金子厚武のプレイヤー分析
SHISHAMO、ねごと、赤い公園から注目新鋭まで プレイヤー視点で見る2017年ガールズバンド
最後に、今年注目の2バンドについても触れておこう。まずは2月23日から始まった『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR』にも参加し、ブレイク最右翼と噂されるyonige。デビュー作『Coming Spring』の頃は、トリビュートへの参加も発表されているASIAN KUNG-FU GENERATIONに通じるオルタナなサウンドが印象的だったが、昨年発表の『かたつむりになりたい』ではより開かれたポップなサウンドへと移行。フロントマンの牛丸ありさのギタープレイはコード弾きを中心としたシンプルなものだが、レスポールを抱えた男勝りなたたずまいに、新たなカリスマ誕生を期待させる。
名古屋を拠点に活動し、「NEO=ニュー・エキサイト・オンナバンド」として「NEOカワイイ」を標榜する4人組、CHAIも面白い。ファンクやヒップホップを音楽性のベースにしつつも、そういったカテゴライズが馬鹿らしくなるような自由奔放な活動姿勢が楽しく、ある意味インディーズ時代の赤い公園にも通じる雰囲気がある。MVなどはよりめちゃくちゃで、エキセントリックなイメージも先行しているように思うが、専門学校出身のドラマー・カナを中心とした、グルーヴ感のある演奏はなかなかのものだ。
yonigeもCHAIもそれぞれ全く違う方法論で、ステレオタイプな「ガールズバンド」からの脱却を試みる2組だと言っていいだろう。共に4月に新作のリリースが予定され、そこからまた新たな波が生まれていくのかもしれない。
■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。