山崎まさよしが語る、音楽と共に歩んだ20年「残っていく曲にするためには、“命の吹き込み”が必要」

「世に送り出した曲が死んでしまうのは可哀想」

――一方の『UNDER THE ROSE』にシングルのカップリング曲、アルバム未収録を中心にレアな楽曲が収められています。

山崎:「仕事やってたんですよ」ということですね(笑)。オリジナルアルバムが出ないから、「仕事してないんか?」って思われがちなんで。

――「うたたね」(ボンカレーオリジナルソング)、「心の手紙」(映画『春を背負って』主題歌)などタイアップソングも多いですね。

山崎:ほとんどはクライアント、企業からの発注なんですよね。台本を読ませてもらったり、それに関する映像も見ますし、自分のレコーディングの映像が必要なのであれば、それも協力させてもらいますし。時代のニーズには応えられないけど、企業のニーズには応えられる……わかんないですけど(笑)。ただ、そういう作り方は嫌いじゃないです。「サビと映像が合わないから、メロディを足してほしい」ということにも対応するし、「歌い出すタイミングを遅らせたい」と言われたら「じゃあ、イントロをもうちょっと伸ばします」とか。それは出来ない作業ではないというか、アレンジしてるときにもよくあることなので。

――クライアント側との共同作業にも、やりがいがあると。

山崎:そうですね。ただ、オリジナル曲のときもスタッフに聞くんですよ。「どんな歌を歌ってほしい?」って。自分から「これを歌いたい」ということはあまりないかもしれないですね。「ガットギターをスパニッシュみたいに弾きたい」とか「ハチロク(8分の6拍子)のワルツでギターをいっぱい入れたい」みたいなことはあるんですけど、基本的には「求められている」という出発点があって、それに対して俺がどう応えられるか?という……ことにしてます(笑)。まあ、「いい曲書いてください」って言われたら、ドツキますけど。「ヒット曲お願いします」も腹立ちますね。「それはスキマスイッチに頼んでください」って(笑)。

――(笑)。他者から求められることで山崎さんの創作がスタートするのは、すごく興味深いです。音に対するこだわりが強い反面、共同作業はまったく厭わないという。

山崎:「もっとこうしてほしい」というやりとりのなかでブラッシュアップすることは、すごくいいと思うんですよね。歌詞に関しても「これでいきたいと思います」とは言わないんです。「こんなの出来たけど、どう? 何か意見ある?」っていう。そこで「ここがわかりにくい」という意見があれば、書き直しますし。特に作詞・作曲はすごく大事だし、ずっと残っていく曲にするためには、アレンジ以上の“命の吹き込み”が必要だと思うんですよね。そのためにはひとりの力だけでは…。

――山崎さんを中心に、スタッフ、ミュージシャンの力を合わせながら、楽曲に生命力を与えることがもっとも重要だと。

山崎:うん、それは強く思ってますね。そういう曲が時代を超えていくんだろうし。リリースした年だけで終わってしまうと、それ以降、印税をもらえなくなるじゃないですか……何を言うてるんや、俺は(笑)。

――ははははは(笑)。

山崎:でも、せっかく作って世に送り出した曲が死んでしまうのは可哀想ですから。こちらであえて持ち上げたり、引っ張ったりしなくても、曲単体で歩いていけるというか…。モノ作りで大事なことはそこじゃないかなって。

――でも、すごく厳しいことですよね。その曲に本当に生命力があるかどうかは、ある程度の時間が経たないとわからないので。

山崎:だから、こうやって(ベストアルバムとして)曲を並べてもらえるのはありがたいですよね。曲単体では埋もれてしまったり、弾かれることもあるかもしれないけど…。

――ベストアルバムとして再びリリースすると、「この曲には本当に力があったんだな」と実感できると。

山崎:1曲1曲を聴くと、そこまでパンチ力みたいなものはないかもしれないですからね。僕ね、ベストの監修にはまったく口を出してないんですよ。ただ、ラジオのリスナーから「あの曲が入ってないですよ」っていうメールが来たので、制作のスタッフに「あれ、モレてるで」って言いましたけど(笑)。ふだんからスタッフワークだったり、文字のチェックとか映像、ビジュアルに関してはとやかく文句は言わないんです。音楽のことは「こうやらせてほしい」というのがあるので、餅は餅屋というか、あとは任せたいなっていう。そのほうが軋轢も無理もないですからね。

――20周年を迎え、ベストアルバムがリリースされると、一区切りという感覚もありますか?

山崎:ええ、ありますね。ただ、やることの手順はこれからもあまり変わらないと思います。これで20年やってきましたからね。

――山崎さんが中心となる今年のAugusta Campも楽しみです。

山崎:この会社(オフィス・オーガスタ)がイベントをはじめて、17回目になるらしいんですよ。ひとつの会社内でこれだけ続けられるのは、ただただ凄いなって思いますね。今年は出演時間がいつもより長いかもしれないし、体だけは気を付けたいなって。そのぶん、来年は涼しい部屋から中継してもらいます(笑)。

(取材・文=森朋之)

■リリース情報
山崎まさよし『ROSE PERIOD ~the BEST 2005-2015~』
発売:8月19日(水)
価格:初回生産限定盤(CD+DVD)¥4,000(税込)
   通常盤(CD)      ¥3,000(税込)
<収録曲>
1.僕らは静かに消えていく
2.ビー玉望遠鏡
3.メヌエット
4.アンジェラ
5.真夜中のBoon Boon
6.Heart of Winter
7.春も嵐も
8.HOBO Walking
9.花火
10.太陽の約束
11.アフロディーテ
12.星空ギター
13.アルタイルの涙
14.21世紀マン
15.One more time, One more chance
<DVD収録曲>
1.僕らは静かに消えていく(Short Film)
2.僕らは静かに消えていく
3.ビー玉望遠鏡(スコープ)
4.メヌエット
5.アンジェラ
6.真夜中のBoon Boon
7.深海魚
8.Heart of Winter
9.春も嵐も
10.HOBO Walking
11.花火
12.太陽の約束
13.アフロディーテ
14.星空ギター
15.アルタイルの涙
16.心の手紙
17.Flowers~花屋篇~
「BLUE PERIOD」以降リリースされたシングル曲を網羅し、さらに20周年を迎えた山崎の思いを込めて書き下ろした新曲「21世紀マン」や、デビュー前に録音されたレア音源「One more time, One more chance」の未発表ファーストテイクを含む全15曲収録。初回盤の特典DVDは、本作のCD収録楽曲、配信シングル曲のMUSIC VIDEOに加えて、山崎まさよし主演のショートムービー「僕らは静かに消えていく」を含む100分を超える豪華な特典。

山崎まさよし『UNDER THE ROSE ~B-sides & Rarities 〜2005-2015~』
発売:8月19日(水)
価格:¥3,000(税込)
<収録曲>
1.long yesterday
2.幸せのBefore&After
3.深海魚
4.ホームタウン
5.あなたしか知らない朝
6.君が好き
7.浜辺の歌
8.君が好き(夏ver.)
9.ひかる・かいがら
10.太陽の約束 -Acoustic Ver-
11.青いタペストリー
12.うたたね
13.おなかとせなかがぺっタンゴ
14.黄昏のビギン
15.心の手紙
16.銀幕にこんがらがって
17.Non ignition
18.「ビートルズメドレー(She’s A Woman~All My Loving~Things We Said Today~If I Needed Someone~In My Life)」 (1993年録音 未発表音源/DEMO TRACKSに収録) 
シングルのカップリング曲や、アルバム未収録、大竹しのぶとのデュエット曲「黄昏のビギン」、さらにはデビュー前に録音されたザ・ビートルズメドレーも特別に収録。

■ライブ情報
『YAMAZAKI MASAYOSHI in Augusta Camp 2015~20th Anniversary~』
日時:9月26日(土)
場所:横浜 赤レンガパーク 野外特設ステージ
価格:全席指定¥7,560(税込)
出演:山崎まさよし、杏子、COIL、あらきゆうこ、元ちとせ、スキマスイッチ、長澤知之、秦 基博、さかいゆう、浜端ヨウヘイ、竹原ピストル
OPEN/START:12:00/14:00
チケット一般発売日:7月25日(土)

山崎まさよし『21世紀マン(20th anniversary ver.)』
発売:9月23日(水)
価格:¥2,000(税込)
<収録曲>
1.21世紀マン(20th anniversary ver.)
2.タイトル未定 
3.根無し草ラプソディー 2015
<DVD収録内容>
1.「21世紀マン(20th anniversary ver.)」MV
2.オーガスタキャンプ2015アーティストミーティングドキュメント
3.「根無し草ラプソディー 2015」ドキュメントMV

■関連リンク
山崎まさよし 公式サイト
山崎まさよし Facebook
山崎まさよし Twitter
Augusta Camp 公式サイト
Augusta Camp Facebook
Augusta Camp Twitter

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