ミオヤマザキ ワンマンスレ『Challenge』

ミオヤマザキ、ついに時代が追いついた? 過去最大規模のワンマン“スレ”から分析

 昨今の“文春=不倫告発ブーム”に先んじて、不倫問題を取りあげた楽曲「民法第709条」にてメジャー・デビューした、ミオヤマザキをご存じだろうか? 個人名のように見えるアーティスト・ネームだが、実は紅一点ボーカリスト、mioを中心とした4人組ロックバンドの名前だ。

ミオヤマザキ デビューシングル「民法第709条」リリックビデオ

 そんなミオヤマザキが、連休最終日の5月8日に恵比寿リキッドルームにてワンマンライブをおこなった。当日は、最前列付近を1万円、フロアを3,900円、PA裏の最後列を1,000円として観覧スペースをゾーン分け販売するなど、オーディエンスへのホスピタリティを感じられる試みが印象的だった。

 ミオヤマザキはこれまでも、“CDが売れない時代における新人アーティストのブレイク物語”をスタッフともども模索した結果、バンドのプロモーションのために企画したゲームアプリ『マヂヤミ彼女』が300万ダウンロードを突破、セクシー女優の有村千佳がミュージックビデオに参加した「民法第709条」で大きな注目を集め、2015年秋には新曲20曲を定額制音楽配信サービスを中心に一挙配信するなど、従来の音楽業界とは一線を画した、画期的なマーケティング手法を実施してきたバンドだ。

 ミオヤマザキには、バンドが生み出す世界観を崇拝する“ミオラー”と呼ばれる熱狂的なファンがいる。大半はふだんライブには足を運ばなそうな女の子が多そうに見えた。なぜそう思ったかといえば、開演前のフロアの様子やライブ中に客席を見渡す限り、ライブ慣れしていない子が多かったのだ。なのに何故、こんなにも若いファンを熱狂させるのか? ミオヤマザキには、その活動の“誰にも似たくない、どこにも属さない”という独自スタンスを持つところに、強烈なオリジナリティーがある。ファンはそんな個性の有り様に、憧れを重ねあわせ共感したのかもしれない。

 

 そんなミオヤマザキは、自らのライブのことを“スレ”と表現している。ライブ空間における、アーティストとオーディエンスによる相互コミュニケーションを、ネット用語でいう“スレ(スレッド)”形式に連なり盛りあがっていく拡散イメージを意識しているのかもしれない。過去最高のワンマン動員となった恵比寿リキッドルーム公演は、もちろん超満員状態。ステージ上には、ホールクラスを感じさせるギミッカブルなセットが構築され、4人の意気込みの高さがひしひしと伝わってきた。

 初見のオーディエンスは驚いたかもしれない。ミオヤマザキのライブでは、ステージ上に向けてスポットライト照明があたることは無く、ライブは逆光でメンバーの顔が見えづらい。何故か? それは、ライブを体験すればわかるが、楽曲そのものが強烈なメッセージ性と批評性を兼ね備えており、他者が入り込む余地が一切無いほどに作品力が突き詰められているからだ。ゆえに、ボーカルmioの魅力である強烈な“目力”も封印されている。しかしながら、楽曲の力とステージ・パフォーマンスにおける逆光シルエットから伝わってくる躍動感あるパワフルな存在感によって、オーディエンスの熱量の高まりは止まらない。次々と繰り広げられていく「女に浮気がバレる26の法則」、「民法第709条」、「バンドマン」、「ド・エ・ム」、「童貞ハンター」、「水商売」、「山崎美央」など、研ぎすまされた代表曲たち。それだけで十分に、バンドの存在意義=生きていくうえで感じた気持ち=本質を伝えたいという目的を果たしているように感じた。

ミオヤマザキ「バンドマン」ミュージックビデオ

 そんなミオヤマザキのライブ中、めずらしく長めなMCがあった。ターニング・ポイントとなったであろう、先日放映された池田エライザ主演のフジテレビ系ドラマ『SHIBUYA零丁目』とのタイアップにまつわる話や、記事ではまだ書けないサプライズな衝撃ニュースがあったのだ。そして、ライブ後には最新ツアーとして『ワンマンスレツアー2016 秋冬「Seven Pistols」』のスケジュールが発表された。ファイナルとなる12月10日の東京公演は、なんと赤坂ブリッツでおこなわれるという。ミオヤマザキのポップかつ攻撃性の高い音楽の魅力、工夫を凝らしたマーケティング手法が功を奏したのか、時代が確実に彼女たちに追いついてきた兆しを感じた。引き続き、ミオヤマザキによるポップミュージック・シーンへのネクストチャレンジに注目していきたい。

(文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ/Twitter))

■セットリスト
ミオヤマザキ ワンマンスレ『Challenge』
5月8日(日)東京都 恵比寿LIQUIDROOM

1. DV
2. ひきこもり
3. オンナノホンネ
4. 女に浮気がバレる26の法則
5. バンドマン
6. 季節と雨と涙と
7. シブヤノウタ
8. 生きる
9. ド・エ・ム
10. 民法第709条
11. いつか当たり前の様にあったモノが無くなったら
12. ピストル(カバー)
13. 叫ビ
14. 童貞ハンター
15. 水商売
16. 山崎美央

ミオヤマザキオフィシャルサイト

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