金子厚武のプレイヤー分析
sora tob sakanaはアイドルとバンドの垣根を越えた――ハイスイノナサ、plenty、ダルジャブなど、実力派プレイヤー参加の1stALを分析
一方、「広告の街」にはDALLJUB STEP CLUB(以下、ダルジャブ)やあらかじめ決められた恋人たちへで活躍するGOTOが参加。ダルジャブではジュークやダブステップを生演奏し、その独創的なプレイスタイルが話題を呼んでいるGOTOだが、ここでも自らの持ち曲である「Future Step」に通じるイントロのトリッキーなキメから個性を発揮し、sora tob sakanaのダンサブルな側面に貢献している。さらに、ダルジャブのメンバーでもあり、自身のプロジェクトWOZNIAKでは独自のミニマルミュージックを追求する星雄太が「Summer Plan」に参加し、シンセをフィーチャーしたエレクトロニックな質感の楽曲に、シャープなプレイを提供しているのも見逃せない。
現在YouTubeには「夜空を全部」と「広告の街」のバンドによる演奏動画がアップされていて、ここではアルバムの参加メンバーに加え、キーボードに元ハイスイノナサの鎌野愛、ギターにaquarifaの松川真也が参加し、計6人のプレイヤーによって、楽曲に新たな命が吹き込まれている。バンドマンがアイドルに楽曲を提供すること自体はもはや珍しくないが、ここまでがっぷり四つに楽曲と向き合い、自らのプレイヤビリティを投入している例はあまりないはず。これはアイドルという枠も、バンドという枠も超えて、シンプルに「質の高い音楽を目指す」という姿勢の表れであり、だからこそ、『sora tob sakana』は幅広いリスナーに聴かれるべき作品だと思うのだ。
(文=金子厚武)