GRVJの3組が、音楽と映像とアートが一体となったパフォーマンスを披露した。
一番手のDAOKOがタッグを組んだのは、LITEのライブなどでVJを手がけるKezzardrixとプロダクションチームbackspacetokyo。モーショングラフィックスを使用し、1曲目「かけてあげる」では、DAOKOがステッキを持ち、その動きにあわせて映像も自由自在に変化。また、終盤の「ダイスキ with TeddyLoid」では、「スキ」と「キライ」が激しく交錯する歌詞にあわせ、ダークでカオティックな映像もスピーディに切り替わり、ヒリヒリするような切迫感を体感することができた。キュートなだけではない、生々しい感情が吐露されるDAOKOの世界観にどっぷりと浸かることのできるライブであった。
また、HIFANAは、普段のライブでもコラボレーションしているクリエイティブプロダクションCRVJとの共演。繰り出すビートにあわせ、サンプラーを操る手元やアニメーションがスクリーンに映し出される。また、スペシャルゲストとして鎮座DOPENESSが登場。「Wake Up」「Mr.Beer」では、CRVJのスタッフがiPhoneで撮影した映像がスクリーンに写り、鎮座DOPENESSがラップする姿を様々な角度から見せ、即興性が高いスリリングなパフォーマンスで会場を盛り上げた。
きのこ帝国は、写真家・映像作家のMITCH NAKANOとコラボ。 花をモチーフに女性を被写体としたヌーディーな質感の映像をバックに「FLOWER GIRL」「LAST DANCE」「足音」など、きのこ帝国の楽曲の中では比較的スローな曲を中心に披露した。一本のショートムービーのような映像は抽象的でありながらも、きのこ帝国の詩世界や楽曲のイメージをさらに膨らませていく役割を果たし、儚さと美しさを表現していた。
会場内のブースでは、illionのステーションIDや、水曜日のカンパネラの野外ライブを体験できるVRゴーグルを設置。また、転換中には、3DVRで生配信が行われた宇多田ヒカルのネットイベント『30代はほどほど』のメイキング映像が上映された。VRやVJ、モーショングラフィックスなど、テクノロジーの発展によって音楽をよりフィジカルに楽しむ方法が新たに生まれている今の音楽シーン。3組とも音楽と映像のタッグの組み方は違えど、音やリズムを体感させ、より濃い音楽体験をもたらすイベントだった。
『ALTERNATIVE ACADEMY』(3月4日)
3月4日の『ALTERNATIVE ACADEMY』にはライブアクトとしてcero、STUTS、Yogee New Waves、WONK、DJアクトとしてokadada、サイトウ“JxJx”ジュン、Licaxxxが出演。オールナイトでの開催ということもあり、普段の時間のライブよりもクラブライクで、さらに自由に音楽を楽しむ観客の姿が印象的だった。
オープニングDJを務めたokadadaからバトンを受け取ったのはcero。序盤は、「Summer Soul」や「Yellow Magus」を、音源に新しいアレンジを加えて披露。昨年末に開催された『MODERN STEPS TOUR』以降、ライブのサポートメンバーも変わり、さらにこの日のライブはゲスト・ドラマーとしてYasei Collectiveの松下マサナオが参加。去年11月にリリースした「街の報せ」や新曲も演奏され、バンドの最新のモードでもって、既発曲も新たに更新していくcero。高城晶平(Vo)のスキャットやシャウトを自在に使い分ける肉体的な歌とビートはより洗練され、濃厚なグルーヴを生み出していた。
続く、トラックメーカー兼MPCプレーヤーのSTUTSは、アルバム『Pushin'』収録曲を中心に披露。終盤では、同アルバムにも客演として参加しているKMCやAlfred Beach Sandalなども登場し、その手から刺激的なビートを叩き出し、オーディエンスを踊らせていく。そしてそんなSTUTSの紹介を受けスタートしたのがYogee New Wavesだ。ギターとベースに新メンバーを迎え、「Megumi no Amen」や「Climax Night」、そして新曲数曲を演奏した。角舘健悟(Vo・G)はMCで「みんなが楽しそうなのが伝わってくるのが最高なんだよな」と口にしていたが、 まさにこのイベントは、ステージ上のパフォーマンスとオーディエンスの反応の相乗効果によって、会場にひとつのグルーヴが生まれていたようにも感じられた。
Licaxxが低音の効いたクラブサウンドで会場をヒートアップさせ、その後この日ラストのライブアクトとしてステージに現れたのがWONKだ。ゲスト・プレイヤーとしてサックス奏者を迎え、また曲中にはメンバーのソロを回す。華やかかつハスキーな声を持つ長塚健斗(Vo)が歌う姿にはスター性も感じられた。ジャズやヒップホップの要素も取り入れ、今、世界のあらゆる場所で同時に起こっているブラック・ミュージックの新たな動きとシンクロしているWONKのサウンドに酔いしれることのできる、圧巻のパフォーマンスだった。
再びokadada、そして最後はYOUR SONG IS GOODのサイトウ“JxJx”ジュンがDJを務め、朝方5時にイベントは終了。この日出演したアーティストはみな、それぞれ独自のサウンドを突き詰めながらも、近しい感性と音楽観を持ち、シーンに新たな刺激をもたらしている。今後もこういったライブとクラブの中間ようなイベントを入り口に、ナイトカルチャーを楽しむ人々が増えることで、渋谷という街はさらに盛り上がっていくだろう。