結成20年のオリジネイター、山嵐が考えるミクスチャーロックの現在「実は日本の中にあふれてる」

山嵐が考える“ミクスチャーロックの現在地”

「山嵐のリリックはプロレスのエンタテインメント性」(SATOSHI)

──歌詞についてはどうでしょう。この20年の中で、歌いたいことや伝えたいことに、KOJIMAさんやSATOSHIさんの中で変化はありましたか?

KOJIMA:正直、変化している気もするし全然変わらない気もするし。そこは自分ではわからないところなんですよね。その都度完成した新曲を聴いて思いついたことを歌うんですけど、もちろんそのときそのときで気になっていることや心に秘めていることが自然と出てきたりするので、変わってはいるはずなんですけど、よく山嵐を聴いてくれている人たちからは「いい意味で変わってない」と言われるんです。

──確かにそうかもしれませんね。僕も今作を聴いて、今の世の中の流れを反映しつつも、根底にあるものは90年代から地続きで変わってないと思いました。

KOJIMA:誰かを師匠や先生に持ったこともないですし、自分自身でずっと模索しながらやっていることなので、たぶん基本的手法は劇的には変わったりはしてないと思います。

SATOSHI:言葉選びや語呂選びにおいて、自身の中に「山嵐っぽい世界観」があるんだと思います。KOJIMAのリリックを見ていると「ああ、KOJIMAっぽいな」と思うものが結局山嵐っぽいものなので、そういうのがずっと積み重なってるのかなと。言葉じゃうまく説明できないんですけど、アルバムタイトルしかり「山嵐っぽさ」というのがあるんですよね。

KOJIMA:ソロ(2012年発売のソロアルバム『CIRCUIT BREAKER』)をやったときに、優しい世界だとかそういうところを解放したんですよ。それもあって、山嵐では「やると決めたらやるぞ」と思いっきり力で押し切るスタイルでやれてるのもあるんじゃないかな。

SATOSHI:あと、絶対根っこにプロレスはあるよね。

KOJIMA:うん、それで育ってるからね。

SATOSHI:山嵐のリリックって、プロレスならではのエンタテインメント性だと思うんですよ。サウンドは凶暴だから言ってることも凶暴だろうと思うかもしれないけど、怖くないし脅したりもしない(笑)、そういう詞の世界観じゃない気がして。俺はあんまりプロレスは詳しくないですけど、最近よくKOJIMAさんがプロレス愛を語ってるときにそう感じたんです(笑)。根っこにああいうエンタテインメント性があるのかなって。

「日本ってミクスチャーの国なんですミクスチャーって実は日本の中にあふれてる」(KAI_SHiNE)

──山嵐というと、90年代後半以降の日本のロックシーンにおいて、ミクスチャーロックのオリジネーターのひとつと認識されていると思います。皆さんはミクスチャーというものに対してどこまでこだわりを持っているんですか?

KOJIMA:以前はまったく意識してなかったけど、今作ではちょっとだけ意識してるかなって感じですね。

SATOSHI:カルチャーとしてそういうのが根付いていったらいいなというところでいうと、ここ最近は自分たちでもミクスチャーって言うようになりました。自分たちもそこでの連帯感みたいなものがカルチャーとして広がっていったらいいなと思いますし。逆に以前は「ミクスチャーってなんだよ!」って言ってたもんね(笑)。

KAI_SHiNE:嫌がってましたもんね。

SATOSHI:ヘソ曲がりだから。

KOJIMA:それがよくなかったんだよ(笑)。

KAI_SHiNE:ミクスチャーって実は日本の中にあふれてると思うんですよ。CD屋さんに行ったらあれだけ好き放題いろんなジャンルが選べる、それだけ選択肢の多い国って珍しいと思うし。その時点でミクスチャーの国なんですよね。でもミクスチャーというワードにアレルギーがある奴もいて、昔の山嵐はそこで括られるのを嫌がっていた。それが時を経て、今や日本にはこういうカルチャーがあると海外にも認められてきている。だったらこの20年にわたりそのシーンを見てきた人間たちが「俺たちの国にはこれがある!」と叫んで、牽引していくべきじゃないか、今はそういうタイミングなんじゃないかと最近本当に思うんです。

──先ほどKAIさんが「湘南って街はミクスチャー」と言ってましたが、湘南という街の雑多性がミクスチャーという文化そのものだったと。

KAI_SHiNE:まさにそうだと思います。

「KAIが入ったことでまだまだいろんな実験ができると思う」(KOJIMA)

──新作を7月にリリースして、ここからライブやツアーで新曲をガンガンやっていき……飽きてきた頃に次の新作にとりかかると(笑)。

SATOSHI:次はもうちょっと早めに出したいんですよね(笑)。

KAI_SHiNE:次は新作ができるのか、人数が増えるのか(笑)。

SATOSHI:今はすごくビッと来てるタイミングなので。ライブの組み立て方も前はすごいルーズだったんですけど、最近は真面目にやったりしてるしね。まぁ勢いも大事なので、もうちょっと短いスパンで何か出してもいいかなとは思ってます。

KAI_SHiNE:ステージはもちろんですけど、今は創作意欲もバンドとしてすごく強い気がしますし。

KOJIMA: KAIが入ったことによって、まだまだいろんな実験ができると思うんです。今作ではそこまでやりきれてないというか、KAIが山嵐というフォーマットに対してアプローチする作風に近いのかなと。だから次はそこからもっと中に入ってきてもらって、ズバッというのをやりたいですね

──どんな音になるのか想像がつかないですけど、とても面白そうですよね。

KOJIMA:そうですよね。やっぱり新曲を作りたくなるというのが一番大事なことだと思うんで。KAIは器用だしコーラスもできるんで、こっちも表現の幅が広がるんですよ。そこも楽しみですね。

──20周年っていうと大御所と呼ばれても不思議じゃないのに、まだまだ新しいことに対して貪欲なんですね。

SATOSHI:我々は今でもルーキーなんで(笑)。

KAI_SHiNE:でもそうありたいですね。

──凝り固まってない感じがすごく素敵だと思います。

KAI_SHiNE:世の中、衝撃があふれてますからね。さっきここに来るまで話してたんですけど、今の10代の人たちは音楽を聴くツールが変わって、耳の構造がもはや僕らの頃とは違うんじゃないかって。そこから生まれる作品や活動、ライブは刺激だし、そういう若い奴らと新しいチームを作ることで、また新たな初期衝動を手に入れられたら僕たちもより面白くなるんじゃないかなと思ってます。

(取材・文=西廣智一)

■リリース情報
『RED ROCK』
発売中
価格:2,800(+税)
<収録曲>
1.THAT'S
2.80
3.Rookie
4.HIBI
5.Blue Flame
6.GALAXY
7.ストロボブレイク
8.Hot Jump
9.Risk On
10.チェックメイト
11.Rock'n’ Roll Monster

【CD先着購入特典】
応募券付きオリジナルステッカー

応募抽選でスペシャルグッズをプレゼント
A賞:DRESSMALIANO ネックレス 2名
B賞:ALLY&DIA 山嵐ダブルネームTシャツ 30名
※購入特典配布店・応募方法は後日発表

山嵐 OFFICIAL SITE
日本コロムビア 山嵐 OFFICIAL SITE

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