サカナクション「多分、風。」に感じた“新たな手触り”ーー10月19日発売の注目新譜5選

秦基博『70億のピース / 終わりのない空』(SG)

 デビュー10周年を迎え、11月から12月にかけて初のアリーナツアーを開催する秦基博の21枚目のシングル。「70億のピース」のテーマはずばり“平和”。どこにでもある、半径5メートル何気ない日常の風景から始まり、“形が違っていて、ひとつになれないとしても、寄り添うことはできるはずだ”という感情に至るまでをシンプルな言葉で描いたこのバラードからは、シンガーソングライターとしての彼の成熟ぶりを感じ取ることができる。ストリングなどを入れず、オーソドックスな4リズムによって、楽曲の軸である“歌とメロディ”を真っ直ぐに伝えるサウンドプロダクションも的確だ。映画『聖の青春』の主題歌として制作された「終わりのない空」は鋭利な手触りのロックチューン。死と直面しながら将棋の世界にのめり込んでいく村山聖の生き様から引き出された「痛いほど僕ら 瞬間を生きてる」、玉田豊夢(Dr)、鈴木正人(Ba)、西川進(G)、皆川真人(Key)による緊張感あふれるサウンドとのバランスも素晴らしい。鋭さと温かさという、秦基博の2面性がバランスよく際立つ作品である。

秦 基博「70億のピース」(Short Ver.)

木村カエラ『PUNKY』(AL)

 シングル曲「EGG」(TBS系木曜ドラマ劇場『37.5℃の涙』挿入歌)、「BOX」(Microsoft「Surface Book」タイアップソング)、「恋煩いの豚」(クラシエ「ナイーブ」CMソング)などの話題曲を含んだニューアルバム。サイケデリックとアイリッシュを融合させたミディアム・ロック・チューン「There is love」、奔放に飛び回るピアノを軸にしたアッパーナンバー「僕たちのうた」、オルタナ濃度高めのロックンロール「THE SIX SENSE」、童謡「オバケなんてないさ」のミュージカル風カバー、ノスタルジックかつカラフルなポップナンバー「SHOW TIME」。H ZETT M、岸田繁(くるり)、曾田茂一、A×S×E、蔦谷好位置などが参加した本作は、1曲1曲のキャラクターが明確で、ジャンルやトレンドを気持ちよく飛び越えるポップ万華鏡とも言える作品に仕上がっている。その中心にあるのはタイトル曲「PUNKY」のなかで示されている“人の目を気にせず、仲間といっしょに自分らしく生きるんだ”というメッセージ。「優雅な生活が最高の復讐」というのはスペインの諺だそうだが、自分のセンスに従い、その全てを優れたポップへと導く木村カエラのスタンスにも同じような価値観を感じる。

木村カエラ「向日葵」

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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