トータス、アニコレ、ダイヴ……USインディー各世代の最新作にみるシーンの充実

 ザカリーに負けないハンサムガイ、セス・ボガートは、ハックス・アンド・ヒズ・パンクスのリーダーであり、ブティックのオーナーであり、ガールズの「Lust for Life」のビデオではボーイフレンドと裸でいちゃついたりと何かと忙しい男。LGBTコミュニティのアイコンとしても注目を集めるなかで、ファースト・ソロ・アルバム『Seth Bogart』を発表した。ライオット・ガールの勇者、キャスリーン・ハンナ(ビキニ・キル)や、LAのティーンエイジ・ガレージ・バンド、チェリー・グレザーのクレモンティ・クリーヴィーなど、元気なインディー女子をゲストに迎えて、セスのキッチュなポップ・センスが炸裂。ハックス・アンド・ヒズ・パンクスではオールディーズ・スタイルのロックンロールではしゃいでいたが、今回は80’sエレポップをセス流に美味しく料理。キラキラしたシンセの音色にファンキーなリズムが飛び跳ねて、ジョン・ウォーターズの映画を思わせるプリティなバッドテイストが全開だ。レーベルは日本進出で話題になったカセット専門のレーベル、バーガー・レコーズだが、本作はCDでもリリースされている。

 そして最後は、USインディーの守り神というか、永遠のマスコット、ハーフ・ジャパニーズに登場してもらおう。70年代なかばにジャドとデヴィッドのフェア兄弟を中心に結成。3つコードを知っていればロックは演奏できると言われているなか、2つくらいしかコードしか知らないジャドの自由奔放なギター・プレイが響き渡るハーフ・ジャパニーズのサウンドは、プリミティヴにしてオルタナティヴ。これまでカート・コバーンをはじめ様々なアーティストに影響を与えてきた。2014年に13年振りの新作『Overjoyed』を発表してファンを喜ばせてくれたが、意外と早いスペースで最新作『Perfect』が届けられた。初期に比べるとロックのフォーマットに近づいて、曲調もバラエティ豊かになって聴きやすくなっているものの、ジャドのギターと甲高い歌声は相変わらず破壊力抜群。混沌としていながらも突き抜けたポップ・センスにも磨きがかかっていて、パンキッシュだけどパンクのマッチョさはカケラも感じさせない無垢なエネルギーが渦巻いている。40年の活動歴を持ちながらこの瑞々しさ、というか、無邪気さに驚かされるが、彼らがロックンロールの殿堂入りする日もそう遠くないのでは……と密かに願っているのは僕だけではないはず。こういうバンドが現役で頑張っているところにも、USインディーの懐深さを感じずにはいられないのだ。

■村尾泰郎
ロック/映画ライター。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CULÉL』『OCEANS』などで音楽や映画について執筆中。『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『はじまりのうた』『アメリカン・ハッスル』など映画パンフレットにも寄稿。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。

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