“LOST IN TIMEの集大成”を見たーー兵庫慎司が全国ツアーファイナルをレポート
ずっとバンドをやり続けて、ライブと作品を重ねてきて、その分歳をとって、いろんな経験をして、いい意味でも悪い意味でもいろんなことを知ったし、いろんなことがわかった。これは言ってもしょうがないとか。これはあきらめないとしかたないとか。届かなくてもやむを得ないとか。それらの残念で残酷でがっかりな現実を、頭でも身体でも思い知ってきて、それでもどうしても伝えたいことを、それでも希望を感じられる方向に向けて、それでもこれならなんとか届くんじゃないかと自分で判断できた形で、言葉とメロディと演奏にした──『DOORS』はそういうアルバムだと僕は思っているのだが、その『DOORS』の“それでもどうしても伝えたい”や、“それでも希望を感じられる方向”や、“それでもこれならなんとか届くんじゃないか”に、過去の曲たちもつられてひっぱり上げられている。そんな印象を受けた。
後半のMCで海北、しゃべっていて、しばし黙ったあと、「言いたいことがあふれると、言葉って出てこないものですね。歌にこめます。残りもせいいっぱい歌います」と言った。
うん。それでいいよ。一切しゃべんなくたっていいよ。今のLOST IN TIMEがやっている曲、言葉で補足しなきゃいけないようなとこゼロだから。聴けば伝わるから。と思った。そして、だからこそ、もっともっと多くの人に聴いてほしいし、観てほしいと思った。基本的にライブハウス脳・インディー脳のまま、マイペースに、自分たちの好きなようにやってきたバンドであって、その上で今でもリキッドでワンマンを切れるくらいのファンが集まってくれる、というのは恵まれているとも言えるが、音楽そのもの、歌そのものの力は、このキャパで、この人数で留まるものではないと、この日改めて感じたので。
余談。
前記のセットリストを書く時に、どのアルバムに入っている曲かも記載したくなって、公式サイトのアルバム・ディスコグラフィーを見ながら1曲ずつ確認していったんだけど、「約束」がどのアルバムの曲だかわからなくて、「あれ? なんでわからん俺? 初期の曲だって覚えてるし、フルコーラス歌えるくらい好きな曲なのに」と探した末に、1枚目のアルバムのあとに出た最初のシングル『群青』の1曲目なんだけど、『群青』って、シングルであるにもかかわらず、アルバムみたいに収録曲とは別のタイトルが付けられた作品であったことをつきとめました。完全に忘れてた、当時よくインタビューとかしていたのに。当時22歳の海北はなんでそんなことをしたのか、取材で訊いた気もするが、それも忘れた。
(文=兵庫慎司/写真=SARU(SARUYA AYUMI))
■リリース情報
『DOORS』
発売:2015年6月3日
価格:¥2,400(税抜)
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT
1. 366
2. Synthese
3. 燈る街
4. No caster
5. 小さな隣人
6. ligarse
7. 予知夢
8. 22世紀
9. 呼ぶ
10. hurry[-instrumental-]
11. home
12. 明け星
■ライブ情報
「2016年新春ONE-MAN Live Tour(仮)」
1月23日(土)新代田FEVER
1月30日(土)大阪十三ファンダンゴ
1月31日(日)名古屋ロックンロール
チケット一般発売 11月21日(土)