新アルバム『オーディション』インタビュー

ドレスコーズ志磨遼平が白いプラカードを持つ理由 「『なにも言わない』という意見を言いたくなった」

「情報量が多すぎるから、何かを捨てて“選択”する必要がある」

――アルバムの7曲目の「もあ」という曲は、小沢健二の楽曲へのオマージュ的な言及がありますね。

志磨:自分は20年前、いわゆる“渋谷系”のムーブメントがまだ残っていた中学生の13~14歳のころに聴いた音楽に、もっとも強い影響を受けているんですけど、最近になってその時代が再評価されてきたという感じがするんですよね。それで、夏頃に小沢健二さんの記憶が蘇ってきて、“2015年の夏の空気”を、丸ごとパッケージしようと考えたら、自然とこういう曲になりました。

――小沢健二の曲もそうでしたが、この「もあ」も途中からカオスな雰囲気になっていて、それはアルバム全体の印象でもありました。

志磨:僕の中では理路整然としているんですけど、他人から見たらカオスであって、それこそが個人的であるということかもしれない。たとえば「もあ」の歌詞のなかで<愛し愛され>の対比として、<恋に恋いこがれて>というフレーズが出てくるのですが、これも思春期の頃に聴いたGLAYの「グロリアス」から来ていて(笑)。だから、自分の中ではちゃんと説明ができるんですけど、生まれた場所が違ったり、聴いているものが違ったり、年齢が違っていたりすると、こうした並びはすごくカオティックなものに映るんだと思います。

――「もあ」は、アイゴンこと會田茂一さんのパワフルなサウンドも印象的です。彼はほかの曲でも荒々しいギター演奏を聴かせていますが、こうしたロック的なアプローチについては、どんな狙いがありました?

志磨:僕はたぶん、ギターというものに対して深い理解がないんですよ。今までは曲をつくる際には「メロディー」と「歌詞」が二本柱だったから、アレンジに関しては疎い部分があります。ギターも、僕にとっては伴奏の楽器でしかない。だからこそ、“ロックにおけるギターとは一体なんなのか”ということをきちんと理解したいという気持ちがありました。それで、今回は誰か他の人の演奏から何かを発見しようと思って、會田茂一さんにお願いしているという感じですね。

ドレスコーズ - 贅沢とユーモア(STUDIO LIVE VIDEO)

 

――11曲目の「贅沢とユーモア」では菅楽器が大きくフィーチャーされています。

志磨:自分にとってカッコいいと思う音楽を、ギターを中心とした小編成のバンドで表現するのは難しいんですよね。そのなかで、「贅沢とユーモア」や、その前の10曲目「みなさん、さようなら」などは、しっくりくるアレンジでした。「なるほど、ギターはこうすればいいんだ」ということが分かったし、アイゴンさんのアレンジもすごくよかった。それとマーヤさんは、僕にとっての“ギター・アイドル”で、彼はライブなどではギターはあまり弾かないけれど、それでも僕が好きなギタリストの一人です。

――ドラムのピエール中野さんとの相性も良かったですね。

志磨:彼はどんな音楽でも、フラットに自分のアプローチでできる方だから、もしかしたら「特別こういう音楽がやりたい」という気持ちはないのかもしれない。そういうところが自分と似ていると思います。「絶対にこうじゃなきゃいけない」というこだわりがないから、彼との打ち合わせはとても早く済むんですよ。レコーディングもすごく早く終わりました。

――ベースの有島コレスケさんは『1』のレコーディングにも参加していましたね。

志磨:彼もピエール中野さんと同じように、どんな音楽にも対応してくれました。お客さんや、ほかのミュージシャンからの高い要望にも応えてくれるミュージシャンですね。“信頼の有島ブランド”といっても良いくらいで、僕も彼には甘えまくっています(笑)。僕の要求に対して、いつもすごく高いレベルのパフォーマンスを返してくれるんですよ。

――ベースとドラムは、志磨さんの音楽の信頼の軸になっているという感じですね。先ほど、今作では小沢健二ほか、影響を受けた音楽のエッセンスを取り入れているとの話が出ましたが、過去のアーカイブの中から、どの音楽の要素を取り入れていくかというのは、ミュージシャンにとって重要な“選択”ですよね。

志磨:アーカイブの量は基本的に無限に増えていくものだから、僕らが知識として取り込むには限度があるわけだけれど、「もっと知りたい」という意欲はありすぎて、ときどき眩暈すら感じることがあります。たとえば代官山のTSUTAYAに行くと、「世の中にはこんなにたくさんの本があるのか」と考えただけで疲れてしまう。僕がまだ故郷の和歌山にいたときなどは、近所の古本センターでは書籍の入れ替えなどもなくて、新しい本が欲しければ大阪までわざわざ足を運ぶ必要があった。だから今の状況は幸福だともいえるのだけれど、情報量が多すぎるから、何かを捨てて“選択”する必要があるんです。音楽にも同じことが言えて、なにかの曲を選ぶということは、同時にほかの曲を選べない、ということでもあると思うんですよね。バンドに関しても、同じメンバーで続けるとなると、絶対にできないことも出てくる。その選択という行為自体に、いま僕はもっとも興味を持っているんです。だから以前は、新しい音楽を聴いたらすぐにそれを自分のものにしたいという欲求が強かったけれど、最近は自分のこれまでの選択の中から、自然な感覚で出来上がる音楽を優先するようになりました。

――なるほど。今作は『1』のシリアスなトーンとは違って、随所にユーモラスな要素があるのですが、今回の特典映像「志摩遼平のオーディション THE MOVIE」も、かなりぶっ飛んでいて楽しい映像作品でした。深夜番組ノリのバラエティという。

志磨:レコード会社もバラエティが好きなんですよね。『ゴットタン』などを手がけたオークラさんがプロデュースしてくれて、彼は僕の好きだったバラエティ番組も担当していたから、今回はお任せしました。アルバム自体もそうなんですが、ユーモアの気持ちを忘れずに挑んでいます。やっぱり、音楽にとって大事なのはユーモアだから。

(取材=神谷弘一/構成=松田広宣)

■リリース情報
ドレスコーズ『オーディション』
発売:10月21日(水)
価格:初回限定版(CD+DVD)¥3,500+税
   通常版(CD)¥3,000+税
<収録曲>
1.嵐の季節(はじめに)
2.jiji
3.スローガン
4.愛さなくなるまでは愛してる(発売は水曜日)
5.メロウゴールド
6.We Hate The Sun
7.もあ
8.しんせい
9.オーディション
10.みなさん、さようなら
11.贅沢とユーモア
12.おわりに
<DVD収録内容>
「スローガン」AUDITION VIDEO
「贅沢とユーモア」STUDIO LIVE VIDEO
「志磨遼平のオーディション THE MOVIE」

<参加プレイヤー>
G:沙田瑞紀(ねごと)、マーヤ(KING BROTHERS)、オカモトコウキ(OKAMOTO'S)、牛尾健太(G / おとぎ話)、會田茂一、近藤研二
B:有島コレスケ(0.8秒と衝撃。、told、スズメーズ、BOYLY Entertainment)
Dr:ピエール中野(凛として時雨)
Key:中村圭作、長谷川智樹
<編曲参加者>
會田茂一、近藤研二

<特典内容>
・TOWER RECORDS特典
志磨、はじめての自宅録音シリーズ CD TOWER RECORDS盤
※Band Ver. + 他 Ver. 1曲収録

・HMV特典
志磨、“オーディション”を語るオーディオコメンタリーCD HMV盤
※アルバム全曲収録

・TSUTAYA RECORDS(※一部店舗を除く)特典
志磨、はじめての自宅録音シリーズ CD TSUTAYA盤
※ Acoustic Ver. 2曲収録

※特典の有無等に関してのお問い合わせは各店舗へ。
※特典は各店舗ともなくなり次第終了。

ドレスコーズ『オーディション』アナログ盤(重量盤2枚組)
発売:12月23日
価格:¥3,704+税
<収録曲>
Disc1 [SideA]
1.嵐の季節(はじめに)
2.jiji
3.スローガン

Disc1 [SideB]
4.愛さなくなるまでは愛してる(発売は水曜日)
5.メロウゴールド
6.We Hate The Sun

Disc2 [SideA]
7.もあ
8.しんせい
9.オーディション

Disc2 [SideB]
10.みなさん、さようなら
11.贅沢とユーモア
12.おわりに

■関連リンク
ドレスコーズ Official Site
http://dresscodes.jp/
YouTube『オーディション』プレイリスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLvKrlCY-aSj8YOi8ZGDZ27Ql5oGTznOOM

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