マリアンヌ東雲が語る、キノコホテルの特殊性「うちを真似したって人気出ない!」

マリアンヌ東雲が語る、意識の変化とバンドの特殊性

キノコホテル / おねだりストレンジ・ラヴ(short version.)

「心底ウンザリするまでは走り続けてみよう」

ーー支配人らしい考え方だと思います。「おねだりストレンジ・ラヴ」のMVでは支配人のウエディングドレス姿を観ることができますが、あれはどなたのアイデアなんですか?

マリアンヌ東雲:監督ですね。基本的には監督と私でメインとなる題材やおおまかなストーリー、必ず入れたいシーンなどを話し合って決めるんですが、最初の打ち合わせのときに「支配人、ウェディング・ドレスはどうですか?」と言われ。そのときは「は? 何それ?」という感じだったんだけど(笑)、純白のドレスというのは、いままでのマリアンヌ東雲の対極じゃないですか。でも私って意外と柔軟だったりするの。自分のイメージとは真逆のアプローチが痛快だと思ったわけです。「黒から白。真逆だし、いいんじゃない?」っていう。監督とウェディングドレスの試着に行ったときは「新郎新婦じゃないですから!」とお店のお姉さんに訴えかけながら(笑)、きっとおもしろがっていただけると思います。

ーー「籠の中のアラステア」に象徴される、男女の性愛をテーマにした歌もキノコホテルの魅力だと思います。こういうタイプの楽曲も作品を重ねるにつれて深み、凄みを増してますよね。

マリアンヌ東雲:そうですね。初期の頃は絵空事というか、意図的に生々しさを排していたところもあって。自分を剥き出しにしないドライなスタンスで自分とバンドを縛っていた時期もあったんですけど、今回はきわどい歌詞もオブラートに包まず、あえてそのままぶち込んでいます。そういう表現に対する抵抗や照れがなくなってきたというか、人間、長く生きていれば図々しくなるものだから(笑)。ただそれを逆に「支配人らしい」と感じるリスナーの方も結構いらっしゃるみたいで。生々しくさらけ出した結果、皆さんが考える「マリアンヌ東雲像」から逸れるどころか逆に核心をついてきたのかも。特に「籠の中のアラステア」「愛はゲバゲバ」「赤ノ牢獄」あたりはキノコホテルというよりも、自分個人に近い曲でしょうね。自分自身から生まれたという実感がより強い曲です。

ーーソングライターとしても確実に幅を広げているようですね。

マリアンヌ東雲:単なる色恋だけではなくて、苛立ち、もどかしさ。……それは自分自身に対する感情だったり、他者に対するものだったり、形のないものに向けられた気持ちだったり、いろいろなんですけど。意図せずともバラエティに富んだ曲が揃ったし、異なるテーマやストーリーを感じていただける曲が出そろったという手応えは感じています。

ーーアルバムの最後に収録された「月よ常しえに」も素晴らしく美しいナンバーですね。

マリアンヌ東雲:ありがとう。「月の常しえに」については、多重録音のコーラスだったり、パイプオルガンの荘厳な雰囲気だったり、曲のムードとしてやりたいことが先にありました。私はもともとクラシック上がりで、バッハのオルガン曲、教会音楽を聴くのも好きだし、アルバムの中で強い語調、曲調の曲だけを並べるのではなく、全く違う質感を取り入れたかった。メロディと歌詞はレコーディングぎりぎりまで納得行くものが上がらなくてだいぶ自分を追い込みましたけどね。スタジオで即興で歌ったものをエンジニアさんが褒めてくださったので、それを採用しました。歌詞に関しては、前向きな未来を予感させるような感じもありますね。ただ、光が差してきたと思ってリピートすると、1曲目の「反逆の季節」(インスト曲)で再びカオスに逆戻り(笑)。そういう無限ループ感もまた一興といいますか。狙ってそうなった訳ではなくて、まあたまたまなんですけど。いつもそうなんですよね。何も意識してないんだけど、最後は腑に落ちるというか、上手くまとまるので。

ーー「マリアンヌの革命」が完成したことで、前に進めるという実感も得られたんじゃないですか?

マリアンヌ東雲:はい。自分をその気にさせるという、当初の目的は達成できた気がしています。あとはレコード会社のみなさんにがんばっていただいて、来年の創業10周年に向かっていけたらな、と。せっかく気分が上向きになってきたので、心底ウンザリするまでは走り続けてみようという気分ですね。

ーーバンドを続けるモチベーションを維持するのは、やはり並大抵じゃないですね。

マリアンヌ東雲:どんな仕事もそうだと思いますが、ある程度年数を重ねると、どこかで一息つきたくなるタイミングがあると思うんですよ。ただ今回は自分自身の経験を上手く作品に昇華することができたので……。良い作品さえ出来れば、そこに至る過程なんてどうでもいいですからね。

■リリース情報
『マリアンヌの革命』
発売:2016年7月27日
【初回限定盤(CD+DVD)】 ¥3,241(税抜)
《DISC1 CD》
1.反逆の季節
2.おねだりストレンジ・ラヴ
3.回転レストランの悲劇
4.てのひらがえし
5.遠雷
6.籠の中のアラステア
7.愛はゲバゲバ
8.赤ノ牢獄
9.流浪ギャンブル(メカ仕様)
10.月よ常しえに
《DISC2 DVD》
1.おねだりストレンジ・ラヴ (ミュージック・ビデオ)
2.遠雷
2015年11月3日 東京キネマ倶楽部より
3.マリリン・モンロー ノー・リターン
2015年11月3日 東京キネマ倶楽部より
4.すべて売り物
2015年11月3日 東京キネマ倶楽部より
5.キノコホテル唱歌
2015年11月3日 東京キネマ倶楽部より

【通常盤】 ¥2,685(税抜)
《収録曲》
1.反逆の季節
2.おねだりストレンジ・ラヴ
3.回転レストランの悲劇
4.てのひらがえし
5.遠雷
6.籠の中のアラステア
7.愛はゲバゲバ
8.赤ノ牢獄
9.流浪ギャンブル(メカ仕様)
10.月よ常しえに

■ライブ情報
『マリアンヌの革命』発売記念実演会
9月4日(日) タワーレコード渋谷店 B1F CUTUP STUDIO
開場17:30/開演18:00

キノコホテル単独実演会<サロン・ド・キノコ~ゲバゲバ大革命>
9月11日(日) 名古屋 CLUB QUATTRO
9月19日(月・祝) 北海道・札幌sound lab mole
9月25日(日) 宮城・仙台FLYING SON
10月2日(日) 福岡・博多The Voodoo Lounge
10月15日(土) 大阪・梅田Shangri-la
10月22日(土) 東京・鶯谷 東京キネマ倶楽部
10月29日(土) 沖縄・那覇Output ※実演会(対バンあり)
10月30日(日) 沖縄・那覇Output ※実演会(対バンあり)

https://www.kinocohotel.info/

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