SEKAI NO OWARIは社会にどう目を向けた? アイリッシュ・トラッド色濃い「Hey Ho」を聴く

 SaoriとFukaseが作詞した歌詞には、<誰かを助けることは義務じゃないと僕は思うんだ/笑顔を見れる権利なんだ 自分のためなんだ>という一節があります。この部分には、ボランティアをめぐる葛藤への彼らなりの結論が提示されているように感じました。

 問題から目を逸らすのか、逸らさないのか。目を逸らさないなら、現場に飛び込んでいけるのか。そして、現場に飛び込んだとして、それは本当に相手のためなのか。自分自身のエゴを満たすためのものになっていないか。ボランティアどころか、東日本大震災の被災地を訪れるだけのときですら、私は葛藤に似たものを抱えもします。

 しかし、SEKAI NO OWARIは「自分のためなんだ」と言い切ります。今、なぜ動物殺処分ゼロに取り組むのかも明快に言語化している人々だとも感じました。詳細は「ブレーメン」の公式サイトに掲載されている、SEKAI NO OWARIのメンバーと「ピースウィンズ・ジャパン」のスタッフによる座談会で語られています。(https://bremen-project.net/

 そんなことを考えながら次の「Error」を聴くと、愛に目覚めてしまった軍事用ロボットの歌。バンド・サウンドとテクノがミックスされたサウンドです。「Hey Ho」と歌詞の世界観もサウンドの方向性もまるで異なるのです。

 「Dragon Night」に近いのは「Error」なのですが、そうしたSEKAI NO OWARIのイメージを一新させてしまうのが、アイリッシュ・トラッドの響きに包まれた「Hey Ho」。SEKAI NO OWARIを見る目を変えさせてしまうほどの力がある楽曲です。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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