猪又孝の『ラブソング妄想分析』 第5回:Charima.com&印象派
Charisma.comと印象派、東西現役OLユニットの新作に潜む“がさつ女子”と“メイク事情”
一方、がさつ女子=ノーメイク女子というのもネットでよく見る意見。とはいえ、「シティリビングWeb」の調査によると、OLさんが夏場に会社で化粧直しする回数は、「1日1回、もしくは2回」が合計で約7割もいるから、大抵の女性は、メイクや見た目に気を遣っているのだろう。
西のOLユニット、印象派が7月1日に先行配信したシングル「綺麗」は、そんな女性のメイク事情が着想のひとつにあって生まれたのではないかと想像できる曲。女性にとって美しさとは何なのか。そんな美の定義をちょっとナナメな切り口で問いかけているナンバーだ。
この曲の対象は《かなりヤバめのオーラ飛ばして》《キュートな笑みで》男性と視線を交わす女性。《短めのミニをゆらして》《理想的なボンバーゆらして》とあるから、スタイルも相当いい女性なのだろう。「美人は性格が悪くても許される」問題は、昔から職場や友達関係で異論反論いろいろ言われているが、彼女たちも《正しいのはなんだ まちがいとはなんだ やさしいとはなんだ こぼれ落ちるのはなんだ》とギモンを提起。自分も《綺麗になりたいわ》《非礼無礼に咲きたいわ》と、美しくなってワガママを言いたい願望を歌いつつ、《赤いクランベリーを塗って》《機械のようになりたくない A-HA HA》と、最近目につく美の基準の画一化を冷ややかに笑い飛ばす。
さらに2番に出てくる《汚いものはやだ》《理想の自分まだ》《全ての過去と姿を捨てて》という歌詞からは、美容整形もテーマに含まれている気が。《真贋 倫理観も闇のなか》と、どこか拭いきれない不安や違和感を覚えつつ、《誹謗中傷ハナウタに変えて》と美を追求し謳歌する彼女たちの実態を歌っている。
この「綺麗」は、アルバム『AQ』の中で最もグルーヴーで華やか、なおかつ抜群にキャッチーなサビを持つナンバー。他にエレポップな「テレパシー」、キラキラニューウェイブな「クリームソーダシティ」、叙情系フォークロックな「キューポラ」、自分たちのことを《ゆるふわトークの陰にはかなり獰猛な》と歌った「QとA」など、幅広いタイプの楽曲を収録している。どの曲もクオリティーが高く、ユニークな個性がキラリ。もうひとつの先行シングル「Miss Flashback」の評価も上々だし、一気にブレイクする気配濃厚の注目株だ。
■猪又 孝
音楽ライター、ときどき編集者。日本のソウル/R&B/ヒップホップを中心に執筆しつつ、カワイイ&カッコイイ女の子もダイスキ。音楽サイトMUSICSHELFで「猪又孝のvoice and beats」を連載中。三浦大知のアーティストブック『SHOW TIME!!』ではメインライターを担当。