ケミカル、T・ラングレン、DJ NOBU、VILOD……今聴くべきテクノ~エレクトロニカ系新作は?

 最後に。フジロックの出演も決定しているトッド・ラングレンの『ランダンス』です。トッドは先日『グローバル』というEDM仕様の新作ソロを発表、日本盤にはYMO「テクノポリス」の、いろんな意味でヤバいカヴァーをボーナス収録して話題を呼びましたが、これは北欧ノルウエーのNu Disco系の旗手リンドストロームのハンス・ピーター・リンドストロームと、ノルウエーのシューゲイザー・バンド、セレナ・マニッシュのエミール・ニコライセンとの共作。内容はといえば、ずばり、トッドの中期ソロ『未来神(Initiation)』(1975年)を彷彿とさせるコズミックでスペイシーでアンビエントでサイケデリックなテクノ~エレクトロの一大絵巻です。トッドが率いていたユートピアの初期作品のようなプログレの要素もあります。リンドストロームらしいバレアリック・ディスコのリズム、シューゲイズ風味も加えた、徹底してドラッギーで甘美で浮遊感漂うサウンドは、もはやこの世のものとは思えない気持ち良さ。トッドと言えばポップな歌ものばかりが評価され、『未来神』やユートピアの初期作品のようなアバンギャルドなプログレ的側面は徹底的に無視されていますが、『未来神』のリリースから40年、改めてあの時代のトッドの先進性は評価されるべきでしょう。しかも本作『ランダンス』は、トッドらしい朗々と歌い上げる幻想的な歌ものもフィーチュアされ一粒で2度美味しい。大きな声では言えませんが、『グローバル』の1万倍は素晴らしい大傑作。フジロックは全曲本作の再現でやってもらいたいぐらいです。
 
 ご紹介すべき新譜はまだまだありますが、今回はこのへんで。次回をお楽しみに。

■小野島大
音楽評論家。 時々DJ。『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』などに執筆。著編書に『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)、『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)、『フィッシュマンズ全書』(小学館)『音楽配信はどこに向かう?』(インプレス)など。

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