市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第20回
総選挙、メンバー卒業…市川哲史が論じる、“人間模様エンタテインメント”としてのAKB48
今年もAKB48グループの総選挙が終わった。
第7回目にして総投票数がおよそ329万票、昨年比60万票増なのにはちょっと驚いた。それだけの経済効果が得られるのなら、そりゃ止められないわ総選挙。
ちなみに投票資格が、FCやらモバイルやら何やら11団体もの各種関係会員の投票権とシングル封入投票シリアルナンバーということで、相変わらずネットオークションでは100票10数万で売買されていた。速報前には投票代行まで請け負う出品者もいたりして、感心しきりの私だ。数十人がかりでCDの開封とシリアルナンバーの打ち込みといった投票作業を分担する<選対>が多数立つのも、毎年の風物詩らしい。とにかく組織票は人気投票の華だから、「借金上等」の覚悟で来年以降も盛り上げてほしいと切に願う。
そんなこんなで、「指原莉乃、史上最高得票数の19万票超えで2年ぶりに1位返り咲き、でもその2割は中国票」とか、「80位以内に26人も送り込んだSKE48が、23人の本家・AKB48を抑え第1党に躍進」などなど、開票後もネタは尽きないようだ。
ちなみに私が最もぐっときたのは、開票日と翌日の感謝祭@ヤフオクドームの6月6・7日両日、福岡市内はおろか福岡県内のホテルが満室だったことか。「出演者とスタッフだけで埋まってしまったのではないか」という旅行社筋のコメントは、素晴らしい。
たしかによく考えれば感謝祭のヤフオクドームは、観客28000人に対して出演するアイドルの総数が286名……おいおい客の1%を超えてるよ。
などといろいろ愉しませてもらって「また来年♡」、のはずが今年はもうひとクライマックス用意されていた。2位柏木由紀、自爆――すごいオチだ。
『週刊文春』が浴衣抱擁写真(爆苦笑)を掲載したのが、開票日から5日後発売の号。元・雑誌編集長としては、膨らむ妄想を止められない。
おそらく総選挙直前に入手したスクープではなかろうから、文春側がこのタイミングを待って寝かせてたはずだ。そして総選挙前の掲載は、さすがに武士の情けで遠慮したのではないか。あるいは、大人のコミュニケーションが功を奏したのかもしれない。
となると最強のインパクトを期待して文春側は、ゆきりんが1位を獲るのを世界でいちばん願ってたろうし、もしかしたら運営サイドは恣意的な集計をして……いやいや、そんな邪推はいけません(愉笑)。
けれども第三者が開票作業をするわけじゃなし、いまやAKB48とは壮大なる<人間模様エンタテインメント>なんだから、主催者特権でびしびし操作して面白くしちゃえばいいと思うのだ。プロレスのアングルみたく。
なんて私風情の危惧などなんのその、天は彼女たちをまだまだ見放したりしない。
見よ、孝行娘・松井玲奈が彗星のごとく現われ、卒業ネタでゆきりんの粗相をなんとかカバーしてくれているではないか。神風自由自在かAKB。