『Many Shapes』インタビュー
Taiko Super Kicksが語る“平熱”の表現「一時的に盛り上がるより、じわっと広がってほしい」
伊藤「居場所を模索しているようなアルバムですね」
ーーそうして本格的にライブ活動を始めて1年たって、ミニ・アルバム『霊感』を作ったわけですね。
伊藤:少しずつ録り溜めていった感じですね。ミニ・アルバムを作ろうという意思もなく、溜まっていった楽曲をCDにまとめた、という感じです。2014年8月の段階でのベスト・アルバム、みたいな。
ーー『霊感』は激しい曲もありますが、静かな曲も多い。ライブをやるうちに、だんだん静かになっていったわけですか。
小林:徐々にですね。
伊藤:特に『霊感』を出したあとは、うるさすぎるのはやめようって考えるようになりました。
ーーなぜやめようと思ったんですか?
伊藤:ワンパターンなところがあるって言われてたんです。曲は違うんだけど、歌があって、リフがあって、樺山君のソロに行く、っていう、そのパターンしかなかったから。少し一本調子で、『霊感』は5曲だから成立してるけど、あれがずっと続くと少し疲れる、もっと幅が広がったらいいんじゃないかと。なのでちょっと抑えめでいこうと。
ーーなるほど。
伊藤:あと、『霊感』はまだ学生時代の、内にこもった、外に開けていないモードを反映しているんですけど、『Many Shapes』では社会人になって開けてきてから作った曲が多くなって、内にこもったようなところは少なくなくなってきたかなと思います。
ーーそれが『Many Shapes』と『霊感』の大きな違い。
伊藤:そうです。ファーストは自分の世界、自分の殻にこもったような感じが強いと自分では思うし、楽曲のパターンも似ていた。なので今作ではもっと開けたもの、もっとバリエーションに富んだものを心がけました。
ーー静かで平熱な感じの曲が続くのは、そう意図したわけですか。
伊藤:というより、いろいろな曲に挑戦しようということですね。
ーー伊藤さんのボーカルがすごく印象的で個性的だし、アレンジや演奏も歌の良さを生かそうという意思が感じられます。伊藤さんのボーカルが淡々としてるので、全体の印象も淡々としたものになるのではないかと。
伊藤:ああ、それはそうかもしれないですね。
ーーエンジニアはトクマルシューゴや森は生きている、D.A.N.等を手がけた葛西敏彦さんが手がけられてます。なにか学んだことはありましたか。
伊藤:僕が勉強になったのは…自分がやってることに自分印のハンコを押していかなとダメだっていうことですね。僕ってけっこう自信がないところがあって。やりながら迷ったりする。
ーー最終的なジャッジは伊藤さんが下すんじゃないんですか。
伊藤:そうだけど、こんな感じだけどどうかなってみんなに相談することも多いんです。そこでみんなで話しあうのも大事だけど、これで行きますって自分で決めるのも大事だよって言われて。バンド・レベルの話じゃなくて、人間性の話ですけど(笑)。
(スタッフ)それ以降のライブでも飛躍的にレベルアップしましたね。
ーー自信がついたってことですね。
伊藤:自信がついたというより、自信もってやるしかないってことですね。今までは「自信ないけどやってます」程度でも良かったけど。
大堀:(苦笑)そうだね。
伊藤:照れ隠しじゃないけど、そういう甘ちゃんな意識があって。それでも、いい感じで曲ができたらいいかなって思ってたけど、人前でやるにはそれじゃ全然ダメだなって。そこはレコーディングを通じて意識が変わったかなと思います。
ーープロ意識ですね。
伊藤:…と言えるかもしれないですね。
ーーなるほど。今作の歌詞、曲も含めて一番表したいことってなんですか。
伊藤:難しい質問ですね…(笑)。『Many Shapes』ってタイトルが全体のテーマでもあるんですけど、いつも考えているのは、大きいものを拾っていったときにこぼれていくようなもの。そういう様々な存在…。
小林:…の居場所を作るっていう。
伊藤:そう。居場所を模索しているようなアルバムですね。でも正解を出してるわけじゃない。こういう居場所があるんですよって提示するものでもないし、そういう居場所にいる人を救ってあげるから、というものでもない。ずっと模索しているような。それがテーマですね。
ーー自分自身が、大きなものからこぼれ落ちて居場所を探しているという自覚が?
伊藤:どうでしょう。そうかもしれないですね。どういう居場所か難しいですけど、自分の人間性はよくあらわれてるアルバムだと思います。