SKY-HIが明かす、今“自分自身”を歌う理由「5年前だったら、俺のあり方ってNGだった」

SKY-HIが明かす、今“自分自身”を歌う理由

「毎日自分の成長を感じてるから、すごく楽しい」

ーーでも、こんなに忙しいのにいつ曲を作ってたんだろう? って思うんですけど。

SKY-HI:ツアー中にも作ってたので。ホテルに機材を持ち込んで。「How Much??」はツアーで青森に前乗りした日にほとんどできて。青森のライブハウスでリハのときに流すっていう。その時点でほぼ完成型でしたね。

ーーこの曲はプロデューサーとしてDJ WATARAI氏がクレジットされてますが、どういう関わり方だったんですか?

SKY-HI:正直、「How Much??」に関してはほとんど仕事してもらってないんですよね。

ーービートもSKY-HI氏が打ったもの?

SKY-HI:ビートもそうですね。

ーープロデューサーの関わり方は曲によって濃淡があるんですね。

SKY-HI:相当バラつきがありますね。自分の打ち込んだトラックでそのままミックスまでいった曲もあるし。逆に「Walking on Water」のようにMUROさんからビートをもらってから作り始めるというヒップホップっぽい作り方をした曲もあるし。でも、年々ヒップホップ的な作り方というよりは、シンガソングライター然とした作り方に移行してますね。そういう曲のほうがリードになる確立が高い。

ーーシンガソングライター然とした作り方になったからこそ、サウンドの生感もどんどん強くなってるんだろうし。

SKY-HI:そうなんですよ。生感がポイントで。生感の強いサウンドを作るにあたってもう一段階上のレベルにいきたいと思っていて。単純に音楽性としてオーガニックなものに寄せていきたい気持ちもあるし、バンドとの親和性もあるし、トレンドを意識してるところもあるんだけど、一番はやっぱり『OLIVE』のテーマ的に生命力が強いサウンドじゃないと説得力が変わってきちゃうから。このアルバムで必要だったのはトラップミュージックでもベースミュージックでもなくて、生命力を感じさせるビートアプローチだったんですよね。

ーーそのあたりの話もヒップホップを出自に持つアーティストがいかにポップスのダイナミズムを得れるかというチャンレンジ精神を感じさせるなって。

SKY-HI:そこで思うのは、歌詞の面でもきれいなことだけをきれいに歌うのはリアルじゃない時代についてなんですよね。それこそジョン・レノンの「Imagine」やマイケル(・ジャクソン)の「Heal The World」が曲単体で刺さる時代かというと難しいと思う。今の時代はそこに行き着くまでのドラマや「ジョンってこういう人だったんだ」とか『「Heal The World」を作ってるときのマイケルってこんなマインドだったんだ』ということがわかってより伝わると思うんですよね。それはSNS的な時代ともいえると思うし。だから、俺にしか口にできない暴論を歌うことにも大きな意味があって。

ーー攻撃的なセルフボースティングも必要だしね。

SKI-HI:そうそう。俺は俺の生き方を知っているし、ものの見方も自覚的だし、ラッパーだと思ってるし、ポップスターになってやろうと思ってる。それと聖人君子な生き方は噛み合わないんですよ。汚いものもたくさん見たし、人間のえげつなさもよく知ってるから。自分はそんな世界の被害者であると同時に加害者なのかもしれない。そういうことにずっと苛まれてる自分を出さないと嘘になってしまうから。だからこそ、「Walking on Water」のように俺のすべてを内包したうえで強さを押し出す曲は絶対に必要で。俺も自分の音楽に励まされてる身なので(笑)、こいつが言ってることだから聞こうかなって思える曲だから。

ーー献身的にサポートしてくれた女性教師との再会と淡い恋心の終わりがドラマティックに描かれた「十七歳」もこのアルバムに入っているから実話にしか思えないんですけど(笑)。

SKY-HI:そこらへんはオブラートに包んでるんですけど(笑)、実話の要素がないわけじゃない。一番大事だったのは、「Double Down」とか「Stray Cat」とか「Walking on Water」とか俺発の話であるがゆえに、リスナーが自分の歌に捉えづらくなってしまったらイヤだなと思って。リスナー個々人がこのアルバムは自分のアルバムなんだって思うためにもすごく身近で誰もが想像できるストーリーの曲が必要だなと思ったんです。で、「十七歳」のあとに「明日晴れたら」がきたときに曲の優しさがすごく染みるんですよね。そこからまた「アドベンチャー」でアグレッシブなモードに移行していく。そうやって効果的な相互作用のある曲順にしたかったので。

ーーこの1年でアルバムの必要なピースを狙って作れる音楽力もさらに強化しただろうし。

SKY-HI:うん、そうですね。俺がちゃんと自分で意識して曲を作れるようになったのは「スマイルドロップ」からだから、まだ音楽2年生なんですよ。音楽理論をちゃんと学ぼうとも思ったんですけど、ミュージシャンとかに相談するとみんな俺は理論を学ばないほうがいいって言うんですよね。だから、どうしてもわからないことがあったら仲間のミュージシャンに訊けばいいやと思って。俺が理論を学ぶとおもしろいムチャができなくなりそうな気がしていて。でも、毎日自分の成長を感じてるから、すごく楽しいですよ。2016年からギターも弾くようになったから、音像のなかでギターが前に出るようにもなったし。まだまだ成長する余地しかないと思ってます。成長痛が痛くて眠れないですよ(笑)。

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