ニューアルバム『ROXY BABY』インタビュー
THE SLUT BANKSの大攻勢! 結成20年の心意気明かす「古いロックの焼き直しにはしたくない」
THE SLUT BANKSが結成20周年となる今年2016年に待望のメジャー復帰を果たした。1996年結成、2000年に解散。そして、2007年の復活以降、精力的に活動しており、まさに大いなる逆襲のはじまりでもある。(参考記事:「“死霊軍団”を名乗る異形のバンド・THE SLUT BANKS 紆余曲折の活動史を紐解く」)TUSK(Vo)に所縁のあるキングレコードからのリリース、ということにおいても感慨深く思っているファンも多いのではないだろうか。ニューアルバム『ROXY BABY』は、そんな死霊軍団の華々しいメジャー返り咲きにふさわしい快作であり、グロテスクでセクシーな怪作だ。20年を迎えても決して守りに入らず、更に攻撃性を研ぎ澄まし、容赦なく襲いかかってくる。
今作は、あえてガツンとイキきらない楽曲構成がゾクゾクする「デコレーションBABY」にみられるようなクラシック・ロックをTHE SLUT BANKS流に昇華させた趣のあるザラついた音像と、これまで以上にバンド感溢れる仕上がりだ。スラット節が炸裂する「I WAIT」、豪快な“がなり”っぷりが気持ちよい「戦場のシンデレラ」をはじめ、ありそうでなかった暴走ナンバー「キラーマン」、艶めかしい歌い出しのTUSKの歌声に思わず、“あの頃”を思い出してしまう「煙の中で」など、これまで以上の振り幅をみせる。DUCK-LEE(Ba / 戸城憲夫)の卓越したメロディセンスとTUSKの独創的な詞世界が重なり、爆音轟音を撒き散らしながら人を喰ったような歌で聴くものを捩じ伏せていく。あらゆるタイプの楽曲でも己のものとして飲み込んで吐き出す、これぞ、THE SLUT BANKSである。
カネタク(Dr)は、1人20代ながらも百戦錬磨の猛者たちを操るように、捲し立てるようにリズムを司っていく。軽やかでキレのあるドラミングは、今やバンドの要であり、躍るようなベースラインとの相性も抜群。そしてやはり注目すべきは、今作が初参加となったACE DRIVER(Gt / 坂下丈朋)だ。戸城とはThe DUST’N’BONEZなどで活動をともにしてきた旧知の間柄ではあるが、これまでとは毛色の違う音楽性を持つTHE SLUT BANKSへの参加は、バンドの新たな側面を引き出す。ノイジーな歪みで掻き鳴らすパンキッシュなプレイは「ROCK BABY」「GAIN AGAIN」といったあらためて録り直された楽曲の凶暴性を増幅させる。「ノイローゼ」のような70’sロックテイストのナンバーは戸城の十八番であるものの、それをあらためてTHE SLUT BANKSにもたらしたのは、ロックンロールのキケンな香りがプンプンする丈朋のギターなくして生まれなかったものだろう。そして、DIE(Key)や高樹リオ(Backing Vo / ロッカ★フランケンシュタイン)といった盟友がTHE SLUT BANKSの狂騒サウンドに華を添えている。
さて、死霊軍団は今何を考え、どこに向かおうとしているのか、メンバーに話を訊いた。(冬将軍)
「やってること自体は変えるつもりもない」(DUCK-LEE)
ーー結成20周年を迎えてのメジャー復帰ですが、心境をお聞かせください。
DUCK-LEE:素直に嬉しいな。正直、こうなるとは思ってなかったんでね、歳も歳だしさ。バンドブームの頃と違って、今は「ロックバンドで……」という時代でもないでしょ。だから、CDこしらえて、こうやって出してもらえるのはありがてぇな。幸せだよね。かといって、やってること自体は変えるつもりもないし、変えようもないし、変えられないんだけど。
TUSK:どちらかといえば、メジャーとか、そういうものはもう完全に疑って掛かってたんですよ。だからどうなるわけではないと思ってたんですけどね。でも、実際レコーディング前からキング(レコード)のスタッフチームが関わってくれて、結果的にすごく良かったなと思ってる。みんな一丸となってやれてるんで、非常に良い状態ですね。
ACE DRIVER:THE SLUT BANKSは20周年だけど、僕は初参加なんで(笑)。
ーー丈朋さんは、これまでも戸城さんと一緒にバンド活動をしてきましたが、あらためてTHE SLUT BANKSへ参加するにあたって、意識したことはありますか?
ACE DRIVER:今までと変わらずやってるだけですね。でも、まさかTHE SLUT BANKSで一緒にやるとは思ってなかったんで、やれてよかったです。20周年に参加できて光栄です。
DUCK-LEE:まぁ、20周年といっても、実働はそんなにやってないんだけど(笑)。「TUSKとの付き合いも20年超えるのかぁ〜」なんて、そっちのほうが思うところはあるなぁ。あっという間だよね。『○○ゾンビ化計画』なんてやってた頃から20年。
ACE DRIVER:90年代の話だもんね。その頃、カネタクは何やってた?
カネタク:僕、1987年生まれですから、まだ小学生です。
ーーカネタクさんは、世代もキャリアも異なるメンバーと、20周年を迎えるバンドでともに活動していることをどう感じていますか?
カネタク:みなさん、90年代を代表するロックスターですからね。だけど、正直、結成20年の重みというのは全く感じてないんです(笑)。はじめてTHE SLUT BANKSを聴いたとき、 “今のバンドの音”として聴けたんですよ。だから、こうして一緒にやれてます。年齢の差もとくに感じてないですね。そういうことを感じさせない人柄によるところが大きいと思うんですけど。同世代のパンキッシュなヤツらと一緒にバンドやってる感覚です。戸城さんも、もちろん歳相応な部分もあるけど、最近のバンドもいろいろ聴くし、若いなとも思います。両方の感覚が共存してるんです。それをちゃんと吸収して、バランス取りつつ、アウトプットしているから、すごいなと思うし。
ACE DRIVER:僕からカネタクと戸城さんを見ていても、親子くらいの年齢差があるなんて感じない。すごく良いことだと思いますね。
DUCK-LEE:でも、音楽やバンドに関してはそうだけど、考え方そのものは「コイツ、“ゆとり”だなぁ〜」と思うけどね。機材車のレンタカーをぶつけても平然と「修理費は授業料ッスよ」って言っちゃう責任感のなさ(笑)。
(一同爆笑)