秦 基博、笑顔で迎えた10周年 プロデューサーを務めた『Augusta Camp 2016』レポート
そして、俳優・松山ケンイチ、イベントで“ハタリズム”を結成したバカリズム&マギー、秦が楽曲提供したV6の井ノ原快彦、ジョイマン高木晋哉、スターダスト☆レビュー、横浜DeNAベイスターズ筒香嘉智、KAN、SPITZといった秦とゆかりのある各界の著名人からの10周年を祝うビデオメッセージが放映され、第3部が開始した。日も沈み、すっかり暗くなっているが、秦は「まだまだいけますかー?」と客席に呼びかけるなど、長時間のステージへの疲れを感じさせない。「グッバイ・アイザック」、「花咲きポプラ」、「SEA」と、爽やかでアップテンポな秦の魅力が詰まった楽曲を、バンド編成で続けて披露していく。「ようやくここまで来れました」と、感慨深げに10年間を振り返り、10周年を迎えて初の新曲「70億のピース」を優しく歌いあげた。
「遊園地の中なので」と、「パレードパレード」を歌うと、そのまま「キミ、メグル、ボク」を軽やかに歌唱し、風船が飛び出す演出で会場を盛り上げる。さらに、ライブではすっかり定番となった“スミレちゃんダンサーズ”とともに「スミレ」を披露した。そして、「このオーガスタキャンプをやると決まった時から、絶対にやろうと決めていた曲です」と、インディーズ時代からの楽曲「朝が来る前に」を力強く歌い上げ、秦の代表曲の1つとも言える「鱗(うろこ)」で第3部を締めくくった。
鳴り止まぬ拍手の中、“もう1人の10周年”である長澤とともに、秦がアンコールに応える。長澤がたどたどしくも真っ直ぐな言葉で、10周年を迎えられたことへの感謝を伝えると、デビュー曲「僕らの輝き」を秦とアコースティックでパフォーマンス。全くタイプの異なるシンガーである、秦とのハモリパートを通じて、長澤が2015年ごろからバンド・ALとしての活動を本格化したことで、表現力に深みが増したのを感じさせた。
そして、スキマスイッチ 常田が秦のコスプレをして登場し、その声をさかいがモノマネであてるといった遊びで会場を沸かせると、秦にとって大きな転機となった楽曲「ひまわりの約束」を全員揃って歌唱。そのまま、「これを歌わなきゃ、終われない!」と秦が呼びかけると、このイベントでは恒例の「星のかけらを探しに行こう Again」を歌い上げ、約6時間に及ぶ公演を完遂。同楽曲では例年、年長者である山崎や杏子が観客を盛り上げているが、今年はその役目を長澤と秦が務める様子も見られるなど、10周年を迎えて成長した姿が見られた。
ギター1本で弾き語る自身の原点を見せながらも、バンド編成でダンサーを交えたステージも披露し、新たなフェーズへ踏み出していく秦の姿に、10周年を迎えたこれからへの期待を感じずにはいられない。大橋がMCで「ちゃんと秦の色になってるなぁ」と触れていたように、ポップス、ロック、ヒップホップなど、どんなジャンルの楽曲にも馴染める歌声と歌唱力の高さはもちろん、「ひまわりの約束」で見せた“ポップスの作り手”としての魅力を、今後さらに発揮していくことが予想できる。
他の大型フェスでは目にできないコラボレーションや、同じ事務所であるからこそのMCでの親しげなやりとりを通じて、目当てのアーティストだけでなく、他のアーティストの魅力にも気づくことができるのは『Augusta Camp』ならでは。特に今回の公演は、プロデューサーである秦が、短い時間の中で、1人1人の魅力をきちんと引き出しており、V6への楽曲提供や松本隆との共作も記憶に新しい中、作曲家やアレンジャーとしての活躍も期待させる公演内容となっていた。秦の今後の活動、そして来年からの『Augusta Camp』の公演内容に注目していきたい。
(取材・文=村上夏菜/写真=杉田真)
フォトギャラリー
『Augusta Camp 2016~produced by秦 基博』オフィシャルサイト