ボイメン、whiteeeen、大森靖子、SKY-HI……際立つコンセプトが生み出す、音楽の新たな可能性

 「音楽を語るとき、売り方、マーケティングから入るのは間違いである。それはもちろん必要なことだが、入り口はそこではなく、すべての始まりは作品そのものなのだ」という考え方には全面的に賛成ですが、アーティストのコンセプトや成り立ち、“どういうリスナーに向けてどんな音楽を発信するか”ということ自体が表現に直結しているケースもあって、そこからまったく新しいスタイルを持った音楽が生まれることもあります。今回はそんな可能性を感じさせてくれるアーティストの新譜を紹介します。

 まずはBOYS AND MEN。東海エリア出身・在住のメンバーだけで構成された“ボイメン”は、2016年1月にリリースした『BOYMEN NINJA』で初のオリコンチャート1位を記録。続く『Wannna be!』も首位を獲得し、2017年1月には日本武道館公演も開催されるなど、ご当地アイドルという枠を超え、いまや全国区の人気を獲得している。ヒット曲を満載したニューアルバム『威風堂々〜B.M.C.A.〜』にも“地元を愛し、仲間を大事にしながら、全国に向けて発信する”という意図がしっかりとキープされていて、そのコンセプトはまったくブレていない。最大の聴きどころは気志團が楽曲提供した「GO!! 世侍塾 GO!!」。ロックサウンドに三味線、お囃子などを加えたアレンジ、四字熟語を羅列しながら“男たるもの、かくあるべし”というメッセージを放つこの曲は、学ランに象徴される男気カルチャーのDNAを受け継ぐリスナー(特に地方在住のヤンチャな若者)の心を熱く刺激するはずだ。

BOYS AND MEN「GO!! 世侍塾 GO!!(読み:ゴー ヨジジュク ゴー)」

 映画『ストロボ・エッジ』(2015年)の主題歌「愛唄〜since 2007〜」を歌う女性シンガーのオーディションをきっかけに結成されたwhiteeeen。歌唱力だけではなく、無垢で透明感のある声を基準にした審査によって選ばれた10代女子4人は、その後も「あの頃〜ジンジンバオヂュオニー〜」(ドラマ『それでも僕は君が好き』挿入歌)、「キセキ〜未来へ〜」(映画『青空エール』主題歌)などの話題曲を次々とリリース、素朴さ、可愛らしさを兼ね備えたボーカル・ワークの魅力を確実にアピールしてきた。その最初の集大成とも言えるのが、1stフルアルバム『ゼロ恋』。初めての恋に踏み出そうとする女の子の揺れる気持ちを描いたタイトル曲「ゼロ恋」は、このグループの魅力が凝縮された佳曲だ。プロデュースを担当しているGReeeeNと同様、メンバーの顏を見せない戦略(ビジュアルはイラストだけ)も純粋に声の良さを届けるという意図にしっかりと則していると思う。

whiteeeen「ゼロ恋」

 破天荒でセンセーショナルなライブアクトで注目を集めている大森靖子だが、その本質は優れた作家性であり、“個性的な才能を持った若い世代の感性を守りたい”という大きなテーマに貫かれた楽曲は、前作「POSITIVE STRESS」のプロデュースを担当した小室哲哉をはじめとする数多くのクリエイターからも支持されている。そして、均一化を強いる社会の空気を打ち破り、ひとりひとりが個として生きられる世界を目指す彼女の音楽は、今回のシングルに収録された「オリオン座」でひとつの高みに達したと言っていい。<ボリュームあげた人の声だけ届くこの不平な遊びで進もう><死を重ねて生きる世界を壊したい>という願いを込めた歌を、直枝政広(カーネーション)によるサウンドメイクで描き出したこのバラードは、彼女の精神性を象徴する楽曲として認知されることになるだろう。両A面の2曲目に収録された「YABATAN伝説」は、2人組アイドルグループ・生ハムと焼きうどんとのコラボ曲。知性と衝動がぶつかり合う刹那的なサウンド、“やばやばたん”と連呼しながら最高の人生に向かって走る意志がひとつになったアッパーチューンだ。

大森靖子 feat.生ハムと焼うどん「YABATAN伝説」

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