majiko『CLOUD 7』インタビュー
majikoの“感覚”が生む、アレンジや表現の個性「赤信号は止まることを許されてる時間なんだ」
ネットでその歌声が注目され、すでに2枚のアルバムと1枚のシングルをリリース、さらにライブ・イベントでの圧倒的なパフォーマンスも話題となった「まじ娘」が、majikoとなりついにメジャーデビュー。新人というには驚異的な実力と実績をすでに持つ彼女の最新ミニ・アルバム『CLOUD 7』は、何にもどこにも媚びずに自己の最深部にまで潜って掴み取った一枚。目の前にかざした手のひらも見えないほどの闇にきらめく詞世界、息もできないほどひりついたサウンド・メイク、さらにはアレンジ、イラストレーションと、広大な地下世界を操る女王・majiko、その登場は、降臨と呼ぶにふさわしい。majiko、第一声をお届けする。(谷岡正浩)
自分で吐き出したものを自分で食べてるみたい(笑)
ーーはじめにイメージした作品の全体像は、どんなものだったんですか?
majiko:わりと展開にバリエーションがあって、上目だなって。
ーーうえめ?
majiko:“CLOUD 7”って天国の別名だったり、あと他にも、いろんな意味があって、「天にも昇る心地」ってテンションが上がった状態を表したりする言葉らしくて。
ーーなるほど。上目ね(笑)。これまでの作品もそうなんですけど、アルバム1枚ごとに全体のイメージというか色というか、その違いがくっきりしていて、1枚の中で地続きの世界観が楽しめるという感覚があるんですよね。まるで一冊の長編小説を読むような。
majiko:そうですね。とくに今回は曲が出来た時期はバラバラなんですけど、世界観はより統一されていますね。1曲目の「prelude」が前奏としてあって、2曲目の「SILK」から6曲目の「Lucifer」まで、上から下に堕ちていく群像劇としてアルバムのストーリーを創っていこうって最初に思いました。だから最後の曲は「Lucifer」、堕天使じゃないとダメだったんですよ。で、「SILK」のイメージは蜘蛛の糸なんです。それが下に下に降りて行って、でも最後「Lucifer」には辿り着かないというのが全体でイメージしたストーリーですね。わたし、自分でイラストも描くんですけど、曲の世界を1曲ずつイラストにしていくことで、よりハッキリ曲が自分の中で見える、というのがあるんですよ。
ーーそうやって自分の曲を違う表現に変換して、曲の世界観を把握するんですね。
majiko:自分で吐き出したものを自分で食べてるみたいですね(笑)。
ーー僕の『CLOUD 7』を通して聴き終わったイメージは、夜だな、と思いました。
majiko:すごいわかる(笑)。わたしも並べてみて、めっちゃ夜だなと思いました。だんだん夜が深まっていく感じですよね。
ーーホリエアツシ(ストレイテナー)さんとは今回どのようなやり取りだったのでしょうか?
majiko:サウンド・プロデューサーという立場で、サウンド面をすごく見ていただきました。
ーー1stアルバム『Contrast』(2015年)からのお付き合いですもんね。
majiko:高校時代からストレイテナーが好きでずっと聴いていたので夢みたいな話です(笑)。
ーーではここから1曲ずつお話を伺いながら、これまでどういう音楽を聴いてきたのかとか、そのへんのことも合わせてお聞かせください。まず、1曲目の「prelude」は短めのインスト曲ですが、これは宅録ですか?
majiko:そうですね。
ーー浮遊感のあるサウンド・スケープが、レイ・ハラカミさんを好きで聴いてきたのかなと思ったんですが。
majiko:大好きなんですよ。ディレイの感じとか、相当影響は受けていますね。
ーーつづく2曲目の「SILK」は元AIR、現Laika came backのCozyこと車谷浩司さんの曲です。AIRにも思い入れがありそうですね。
majiko:もうめっちゃ好きで。車谷さんにお会いしたときも、あの曲が好きでとか、あのときのライブがどうでとか、語りまくったらちょっと引かれました(笑)。で、「SILK」を最初に聴いたときにAIRの「触れていたい」の感じがちょっとあって、大好きな曲だったから嬉しくて、さっそく車谷さんに「あの、ここって『触れていたい』のニュアンス入ってますか?」って訊いたら、ニコッとしてくれました(笑)。
ーーアカペラから入って、最初のキックの入るタイミングが半分遅れて来るところなんか、それだけで曲の世界がパクッと口を開けて飲み込まれていく感じがしてたまらないんですけど(笑)。ボーカリストmajikoとしてはどう挑んだわけですか?
majiko:もうひとつ上のキーで歌ったら抜けもよくなると思うんですけどどうですかね? と言ったら、車谷さんは「明るい曲にしたくない」っておっしゃって。majikoに合う世界観っていうのはどこか影のあるものだから、救いを感じるけど感じられないような、ちょうどいい具合のキーでっていうことで、今のものになりました。そういうやり取りがあったので、感情を抑えて淡々と歌うようにしました。でもこの歌詞の不思議なのは、どこか自分に言い聞かすような箇所がところどころあって。そういう部分はどうしても感情が乗っちゃいますね。
ーーまたここでも自分で自分を見つめるというか。そのどっちつかずな感じが完成した曲にもすごく表れていると思います。まさにオルタナティブな1曲ですね。
majiko:わたしの好きな感じというのを車谷さんはすごくわかってくださって、だから言葉もよりはっきり聴こえるものを選んだとおっしゃっていましたね。たとえば海外の人が聴いたときに、意味はわからなくても気持ちいいと思える歌詞にしたって。