布袋寅泰が世界に立ち向かい続ける理由ーー35周年ツアーで見せた洋楽ルーツと意地

布袋寅泰の意地とルーツへの敬意

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 【BEAT7】東京公演の特別の趣向としては、アンコールでイタリアの国民的歌手ズッケロが登場し、布袋と3曲共演した。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで演奏することは、かねてより布袋の夢の一つだったが、今年10月、ズッケロの同ホール公演に特別出演する形で実現している。これはズッケロ「Ti Voglio Sposare feat. Tomoyasu Hotei」への収録参加、イタリアでの共演を経ての出来事だった。布袋が東京公演にズッケロを招いたのは、イタリアやイギリスでの共演への返礼だろうし、日本のファンに海外と戦っている今の自分の姿を見せたいという思いもあっただろう。貫禄十分に朗々と歌声を響かせるズッケロの隣で、布袋はとても楽しそうにギターを弾いていた。

 ズッケロの退場後、1回目のアンコールは「ホンキー・トンキー・クレイジー」、「バンビーナ」というビート・ナンバーで盛り上がり、2回目のアンコールは「LONELY★WILD」、「DEAR MY LOVE」で締めくくられた。

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 かつての日本の音楽界には洋楽コンプレックスがあったのに比べ、現在は国内の音楽ばかりを聴いて育ったアーティストが音楽を作り、ガラパゴス化している。そのようなことがよくいわれる。ジャズ、フォーク、ロックなどの洋楽を輸入し、日本流に加工する歴史が続いた結果、多様な曲が生み出されるようになり、音楽に関して国内で自給自足する形になっても不自由を感じなくなったというのだ。Jポップという呼称が一般化した1990年代以降にそんな傾向が次第に広まり、今では当たり前になっている。

 音楽界のこのような移り変わりにおいて、BOØWYというバンドの影響力は、大きかった。歌謡曲的なメロディを巧みに取り込み、日本でロックをポピュラーなものにすることに貢献した。彼らの登場が、Jポップ以後の国内音楽の自給自足状況を準備した部分はある。しかし、その渦中にいた布袋寅泰は、自身が洋楽から影響を受けたことを現在でも忘れていないし、困難はあっても世界に立ち向かっている。35周年のお祭りムードだけでなく、彼の意地を感じたライブだった。

(写真=山本倫子)

■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。

■セットリスト
布袋寅泰 35th ANNIVERSARY
『8 BEATのシルエット』
【BEAT 7】Maximum Emotion Tour ~The Best for the Future~
12月1日(木)NHKホール

1.POISON
2.BEAT EMOTION
3.NO.NEW YORK
4.BE MY BABY
5.SERIOUS?
6.SURRENDER
7.ラストシーン
8.WILD LOVE
9.WANDERERS
10.Stereocaster
11.ESCAPE
12.8 BEATのシルエット
13.C'MON EVERYBODY
14.Dreamin'
15.SCORPIO RISING
16.TEENAGE EMOTION
17.スリル

EN1
18.Partigiano Reggiano [with ZUCCHERO]
19.Ti Voglio Sposare / ティ・ヴォリョ・スポザーレ(君と結婚したい) feat. 布袋寅泰[with ZUCCHERO]
20.Iruben me [with ZUCCHERO]
21.ホンキー・トンキー・クレイジー
22.バンビーナ

EN2
23.LONELY★WILD
24.DEAR MY LOVE

布袋寅泰オフィシャルサイト

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