市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第19回
BABYMETALが“元洋楽少年”を熱狂させる理由【国内篇】 市川哲史が人気曲から紐解く
BABYMETAL最大の魅力は、「アイドルがヘヴィメタルを演る」という<茶番>を全身全霊賭して具現化している点にある。馬鹿馬鹿しければ馬鹿馬鹿しいほど、その完成度は高い。
たとえば「Catch me if you can」は怒濤のインダストリアル・スラッシュ・メタルで迫り来るが、かくれんぼの歌だ。
たとえば女子アイドル必須の自己紹介ソングなのに「BABYMETAL DEATH」は堂々のゴスメタルで、ナパーム・デスとスリップ・ノットが格闘している。
たとえばチキチキとブレイクビーツが効いたラップメタル曲は、「結婚するならやっぱりパパ♡」と悪魔の微笑みで金品をねだるローティーンの愛娘が唄う「おねだり大作戦」に。この曲おもいきりリンプ・ビズキットの名曲「マイ・ジェネレイション」してるのだが、日本海溝クラスのこのギャップなら彼らも本望だろう。きっと。
ついでに書けばSU-METALのソロ曲「紅月―アカツキ―」は「紅」、メジャーデビューシングルの世直しメタル曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」は「X」と、共にXの名曲を徹底的に「再生」していて笑わせてくれる。特に正統派メロスピ(=メロディック・スピード・メタル……だっけ?)の後者は、あの<Xジャンプ>ならぬ<ダメジャンプ>でベビメタと客席が一体化するのであった。たしかに初期Xの基本はハロウィンだもんな。
海外ファンが「ギミチョコ!」を「デスメタルとEDMの渦が甘ったるいJ-POPのメロで一変するから、わけわからん」、BPM200超えのベビメタ最速の新曲「Road of Resistance」は「超高速のメロスピとアニソンが奇跡の融合をしちゃったよ」と、いちいち面白がるのも無理はない。
要はどんなにポップなメロディでも、楽曲自体は超ド級のメタルサウンドになってしまうわけだ。そしてそんな速くて厚くて重くて複雑な<ヘヴィメタルの樹海>をバックにしながら、全編キレっキレのフォーメイション・ダンスでライヴを支配するBABYMETALの姿は、ちょっと感動的ですらある。プラチナ期以降のモー娘。やももクロよりも、ダンスのキレと完成度は明らかに高い。
特に2学年上のSU-METALお姉さんより背も歳も少しだけちびっこの、まるで双子なYUIMETAL&MOAMETALがツインテール&ニーソックス姿でひたすら踊りまくる<全力少女>っぷりは完璧で、まさにアイドルの面目躍如といえる。私はロリコンではないが、特にフランス人なんか萌えすぎて死んじゃうんじゃないか?