渡辺志保の新譜キュレーション 第5回
2017年にブレイクするラッパー&シンガーは? 渡辺志保による新譜5選
2016年も残すところあとわずかとなりました。今回は、2017年のブレイクが期待されるアップカミングなアーティストたちの新譜を紹介したいと思います。
まずは、カナダ生まれでドレイクが率いるレーベル、<OVO Sound>と契約し、今年はドレイク&フューチャーのツアーにも前座として帯同していたボーカリスト、ロイ・ウッズを。
彼、まだ若干20歳ではありますが、表現力豊かな歌唱スキルが高く評価されており、2016年7月にデビュー・アルバム『Waking at Dawn』をリリースしたばかり。アンニュイかつ、R.ケリーを彷彿とさせるようなエモーショナルで粘りのあるボーカル・スタイルが特徴的で、最新EP『Nocturnal』でも堪能できるセンシュアルな表情は、今後の活躍も期待させられます。ドレイク周辺のシンガーといえば、あのザ・ウィークエンドやパーティーネクストドアらもおりますが、中でも抜きん出てフレッシュなのがこのロイ・ウッズ。先輩たちのアシストも受けつつ、もうちょっと派手なヒット・シングルや客演楽曲が1曲でもあれば、次のスターになれるかもしれません。
続けて、もう一人注目のシンガーを。アトランタの<Awful Records>というインディ・レーベルをご存知でしょうか。来日経験もあるファーザーというラッパーが設立したレーベルなんですが、流行りのトラッピーなアトランタ・サウンドとは一風変わった路線でじわじわと人気を集めているレーベルです。そこから、今年リリースしたEP『Princess』が高評価を得ている女性シンガー、アブラ(Abra)が新曲「Bounty」をドロップしてくれました。『Princess』では80年代風のシンセPOP調のサウンドも特徴的でしたが、今回は97年あたりにティンバランドがアリーヤと作っていた作品にも通じるヴァイブスが。いずれにせよエクスペリメンタルな質感は、アブラのミステリアスな魅力を増幅させるに十分です。11月には『Princess』からのカットであるMV「Pull Up」も発表されたばかり。
このMV作品、映画『スプリング・ブレイカーズ』を思わせるような内容で、楽曲のプロデュースだけではなくMVの監督もアブラ自身が務めています。『FADER』や『FACT』といったメディアからもバックアップを受けていたり、今年の10月、パリで行われた『Pitchfork Music Festival』にも参加していたりと、来年も何かと話題に事欠かなさそうな注目株です。
そんでもって、3人目は、同じアトランタでも全くベクトルの違うヴァイブスを持つアーティストを紹介いたします。今年の初旬に発表したミックステープ『Wish Me Well 2』からのシングル曲「YFN」や、2チェインズとリル・ウェインが参加したリミックスも話題になったシングル「Key To The Streets」のスマッシュ・ヒットでも知られるYFN・ルッチ。
私も今年の5月にアトランタを訪れたのですが、ストリップ・クラブでも彼の曲がガンガンかかっていたのがとても印象的で、それ以来地味に応援している新鋭ラッパーであります。そんなルッチの新曲「Everyday We Lit」は、こちらもブレイクが期待されているアトランタの若手、PnB・ロックをフィーチャー。キャッチーなフックはクラブのフロアでもウケそうです。ちなみにタイトルになっている「Lit」は、「イケてる、ヤバい」などの意味を持つスラングで、今年はみんなこの「Lit」を使用していましたね。