2017年にブレイクするラッパー&シンガーは? 渡辺志保による新譜5選

 4組目は、リル・ウェインらを輩出した土地、ニューオーリンズ出身のラップ・デュオを。その名もスーサイドボーイズ($UICIDEBOY$)です。従兄弟同士の彼ら、メンバーの一人、スーサイド・レオパードことルビー・ダ・チェリーはパンク・バンドのメンバーとしても活動していたそうですが、ここ2年のほどの間にスーサイドボーイズとしての活動をスタートさせ、すでにSoundCloudやBandcamp上には夥しいほどの楽曲がUPされており、ネット上を中心にややカルト的なファンを増やしてきているユニットです。

 彼らのサウンドをパンク・ミーツ・トラップ、と評しているメディアもありますが、ホラコア色を濃く反映したトラックやコーラスの入れ方は、メンフィスの伝説的なラップ・グループであるスリー・6・マフィア周辺のヴァイブスを彷彿とさせます。そんなわけで、そのスリー・6・マフィアからテーム・インパラまでをサンプリング・ソースに使用した最新EP『I No Longer Fear The Razor Guarding My Heel (III)』でもブレることなく、そのズブズブ&ダークな世界観が全面に押し出されており、ファンには堪らない出来。来年以降、今まで以上のペースで活動してくれるのか、今から楽しみなところです。

 さて、最後に紹介するのは2016年3月に発表したデビュー・ミックステープ『A Good Night in the Ghetto』をきっかけに、かなりの活躍っぷりを見せたフィメール・ラッパー、カマイヤの最新MVを。

 同じ西海岸の先輩ラッパー、YGのヒット・シングル『Why You Always Hatin?』にドレイク(!)とともにフィーチャーされ、今年はYGのツアーやフェスに引っ張りだこでした。そんなカマイヤが、ミックステープ収録曲の中から「I’m On」のMVを発表。

カマイヤ「I’m On」

 もともとカマイヤは90年代のフレイバーを大いに作風へと取り入れるタイプのアーティストですが、この曲は90年代のガールズR&Bグループ、シェイズ(Shades)の「Tell Me (I’ll Around)」などでもお馴染の、バーナード・ライト「Who Do You Love」ネタ。MV内でも、90年代にスコッティ・ピッペンが愛用していたこともでも知られるNIKE AIR MORE UPTEMPOのブラックをがっつりロック。さらにはCROSS COLORSやGUESSといったファッション・ブランドも着用し、極め付けは、MVの終盤に登場する平野ノラもびっくりのコードレス型携帯電話。この電話、カマイヤのMVには頻出しており、ファンにとっても定番のアイテムなんです。玉座、そしてバスケットボールのフープにどっしり座りながらラップするカマイヤの姿は恐ろしく新人離れしています。来年はますますビッグなアーティストとのコラボもあり得るかも? 今から非常に楽しみです!

■渡辺 志保
1984年広島市生まれ。おもにヒップホップやR&Bなどにまつわる文筆のほか、歌詞対訳、ラジオMCや司会業も行う。
ブログ「HIPHOPうんちくん」
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blockFM「INSIDE OUT」※毎月第1、3月曜日出演 

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